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ロッキー・マルシアノ

昨年の大晦日、フロイド・メイウェザー選手が那須川天心選手とエキジビジョン・マッチを行って話題になりました。  フロイド・メイウェザー選手は50戦無敗のまま引退したのですが、1950年代に49戦無敗のまま引退したロッキー・マルシアノという世界ヘビー級チャンピオンがいました。

今回は『無敗の王者 評伝ロッキー・マルシアノ』(マイク・スタントン著 早川書房)を取り上げます。  トレーナーのチャーリー・ゴールドマンがマルシアノを指導し始めたころの記述から、抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ゴールドマンが挑戦して見事に才能を示したのは、長所を失わないままにロッキーを悪癖から抜け出させるという点においてだった。  ゴールドマンは人にはそれぞれのスタイルがあると考えていた。  ロッキーの弧を描く右のオーバーハンド(※ゴールドマンは「スージーQ」と呼んだ)はあまりに常識外れで、他のトレーナーたちがそれを目にしたときは笑っていた。

②放たれる瞬間からヒットする瞬間まで、そのパンチはあまりに軌道が長いため、大半のボクサーがやる場合、相手に当たる瞬間には力が落ちてしまっている。  パンチが当たらないことも多く、そうすると身体のバランスも崩れて、カウンターをもらう可能性も高くなる。  多くのトレーナーは、そのパンチを諦めてしまうか、振りを小さくしろと告げるのだった。

③しかしゴールドマンは、それがロッキーの武器庫にある独自の最終兵器だと気付いていた。  「天がきみに授けたんだ」とゴールドマンは語った。  彼の仕事はその資質を伸ばし、それを損ねないことだった。

④ゴールドマンはバランスとフットワークの向上に取り組み、スージーQの殺傷力を最大限に活かすすべを授けた。  直立するのではなく無防備にならないよう前かがみになって戦えと指示し、相手のボディの攻め方も教えた。  頭を下げ、腕を上げて、かわしながら進むスタイルを磨けば、自分よりリーチの長い相手の懐に入っていき、ジャブの下をかいくぐり、相手を叩きのめすことが可能になる(※マルシアノは身長約179cmとヘビー級の中では小柄だった)。

⑤力とバランスが奪われるので足を開きすぎてはならないと教えるため、ゴールドマンはロッキーの両足の靴ひもを結び合わせた。  (中略)  太い足と野球の経験を活かすため、ゴールドマンはロッキーに、キャッチャーのように低くかがんだ姿勢からパンチを打つ方法を示してみせた。  (中略)  「床のにおいを嗅ぐくらい鼻を下に降ろして、それから相手を殴り上げるんだ」。  (中略)

⑥ゴールドマンはロッキーのパンチを磨き、種類を増やすことにも時間を費やした。  脇の下に折りたたんだ新聞紙をはさみ込ませることで、強制的にロッキーのヒジを身体に付けたままにさせ、パンチを矯正した。  (中略)

⑦ゴールドマンは丸めたタオルをロッキーの首にかけ、シャドーをしながら片方の手でタオルの両端を持たせ、振りの小さいパンチの打ち方を教えた。  ロッキーの右手を背中に固定させて、左フックと左ジャブも磨かせた。

⑧フェイントや、手のひらを上ではなく下に向けて打つジャブや、パンチを打つ時は手首を固定することも教えた。  単発のパンチの連続ではなくコンビネーションの打ち方や、ヒザと尻と肩をパンチより後ろに残しておく方法も伝えた。

⑨ゴールドマンはシャドーボクシングの大切さを説き、それは学び、考え、先を予測する最善の方法だと言った。  「出したパンチはもう放っておけばいい。  準備すべきは次のパンチだ」とゴールドマンは語った。  (中略)

⑩ロッキーはゆっくり成長していった。  いまだに動きは洗練されておらず、不格好で、ポイントでは勝てそうになかったが、他の者にはどうあれゴールドマンの目には成長が見て取れた。  だがその成長を自身の教え子の前で認めることはまだしなかった。  すべてを吸収し、すべてを捧げてトレーニングするロッキーに、ゴールドマンは敬意を抱くようになった。  (中略)

⑪しかしその駆け出しの時期は、「『ブロックトンから来た、あの不格好で未熟すぎる筋肉男』にこだわっていると馬鹿にされたものだよ」とゴールドマンは振り返った。  「いつも言い返してたんだ、『いつか、奴はあんたらを驚かす』とね」』

マルシアノの長所をつぶすことなく、歴史に残る偉大な世界チャンピオンに育て上げた、チャーリー・ゴールドマンの柔軟な指導力に感銘を受けました。

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