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復活への底力

前回のブログのタイトルは『運命に従う』で、芸術家・横尾忠則さんの生き方を紹介しました。

今回は、立命館アジア太平洋大学学長、ライフネット生命(株)創業者の出口治明さんが書かれた『復活への底力』(講談社現代新書)からです。  著者紹介には「2021年1月に脳卒中を発症し、約1年の求職ののち、校務に復帰を果たす。」と書いてあります。

1.『流れ着いた場所で一所懸命頑張るだけ』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①僕が楽観的でいられたのは、これまで学んで得た知識の力もあると思います。

②ダーウィンの自然淘汰説は、生物に関する最高の理論だと僕は考えています。  要するに、何が起こるかは誰にもわからないし、賢い者や強い者だけが生き残るわけではない。  ただその場所に適応した者が生き残る。

③そこでは運と適応が大切で、運とは適当なときに適当な場所にいることです。  それは、人間にはどうすることもできない運命といえますが、その場所に居合わせたとき、どんな適応ができるか。  すなわち、どんな意欲を持ってどんな世界にしたいと思って動くかは、自分の意志次第です。

④言い方を変えれば、生物の一生は偶然の持つ要素が非常に大きいといえますが、人間は頭でっかちな動物なので、偶然をなかなか認めたくありません。  人間の意志のほうが偶然の要素を上回ると思ってしまいたいのです。  しかし、そんなはずはありません。  (中略)

⑤たまに偶然を引き寄せるのも能力のうちである、あるいは運をコントロールしないといけないなどという人がいますが、そんなのはウソに決まっています。

⑥将来何が起こるかは誰にもわからないのなら、川の流れに身を任せるのが一番素晴らしい。  人間にできるのは、川に流されてたどり着いたその場所で、自分のベストを尽くすことぐらいです。

⑦だから川の流れに流されて学長にたどり着いた以上は、教育のことを一所懸命勉強して頑張るし、病気で倒れたら、復帰に向けて一所懸命リハビリに取り組むだけのことです。

⑧なにより明確なゴールに向かってただ真っすぐに進んでいく人生より、川に流され、時には岩にぶつかったり濁流にのまれたりしながら、思いもよらない展開のなかで一所懸命生きていくほうが面白いに決まっています。

⑨何度も繰り返しますが、人生は楽しまなければ損です。』


2.『大病しても人生観が変わらない理由』の項からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①もともと僕は古希の70歳を超えたときから、後は神様次第だと心底思っていました。  その考えはいまも変わりません。

②人間は常に病気や老化、死と向き合って生きています。  不幸と呼ぶべきか、宿命と呼ぶべきか、これらの避けられぬものと、いかに向き合って生きていくか。 このことが人間の数千年の歴史において、常に人間の眼前にありました。

③哲学や宗教は、人間が生きていくための知恵を探し出すことから出発したといえなくもありません。  生きていくための知恵は、不幸といかに向き合っていくかの知恵ともいえます。

④近年、「神は死んだ」と断言したニーチェの哲学に関する本が、世界的に人気を集めているといわれています。  (中略)

⑤時間も歴史も進歩しない。  そのような運命を正面から受け止めてがんばっていく人間。  この強い人間をニーチェは「超人」と呼びました。

⑥ニーチェは人間が強く生きていこうとしたとき、何を一番大切な理念としているのかといえば、それは力への意志であると考えました。  強くありたい、立派でありたい、そのように生きたいと目指すことです。  

⑦ニーチェの「超人の思想」は、あくまでも、人間はこの大地で現実の生そのものに忠実となり、運命を受け入れて、強い意志を持ち生きていくことが重要だと説いているのです。』

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