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信長の原理

『信長の原理』(垣根涼介著 角川書店)を読みました。  今年下半期の直木賞候補作にも選ばれています。  各武将の人物描写の細かさが秀逸です。

1.織田信長の人物描写から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①確かに信長は、個人として見れば欠点だらけの若者だ。  短気で、無礼で、時には暴力衝動を抑え切れず、失態を犯した小者を平気で手打ちにしたりもする。  重臣に対しても、人を人とも思わない。  頭ごなしに物を言うような傲岸な態度もしばしばとる。

②が、戦の前の軍議となると、これが同一人物かと疑うほどにその態度は一変する。  武官たちの間で相反する戦術について議論が百出しても、ほとんど口を挟まずに、最後まで我慢強く聞いている。  (中略)  話の全体の方向が、万一にも間違っているかも知れない自分の意見に引き摺られることを、恐れているからだ。

③おそらくは無意識だろうが、大将とはどうあるべきかを骨の髄まで分かっている。  粘り強く色々な可能性や方向性を考えられるだけ揃えたうえで、その中から慎重に判断を下す。

④一方で、大局的な戦略・・・その戦自体をやるのかやらないのか、やるとしたらいつ始めるのかなど・・・は、誰にも相談せず、自分の中で長い時間をかけてじっくりと検討する。  それは、大将が己の責任において一人で決断することだからだ。  (中略)  そんな弾正忠家(・・・織田信長の家系)としての方向性を衆議にはかろうものなら、たちまち敵対している他家に漏れ、戦う前から相手に防衛の準備をさせてしまう。

⑤だから、一人で思い悩むことになる。  孤独の中で常に武門の重みを背負うことに耐え続ける。  悩み、苛立ち、躊躇しながらも、流動的な状況の中で、いくつかの選択肢の中のどれが最善なのかを、常に考え抜くことが習慣化している。  (中略)  だから結果として信長は、いつも憂鬱かつ不機嫌そうな顔をぶら下げているのだ。

⑥その執拗さ、神経の太さ、耐性の強さ。  武門の棟梁としては必須であるこの三つの資質を、信長はすべて併せ持っている。』


2.信長の弟である織田信勝の人物描写から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①幼少の頃から兄より自分が上だと思い上がり、二度まで謀反を起こされかかっても、信長はまだ心底ではあの弟のことが嫌いにはなれない。  むしろ、哀れに思う。

②あいつはただ、神輿の上で踊らされていただけだ。  母親や家臣たちに囃し立てられ、その時の気分で動いていただけだ。  そもそも、このおれに対する本質的な悪意などないのだ。

③しかし、およそ人の上に立つ者の資質で、愚かで軽率なことは、悪意よりもはるかに始末が悪い。  救いようがない。  悪意は、ある意味で怜悧さの表れでもある。  そして場面によっては、あるいはそんな自分を悟りさえすれば、その後は態度や考え方を改めることが出来る。

④だが、愚かさや軽率さは直らない。  いくらその場で猛省しても、また似たような過ちをしでかす。  懲りないからだ。  いったい自分のどこに欠陥があるのかを自覚できる怜悧さがない。  挙句、一生同じ過ちを繰り返す。  結果として周囲に大いなる災禍をもたらす。

⑤そういう意味で、およそ人の上に立つ人間としては徹底して無能、と言える。  (中略)  人は改心することはあっても、性根の資質は直らない。  一生持ち越していく。』

明日は内部試合です。  平成最後の年末もあとわずかですね。

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