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〝化ける〟裏に〝反復〟あり

『老いては「好き」にしたがえ!』(片岡鶴太郎著 幻冬舎新書)を読みました。  「〝化ける〟裏に〝反復〟あり」の項を番号を付けて紹介します。

『1.①波動が「出る、出ない」はごまかしがきかない気がします。  私としては、「波動」は魅力や才能とは違って、波動としか言い表せません。

②芸能界は、波動が出ている人が大勢います。  最近お仕事をご一緒した方で波動をビンビン感じたのは、橋本環奈さん。  映画の撮影現場で初めて見た瞬間、強い波動が伝わってきました。

③私なりの言い方をすると「この子はぶっとい!」と感じました。  田舎出の女の子の役で、地味な衣装にノーメイクなのに、波動が強く出ていて、どこにいても存在感があるのです。

④ルックスのかわいさ、美しさだけではなくて、背後にドンと大きな柱が見えます。  何事にも動じないぶっとい芯の強さ。  そこを中心に、身体や顔から波動が出ているようなイメージです。   『NHK紅白歌合戦』の司会を初めて務めた時も、やっぱり動じず、ドン!としっかりしていましたしね。


2.①ずっとその波動を持っている人もいますが、突然ある時から波動が強くなる人もいます。  これは、覚醒するんですね。   元々持っていたものが眠っていて、ある日何かをさっかけに覚醒する。  いわゆる「化ける」というやつです。

②役者でいえばキャリアを積んで、自信がつくといい味が出てきて、ブレイクするパターン。  こういうタイプは、いいものを持っていても、それが何なのかなかなか気づけなかったり、気づいても反復を怠っていたり、反復していてもその能力の出口がなかなか見つからなかったりして、時間がかかったということ。

③反復しているのに化けない場合、「能力がない」と考えるより、「本当にちゃんと反復していたのか?」と私は思います。   丁寧に反復していれば、それが波動となって現れますから、「こいつ、違ってきたな」 「チャンスがあれば、上に行くだろうな」と誰かが感じるようになるはずなんです。

④こんな具合に、どの業種にも、ある時期いきなり覚醒して〝化ける"人がいるでしよう。  反復から生まれる波動は、隠し切れないものです。   反復は嘘をつかない。  努力は嘘をつかないということですね。』

「〝化ける〟裏に〝反復〟あり」というのは空手の選手でもまったく一緒ですね。  大前提は上の2.③にあるように、丁寧に(正しく)反復することです。  

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強くなりすぎれば必ず折れる

前回は『栗山ノート2』を紹介しましたが、今回は『栗山ノート』(栗山英樹著 光文社)です。  「強くなりすぎれば必ず折れる」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。  

『①「強くなりすぎれば必ず折れる」  中国の武経七書(ぶけいしちしょ)のひとつ、『六韜(りくとう)』にある言葉です。

②「強さ」は「脆(もろ)さ」と背中合わせです。  たとえば、ガラスはある一定の強度を持っていますが、それを超える力が加わると割れてしまう。  他方、スポンジやゴムは強度こそ低いものの、押しつぶされても形を取り戻す。

③気持ちを張り詰めてばかりいると、どこかで折れてしまうものです。  そして、折れたあとの再生はとても難しい。  

④組織に当てはめて考えれば、過度の緊張状態が解けたあとのリバウンドは激しい。  「強くなりすぎれば必ず折れる」という言葉は、「折れる前に緩めておくべきだ」ということかもしれません。  (中略)

⑤(日本ハム・ファイターズの監督時代、2019年シーズン5月の)8試合負けなしの間も、「このまま不敗で行くぞ」といったことは選手に言いませんでした。  気持ちの揺れ幅をできるだけ少なくすることが、安定した戦いにつながるからです。

⑥8試合負けなしは評価できますが、負けた翌日の試合に勝ったことが、実はチームにとって大切なことでした。  不敗記録が途切れても、選手たちの緊張の糸が途切れなかったからです。

⑦緊張状態が続いても自分は関係ない、力を発揮できる、というタイプもいるでしょう。   重圧をものともしない逞しさを評価しつつも、私は「弱さ」に着目します。

⑧弱いからこそできることは、実はたくさんあります。  弱いからこそ、人に優しくなれる。  人の痛みが分かる。   強くなるための努力を怠らない。

⑨強いもの、硬いものは、弱いもの、柔らかいものをつねに上回るか。  決してそんなことはないでしょう。   しゃなかさが強さを、柔らかさが硬さを凌駕することもあります。

⑩心の持ち方にしても、「強さ」は必ずしもオールマイティーではないでしょう。  私自身の経験に照らしてみれば、心が強いと自覚している人が窮地に陥ると、焦りの感情にとらわれる気がします。  強いはずの自分が弱気になっていることを、うまく消化しきれないのでしょう。

⑪自分は強くないと思っている人は違います。  「もともと強くないのだから、気持ちが揺れるのは当たり前だ。  それが普通だ」といった割り切りができる。 

⑫自分の弱さを認めている人のほうが、実はドッシリとした態度で事に当たることができる。  本当に心が強い人は、絶対に強くは見せません。  真の強さと「強がり」の境界線を引くことができる。』

台風などの災害時に、一見強そうに見える松の木が倒れ、弱そうに見える柳の木が何事もなかったように立っている、ということがあります。  本当の強さとは柔らかさ、ある意味の弱さなのかも知れません。

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ダルビッシュ投手

昨日まで西湖で合宿でした。  東京に比べると涼しいとはいえ、稽古やイベントが盛りだくさんで、皆さんお疲れだと思います。

かっての少年部が成人して参加してくれていたりして嬉しかったです。  いずれにしても、指導員・道場生の皆さん、お疲れさまでした。

世界一になったWBC日本代表の栗山英樹監督が書かれた『栗山ノート2』(光文社)を読みました。  第2章「自修す」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①侍ジャパンのキャンプインを前に、オリックス・バファローズの宇田川のコンディションが上がってこないとの連絡がありました。  彼は22年シーズンに1軍デビューを飾った選手で、シーズンオフの過ごしかたがつかめていなかったのかもしれません。  あるいは、1軍で投げられるようになってすぐに侍ジャパンに選出されたことに、戸惑いを覚えていた可能性もあったでしょう。

②それでいて、やることは多いのです。  投手の彼は、WBCの使用球に慣れておく必要があります。  2月1日にスタートしたオリックスのキャンプでは、中嶋聡監督が「こんな状態でなにが侍ジャパンだ!」と、強い言葉で背中を押してくれていました。   本人はもがき苦しみながらもコンディションを上げて、我々のキャンプに合流してきました。  ただ、なおも苦しみの真っただ中にいたのでしょう。

③18日にダル(ダルビッシュ有)がブルペンに入り、若手投手陣がズラリと並んで見学していたそのとき、宇田川はトレーニングルームにこもっていました。  その日の練習後に取材に応じると、「正直、気後れというか」と、チームに馴染めていないことを匂わせていました。

④そんなときに、ダルが監督室のドアをノックしてきたのです。  「監督、お願いがあります。 宇田川の今日のピッチング、見ていましたよね。  良くなってきましたよね。  監督からその良かったなという感じを、話してあげてもらえませんか。  いまの状況を考えれば、そういう言葉が大きな意味を持ちます」  (中略)

⑤ダルの貴重な助言を受けて、私は宇田川に声をかけました。  本人は「まだまだ緊張感が大きいのですが」と申し訳なさそうに話していましたが、「何とかします」という言葉にはそれまでとは違う力強さが込められていました。  


2.①宮崎キャンプでのダルは、一切の見返りを求めていませんでした。  グラウンド上で多くの選手とコミュニケーションを取り、休日には食事会を開いて交流を深めました。  

②投手陣が集まった食事会は、「宇田川会』と名付けられました。   調整に苦しんでいた宇田川を励ますためであり、「自分がチームを勝たせる」という当事者意識を植え付けるためだったのでしょう。

③オフの食事会は、野手の選手とも行なわれました。  ダルの心配りとしてメディアでも取り上げられましたが、実は宿泊先でも彼のアイディアからコミュニケーションが深まっていきました。

④新型コロナウイルス感染症の対策として、大人数での食事は同じ方向に机を並べて黙食、というスタイルが取られてきました。  ここでダルが、「これだと話ができないので、大きな丸テーブルをいくつか置くように変えられませんか」と聞いてきたのです。  基本的な感染症対策を続けつつ、食事中も野球の話ができる環境を作ると、やはりコミュニケーションが活発になりました。

⑤宮崎キャンプを終えて、京セラドームでの強化試合に臨んだ際にも、ダルの気配りを目の当たりにします。   京セラドームはオリックスの本拠地で、所属選手のグッズが売られています。  そこで、チームマネジャーに頼んで宇田川のキーホルダーを買ってきてもらい、写真付きでツイッターに投稿しているんです。


3.(栗山監督からダルビッシュ投手への言葉)

親愛なるダル!

このチームになぜあなたが必要なのかを、様々な場面で説明させてもらいました。  

宮崎キャンプでは初日から一切の壁を作らず、若い選手たちのなかへ飛び込み、伝えるべきことをしっかりと浸透させつつ、10歳以上も年齢が下の選手に質問をして、新たな感覚や思考に触れ、自分の進化の糧にしていく姿勢を見せてもらいました。

宮崎キャンプの初日から決勝戦を終えたあの夜まで、感謝の思いを胸いっぱいに抱えて君を見ていました。

報われることを一切求めず、無私の心でチームに尽くしてくれたその姿は、人間としての魅力に溢れていました。』


「経営者感覚を持て」という言葉があります。  

社員でありながら、社長だったらどう判断し、どう行動するだろうという視点でいつも働いてたら評価も高くなるし、本人の実力もどんどん上がっていきます。  また、いつ経営者になったとしても上手くやっていくに違いありません。

そして、経営者感覚を持った社員がいると、経営者は大変助かります。

WBCでのダルビッシュ投手は、たとえて言えば、一選手でありながら「監督感覚」を持っていたのだと思います。

私も経営者を40年以上やってきていますが、他社を見ても「経営者感覚」を持った社員に出会うことは本当にまれです。


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