2023.10.14 Sat
人の悪口を言うこと
2週間前の選手稽古に森善十朗が差し入れを持ってきてくれました。 30分近く話をしましたが、その中で「人の悪口を言うこと」についても話しました。
私はもともと人の悪口を言うことも、聞くことも苦手です。 悪口で盛り上がる場の雰囲気・エネルギーが皮膚感覚で苦手だからです。
悪口に関して、10月10日の「AERA dot」で作家・演出家の鴻上尚史さんが読者の質問に答えていました。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『【読者(20歳 女性 さか)の質問】
(前略)噂話や陰口は単純にその対象となる人物の人格否定や嘲笑に皆が同調する、という構図になることが多いです。 そして、そのような場を離れられない場合もアルバイトや学校、そして今後の人生では山ほどあると思います。
それらをうまくやり過ごすには、どのような心構えでいればよいのでしょうか。 また、陰口や噂話を言う人についての鴻上さんの見解をお聞かせいただけると嬉しいです。
【鴻上さんの答え】
1.「なぜ他人のネガティブな話をしたがるのか?」は、いろんな理由が考えられます。
①一番単純な理由は、「うっぷんがたまっているから」ですね。 そういう時、対象を見つけて、その苛立ちをぶつけ、吐き出すことで、なんとか正気を保とうとする、という方法ですね。
②二番目に考えられる理由は、「コンプレックスに苦しんでいる」なんてことでしょうか。 人は、上に上がろうとしても上がれない時、上にいる人を引きずり降ろそうとします。 そうすると、相対的に自分が上がったような気分になるのです。 有名な人とか出世した人とか、とにかく上にいると感じる人の悪口を言って、自分が少し上昇したという感覚を味わうということですね。
③三番目は、「そんなふうに育てられてきた」ということもあるでしょう。 親が「息を吐くように他人の悪口を言っていた」ので、それを見て、「それが当り前だ」と思ったということです。 何人かで話していて、一人がトイレに立ったら、自動的にその人の悪口を言うことが、当然だと思っている場合ですね。
④四番目は、「その人の失脚を密かに狙っているから」ですね。 池井戸潤さんが描くサラリーマンの激烈な競争社会とか、アイドルグループにおける熾烈な順位争いなんて場合は、「あいつが邪魔」と思った人に、いろんな形でネガティブ・キャンペーンをしかけていきます。 そのひとつが、その人の噂話や陰口です。 かなり生臭い理由です。
⑤五番目は、生臭い理由の正反対で「それがエンターテインメントだと思っている」からです。 人の噂話や陰口をすると、みんなが喜んでくれる。 みんな、瞳をキラキラさせながら聞いてくれる。 「ようし、これからも噂話と陰口を集めよう!」と決心する場合です。 この場合、二番目の理由とかぶる部分があるのですが、みんなが注目して聞いてくれる姿を見ると、自分が中心人物になったような気持ちになります。 つまりは、自分の地位が上がったような錯覚を持つのです。 この快感が、陰口や噂話をやめられなくするのです。
⑥六番目は、「仲間外れになりたくない」または「仲間意識を確認したい」でしょうか。 さかさんが書くように、「そこにはいない人の噂話や陰口をよく話す」ことがほとんどですね。 その場にいない人の陰口を何人かでして、みんながうなづくと、なんとなく「絆」を感じます。 苦しくなるとみんな確認しようとする「絆」ですね。
2.①さかさんの「私は目の前に話し相手がいるならば、その相手自身のことを知りたいと思います。 相手の考え方や好きな物事、価値観について語りたいです」や「他人の批判ばかりすることは避けたいと思っています」という考えは素晴らしいと思います。
②これはつまり、どうせ話すなら、前向きなこと、建設的なこと、心が明るくなること、お互いの知恵になることを話しましょう、ということでしょう。
③1時間、何人かで人の噂話や陰口を話して終わった後の気持ちと、外食や遊びの計画やお互いの好きなことをいろいろと話し合った後の気持ちを想像してみると、分かりやすいかもしれません。
3.①でも、さかさんが書くように、噂話や陰口の「場を離れられない場合もアルバイトや学校、そして今後の人生では山ほどある」と、僕も思います。
②「それらをうまくやり過ごすには、どのような心構えでいればよいのでしょうか」というさかさんの相談ですが、「場を離れられない場合」というには、二種類あると思っています。
③短期的な場合と長期的な場合です。 短期的というのは、とにかくその場で「噂話や陰口」が始まってしまったケースです。 長期的というのは、自分の所属する集団が、日常的に「噂話や陰口」をしている場合です。
④どちらの場合も、僕は原則として、「波風たてずにスルーする」を基本にしています。
4.短期の場合、「噂話や陰口」が始まったら、
①可能ならトイレとか言ってその場をスルッと離れる
②それが無理なら、携帯を取り出して「すみません。 親から(または仕事の)連絡がきたので」と席を立つ
③それも無理なら、ただニコニコしながら黙って聞いている
④同意を求められたら「すみません。 よく分かりません」とお茶をにごす。 または「へえー、そうなんですかー」と感心したように言う。 うなづいたり「そうですね」等の同意を意味する行動・言葉は絶対にしない
⑤噂話や陰口が終わって次の話題になったら、積極的に話す ……というようなやり方です。
5.①長期的には、その集団に所属すること自体を考え直します。
②中学時代、その場にいない仲間の悪口をさかんに言うクラスメイトがいました。 最初のうちは、はあはあと聞いていたのですが、やがて「待てよ。 今、僕の目の前だから、ここにいないあいつの悪口を言ってるけど、あいつの前に行ったら、僕がいないんだから、間違いなく僕の悪口を言ってるんだろうなあ」と気づきました。
③その当時、僕が所属していた集団は、残念ながら、そういうものでした。 僕は、その集団から抜けることを決めました。 だって、人の噂話と陰口をえんえんと聞かされる集団なんて、楽しくないんですから。 そして、自分がいない時に何を話されているか想像するだけで、嫌な気持ちになりましたから。
④やがて、僕は、さかさんのような人と順番に2人出会って、最終的には3人の集団になりました。
⑤僕達3人は、そこにいない人間の噂話や陰口なんて非生産的な話題ではなく、次の週末に何をするか、今どんな本を読んでいるか、今一番面白いマンガは何か、なんて話題で盛り上がりました。
6.①さかさん。 安心していいです。 噂話や陰口が好きな人はそういう人同士で集団を作ります。 そして、メンバーが一人、トイレに立つと、すぐにその人の陰口を始めます。
②でも、そういうことが嫌な人は、嫌な人同士で集団を作ります。 それは間違いないです。 (中略)
③ですから、さかさんは、安心して大丈夫です。 さかさんが、「相手の考え方や好きな物事、価値観について語りたい」 「他人の批判ばかりすることは避けたい」と思って生活を続けていけば、間違いなく同じ考えの人とめぐり合います。 それは間違いのないと僕は思います。』
私が皮膚感覚で感じていたことを明確に理論的に書かれており、ある意味、感動しました。
ちなみに、昭和の大スター・石原裕次郎さんは、皆で一緒のとき誰かの悪口になりそうになると「その話はやめようや」と言って話を切り替えたそうです。
私はもともと人の悪口を言うことも、聞くことも苦手です。 悪口で盛り上がる場の雰囲気・エネルギーが皮膚感覚で苦手だからです。
悪口に関して、10月10日の「AERA dot」で作家・演出家の鴻上尚史さんが読者の質問に答えていました。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『【読者(20歳 女性 さか)の質問】
(前略)噂話や陰口は単純にその対象となる人物の人格否定や嘲笑に皆が同調する、という構図になることが多いです。 そして、そのような場を離れられない場合もアルバイトや学校、そして今後の人生では山ほどあると思います。
それらをうまくやり過ごすには、どのような心構えでいればよいのでしょうか。 また、陰口や噂話を言う人についての鴻上さんの見解をお聞かせいただけると嬉しいです。
【鴻上さんの答え】
1.「なぜ他人のネガティブな話をしたがるのか?」は、いろんな理由が考えられます。
①一番単純な理由は、「うっぷんがたまっているから」ですね。 そういう時、対象を見つけて、その苛立ちをぶつけ、吐き出すことで、なんとか正気を保とうとする、という方法ですね。
②二番目に考えられる理由は、「コンプレックスに苦しんでいる」なんてことでしょうか。 人は、上に上がろうとしても上がれない時、上にいる人を引きずり降ろそうとします。 そうすると、相対的に自分が上がったような気分になるのです。 有名な人とか出世した人とか、とにかく上にいると感じる人の悪口を言って、自分が少し上昇したという感覚を味わうということですね。
③三番目は、「そんなふうに育てられてきた」ということもあるでしょう。 親が「息を吐くように他人の悪口を言っていた」ので、それを見て、「それが当り前だ」と思ったということです。 何人かで話していて、一人がトイレに立ったら、自動的にその人の悪口を言うことが、当然だと思っている場合ですね。
④四番目は、「その人の失脚を密かに狙っているから」ですね。 池井戸潤さんが描くサラリーマンの激烈な競争社会とか、アイドルグループにおける熾烈な順位争いなんて場合は、「あいつが邪魔」と思った人に、いろんな形でネガティブ・キャンペーンをしかけていきます。 そのひとつが、その人の噂話や陰口です。 かなり生臭い理由です。
⑤五番目は、生臭い理由の正反対で「それがエンターテインメントだと思っている」からです。 人の噂話や陰口をすると、みんなが喜んでくれる。 みんな、瞳をキラキラさせながら聞いてくれる。 「ようし、これからも噂話と陰口を集めよう!」と決心する場合です。 この場合、二番目の理由とかぶる部分があるのですが、みんなが注目して聞いてくれる姿を見ると、自分が中心人物になったような気持ちになります。 つまりは、自分の地位が上がったような錯覚を持つのです。 この快感が、陰口や噂話をやめられなくするのです。
⑥六番目は、「仲間外れになりたくない」または「仲間意識を確認したい」でしょうか。 さかさんが書くように、「そこにはいない人の噂話や陰口をよく話す」ことがほとんどですね。 その場にいない人の陰口を何人かでして、みんながうなづくと、なんとなく「絆」を感じます。 苦しくなるとみんな確認しようとする「絆」ですね。
2.①さかさんの「私は目の前に話し相手がいるならば、その相手自身のことを知りたいと思います。 相手の考え方や好きな物事、価値観について語りたいです」や「他人の批判ばかりすることは避けたいと思っています」という考えは素晴らしいと思います。
②これはつまり、どうせ話すなら、前向きなこと、建設的なこと、心が明るくなること、お互いの知恵になることを話しましょう、ということでしょう。
③1時間、何人かで人の噂話や陰口を話して終わった後の気持ちと、外食や遊びの計画やお互いの好きなことをいろいろと話し合った後の気持ちを想像してみると、分かりやすいかもしれません。
3.①でも、さかさんが書くように、噂話や陰口の「場を離れられない場合もアルバイトや学校、そして今後の人生では山ほどある」と、僕も思います。
②「それらをうまくやり過ごすには、どのような心構えでいればよいのでしょうか」というさかさんの相談ですが、「場を離れられない場合」というには、二種類あると思っています。
③短期的な場合と長期的な場合です。 短期的というのは、とにかくその場で「噂話や陰口」が始まってしまったケースです。 長期的というのは、自分の所属する集団が、日常的に「噂話や陰口」をしている場合です。
④どちらの場合も、僕は原則として、「波風たてずにスルーする」を基本にしています。
4.短期の場合、「噂話や陰口」が始まったら、
①可能ならトイレとか言ってその場をスルッと離れる
②それが無理なら、携帯を取り出して「すみません。 親から(または仕事の)連絡がきたので」と席を立つ
③それも無理なら、ただニコニコしながら黙って聞いている
④同意を求められたら「すみません。 よく分かりません」とお茶をにごす。 または「へえー、そうなんですかー」と感心したように言う。 うなづいたり「そうですね」等の同意を意味する行動・言葉は絶対にしない
⑤噂話や陰口が終わって次の話題になったら、積極的に話す ……というようなやり方です。
5.①長期的には、その集団に所属すること自体を考え直します。
②中学時代、その場にいない仲間の悪口をさかんに言うクラスメイトがいました。 最初のうちは、はあはあと聞いていたのですが、やがて「待てよ。 今、僕の目の前だから、ここにいないあいつの悪口を言ってるけど、あいつの前に行ったら、僕がいないんだから、間違いなく僕の悪口を言ってるんだろうなあ」と気づきました。
③その当時、僕が所属していた集団は、残念ながら、そういうものでした。 僕は、その集団から抜けることを決めました。 だって、人の噂話と陰口をえんえんと聞かされる集団なんて、楽しくないんですから。 そして、自分がいない時に何を話されているか想像するだけで、嫌な気持ちになりましたから。
④やがて、僕は、さかさんのような人と順番に2人出会って、最終的には3人の集団になりました。
⑤僕達3人は、そこにいない人間の噂話や陰口なんて非生産的な話題ではなく、次の週末に何をするか、今どんな本を読んでいるか、今一番面白いマンガは何か、なんて話題で盛り上がりました。
6.①さかさん。 安心していいです。 噂話や陰口が好きな人はそういう人同士で集団を作ります。 そして、メンバーが一人、トイレに立つと、すぐにその人の陰口を始めます。
②でも、そういうことが嫌な人は、嫌な人同士で集団を作ります。 それは間違いないです。 (中略)
③ですから、さかさんは、安心して大丈夫です。 さかさんが、「相手の考え方や好きな物事、価値観について語りたい」 「他人の批判ばかりすることは避けたい」と思って生活を続けていけば、間違いなく同じ考えの人とめぐり合います。 それは間違いのないと僕は思います。』
私が皮膚感覚で感じていたことを明確に理論的に書かれており、ある意味、感動しました。
ちなみに、昭和の大スター・石原裕次郎さんは、皆で一緒のとき誰かの悪口になりそうになると「その話はやめようや」と言って話を切り替えたそうです。