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私利私欲がない

2月3日の日経新聞・夕刊の『追想録』は、昨年の10月25日に96歳で亡くなられたライフコーポレーション創業者の清水信次さんについて書かれていました。  番号を付けて紹介します。

『①清水氏をひと言で評するならば、天下国家を憂いながらしっかりとそろばんもはじく「国士」のスーパー経営者だ。  1月26日に都内のホテルで開いたお別れの会はそんな清水氏の人生を表現していた。

②同氏は歴代首相とのパイプを築いてきたが、とりわけ故中曽根康弘氏との友好関係は深い。  会場には「尊縁随縁」(縁を大切にし、逆らうことなく、自然に従っていく)、「人生途中下車が多いが私は最後まで降りない」など、清水氏の心のありようを導いた中曽根氏の直筆の書が存在感を放っていた。

③とりわけ「途中下車」の書は清水氏のお気に入りで、いつも近くに飾っていた。  コピーした書を親しい経営者仲間にも配っていたぐらいだ。  受け取った一人が北海道最大手のスーパー、アークスの横山清社長。  87歳になる横山氏も「自分にとっても奮い立つ言葉」とやはり手元に置いている。  横山氏は選挙にも出馬した清水氏を「政治の中枢に近い方が仕事をしやすいと考えていたのだろう」と評す。

④派手な政治活動に対して、経営者としては手堅かった。  1961年に大阪府豊中市にライフ1号店を出店するが、同じ大阪発のダイエーやマイカルとは違い、スーパー以外の事業に目もくれなかった。  一時は不動産会社の秀和と組み、忠実屋、いなげや、長崎屋との4社合併をもくろんだが断念。  自力でライフを食品スーパー最大手に育てた。

⑤清水氏の真骨頂は後継者選びだ。  男の子供が不在だったこともあり、時間をかけて脱・創業経営を模索。  92年に三菱商事と提携したのは後継者探しにあった。  厳しい人物チェックの末、お眼鏡にかなったのが現在の岩崎高治社長だ。

⑥三菱商事から出向し、スーパーの仕事を楽しんでいる岩崎氏に「あんたは私利私欲がない」と伝え、2006年に社長を任せる。  会長になってからの清水氏は経営に口を出すことはほとんどなかった。  岩崎氏も「好きにやれ。  この会社がどうなろうとも自由に、と言われた」と明かす。  会社は消費者と次世代の公共物と言わんばかりに潔く身を引いた清水氏。  「人生の降り方」は見事だった。』

「優秀」とか「営業力がある」ではなく、「スーパーの仕事を楽しんでいる」・「私利私欲がない」という観点から後継者を選んだことに感銘を受けました。




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