fc2ブログ

2022年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2023年02月

築城三年、落城三日

日本電産会長の永守重信さんが書かれた『運をつかむ』(幻冬舎新書)を読みました。  『努力を怠らないでいると「人」が「運」を運んでくる』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①「人との縁」は、すなわち「運」といってもいい。  新しい仕事も幸せな出会いも、みな縁が運んでくれる。  人の縁に恵まれている人は、運にも恵まれるものだ。

②縁は当然ながら、自然とわいてくるものではない。  待っているだけでは、縁はやってこない。  運が努力を重ねた上でやってくるように、縁が生まれるのにも、人と積極的に交わるなどの努力がいる。  そして、ひとたび人と縁ができれば、その「ご縁」は大切に扱うべきなのだ。

③縁を生み、それを長く続かせるには、まず第一に信頼を築くことである。  「築城三年、落城三日」といって、人の信頼は築き上げるのには3年かかるが、1回の過ちであっという間に失ってしまう。  当然のことだが、約束は必ず守るなど常に誠実であることがとても大事だ。

④そして、つき合いが途絶えないようにたまに連絡を取ったり、一緒に食事をしたり、つき合いが深ければたまに贈り物をしたりと、互いに忘れないよう気を遣う努力も欠かせない。

2.①よく考えれば、縁というものは、奇跡的な確率で生まれるものだ。  500万年という人類の歴史のなかで現代という時代にたまたま生まれ、何十億人という人間がいるなかで、一生に出会う人は、そのうちごくわずかである。  そんなことを想像すれば、縁とは実に尊いものだという気持ちになる。

②私の仕事人生も、さまざまな人との縁によって成り立っている。  親、家族、友人、学校の先生、社員、顧客、ビジネスパートナー・・・・・・実にたくさんの人たちとの出会いが、ここまで私を運んでくれた。  どの人との縁も、自分にとってかけがえのない財産だ。』

大山倍達総裁から認可をいただき、城西支部を開設してから44年がたちます。  その間、相当の数の道場生・選手と縁ができました。  開設当初の選手でいまだに年賀状のやりとりをしている人もいれば、そのあとまったく疎遠になった人もいます。  

離れたあとの在り方で、その人の人間性がわかることもありますね。  先日、師範代の山辺とそんな話をしたので、本書を紹介しました。

TOP↑

個人練習の重要性

『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン著 講談社)を読みました。  「3章 共同作業が創造性を殺すとき」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.偉大な業績をあげる人は、いったいどのようにしてそれをなし遂げるのか。  心理学者のアンダース・エリクソンはチェスやテニスやクラシック・ピアノなど広範囲な領域でこの問いの答えを模索した。

2.①エリクソンが同僚らとともに実施した有名な実験がある。  まずベルリン音楽アカデミーの教授の協力を得て、バイオリン専攻の学生を三つのグループに分けた。

②第一のグループは、将来世界的なソリストになれるほどの実力を持つ学生たち。  第二のグループは、「すぐれている」という評価にとどまる学生たち。  第三のグループは、演奏者にはなれず、バイオリン教師をめざす学生たち。  そして、全員に時間の使い方について同じ質問をした。

③その結果、グループごとに驚くべき違いがあることが判明した。  三つのグループが音楽関連の活動にかける時間は同じで、週に50時間以上だった。  課題の練習にかける時間もほぼ同じだった。

④だが、上位二つのグループは音楽関連の時間の大半を個人練習にあてていた。  具体的には1週間に24.3時間、1日あたり3.5時間。  それに対して第三のグループが個人練習にあてる時間は、1週間に9.3時間、1日あたり1.3時間だけだった。

⑤第一のグループの学生たちは、個人練習をもっとも重要な活動と評価していた。  すぐれた音楽家たちは・・・たとえ集団で演奏する者であっても・・・個人練習が本当の練習であり、集団でのセッションは「楽しみ」だと表現する。

3.①エリクソンらは他の分野についても、ひとりで練習したり学習することが同じような効果をもたらすと発見した。

②たとえば、チェスの世界でも「ひとりで真剣に学ぶこと」がプロのチェスプレーヤーになるスキルを得るかどうかの指針になる。  (チェス選手の最高位のタイトル)グランドマスターは一般に、修業時代の10年間に5000時間という途方もない時間をひとりで指し手の研究をするために費やす・・・中級レベルのプレーヤーの約5倍にものぼる時間だ。

③ひとりで勉強する学生は、グループで勉強する学生よりも、長年のうちに多くを身につける。  チームスポーツのエリート選手もまた、驚くほど多くの時間を個人練習にあてている。』

自己流や我流による悪い癖をつけないために、良い指導者のもとでの集団練習は大切です。  しかし、上の2.⑤に書かれているように、世界のトップ選手になるためには個人練習の時間こそが最重要となります。

いつも選手稽古で話すのですが、トップ選手になるための最高の指導者は自分自身です。  「トレーニング方法の創意工夫や技術の創意工夫に関して個人的に時間を費やすこと」が頂点に立てるかどうかを決めているような気がします。

城西では過去に5人の全日本チャンピオンが出ましたが、私の指導を受けただけでチャンピオンになった者は一人もいません。

TOP↑

社員第一主義

1.『「日本でいちばん大切にしたい会社」がわかる100の指標』(坂本光司著 朝日新書)を読みました。  「1章 社員に関する指標」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①これまで企業経営で最も大切な人(利害関係者)は、顧客とか株主(出資者)等と長らくいわれてきました。  さすがに最近では株主という人は少なくなりましたが、依然「顧客第一主義」を標榜する企業が圧倒的多数と思います。

②顧客や株主はもちろん大切ですが、筆者らの調査研究では、好不況で業績がほとんどぶれない「いい会社」の大半がより大切にしているのは「社員」でした。  そして「企業経営の目的は社員の幸せの追求・実現」として「社員第一主義」で「大家族的」な経営が貫かれているのです。  

③所属する一人一人の社員が幸せをかみしめることのできる「いい会社」であるならば、たとえ環境が激変し、業績が悪化したとしても、企業が最も大切にすべき社員へのリストラ等をやるはずはないし、社員の組織満足度の証明である転職的離職率は5%以下、より理想は、限りなくゼロに近い状態にあると思います。

④また、社員に心身ともに負担をかける残業時間が日常的に40時間も50時間以上もあるという経営も、社員の健康や幸せを真に願った経営とは到底思えません。  もとよりサービス残業などは、もってのほかです。  

⑤ちなみに離職率の低い会社・残業時間の少ない会社の業績が高く、一方、離職率の高い会社・残業時間の多い会社の業績は低いという傾向があります。』


2.①カミさんの母親は現在101歳(1921年生まれ)で、10年以上前からある老人ホームにお世話になっています。

②その老人ホーム運営会社の社長と5年ほど前にお目にかかりました。  その際に「私の会社では社員がいかに楽しく働けるかを最重要に考えています。  そのことが、ひいては入所者の皆さんへのより良いケアにつながるのだと思います。」と話されていたのが印象的でした。

③100歳の誕生日もやっていただきましたが、スタッフの皆さんの温かい心遣いにはカミさんともども感動しました。  その時いただいた義母の手形の入った額は自宅にいつも飾ってあります。

TOP↑

山縣亮太選手

1.昨年12月17日のブログで、男子100メートルの日本記録(9秒95)を持つ山縣亮太選手のインタビュー記事を紹介しました。  その後に次のように書きました。

『以前、NHKで山縣選手のドキュメンタリー番組を見たことがあります。  未熟児で生まれ、インキュベーターの中に入っている山縣選手の映像が妙に印象的でした。』

2.昨年12月25日の朝日新聞に山縣選手の体験談が掲載されました。  番号を付けて紹介します。

『①小学生のとき、両親から生まれた頃の話を聞きました。  予定日より2カ月早く1730グラムで生まれ、すぐに新生児集中治療室に入ったこと。  医師に「何かしら障害が残るかもしれない」と言われたこと。  小さい頃は病弱だったそうです。

②そういう話を聞いても、「へえ、大変だったんだ」ぐらいにしか思いませんでした。  外で遊ぶのが大好きで、元気でしたから。

③小学生の頃は、背丈の順に並ぶと前から3番目から5番目ぐらい。  ただ、小さく生まれたから背が低いと思ったことも、体が弱いと思ったこともありません。  生まれたときのことについて、父は詳しい話をしたがらなかった気がします。  心配させないように、という親心だったのかもしれません。

④陸上選手になるきっかけをつくってくれたのも父です。  小学生のときに大会に出て陸上クラブからスカウトされたのですが、僕は乗り気じゃなかった。  でも父が練習に参加できるように計らってくれ、やってみると友達もできて楽しかったんです。

⑤小さく生まれたことが、体にどういう影響を及ぼしたのかはわかりません。  ただ、なにかしらのハンディキャップを背負って生まれてきたらしい状況にありながらも、その後は目標を持ってやってきましたし、「よくやっているな」と思います。

⑥意識して前向きにというよりは自然とそうなっただけですが、競技に打ち込んでここまできました。  あまり気にしない性格でよかったなと思います。  「才能がないかも」とか「小さく生まれたから」とか、ネガティブな方向に気持ちが引っ張られていたら、どこかで挫折していたかもしれないですから。

⑦僕のハンディキャップになるかもしれない部分を受け止めて、両親が大事に育ててくれたことが、いまの自分の根っこにあります。    その後の人生や選手生活で、前向きでいられるきっかけの一つなのかもしれません。』

ご両親の温かく前向きな育て方が、今の山縣選手を生んだのですね。

TOP↑

民主主義がはらむ問題

明けましておめでとうございます。  今年もよろしくお願い致します。

毎年2月24日はカミさんの誕生日です。  思うところがあって昨年の2月24日から朝のジョギングを始めました。  そして、その日の昼過ぎにロシアがウクライナに侵攻したというニュースが出ます。

私は終戦から8年後の1953年生まれですから、戦争というものを体験せずに生きてきました。  昨年の11月11日に初孫(男子)が生まれました。  できることであれば、私同様に戦争体験がない人生を送ってもらいたいと思います。

(1)昨年12月24日の朝日新聞に『民主主義がはらむ問題』という論文が掲載されました。  著者は京都大学名誉教授の佐伯啓思さんです。  

年頭のブログのテーマとしてはちょっと固いかもしれませんが、私自身の考えを整理するためにも、抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.反対派とも論議をつくすという「討議民主主義」は民主主義の理念である。  だが、利害が多様化して入り組み、にもかかわらず人々は政治指導者にわかりやすい即断即決を求めるという今日の矛盾した状況にあっては、由緒正しい民主主義では政治が機能しないことは明白である。  そしてこの現実こそが、民主政治へのいら立ちや不信感を生み出しているのであり、その政治への不満が(アメリカの)トランプ現象を生んだのであった。  (中略)

2.①経済成長がまだ可能であり、人々の間に社会の将来についてのある程度の共通了解がある間は、民主主義は比較的安定的に機能した。  そこには社会を分断するほどの亀裂は現れなかった。  多くの人々は経済の波に乗っておれば自然に「幸福を享受」でき、将来に大きな不安を抱くこともない。

②ところが、今日、経済は行きづまり、将来の展望は見えない。  すると人々は政治に対して過大な要求をする。  「安全と幸福」を、言い換えれば「パンとサーカス」(生存と娯楽)を求める。  政治は「民意」の求めに応じて「パンとサーカス」の提供を約束する。

③しかし、にもかかわらず経済は低迷し、格差は拡大し、生活の不安が増せば、人々の政治不信はいっそう募るだろう。  そこに、わかりやすい「敵」を指定して一気に事態の打開をはかるデマゴーグ(民衆扇動家)が出現すれば、人々は、フェイクであろうがなかろうが、歓呼をもって彼を迎えるだろう。  こうして民主主義は壊れてゆく。  民主主義の中から強権的な政治が姿を現す。

④古代ローマ帝国の崩壊は、民衆が過剰なまでに「パンとサーカス」を要求し、政治があまりに安直にこの「民意」に応えたからだとしばしばいわれる。  社会から規律が失われ、人々は倫理観を失い、飽食とエンターテインメントに明け暮れる。  内部から崩壊するうちにローマは異民族に滅ぼされた。  (中略) 

3.①今日、経済の混迷に直面する民主主義国が深い閉塞(へいそく)感にさいなまれていることは疑いえない。  この閉塞感の中で、西側の民主主義国は、ロシアのウクライナ侵略を契機に、この戦争を、民主主義と権威主義の戦いと見なし、「権威主義の軍事的拡張から平和愛好的な民主主義を守れ」という。  もちろん、そのことを否定するつもりはないのだが、それにしてもこれはいささか民主主義に都合のよい作り話、つまり一種のフェイクにも聞こえる。  (中略)
 
②決してプーチンを弁護するものではないが、それでも権威主義の脅威を掲げて民主主義を擁護するだけでは、民主主義がはらむ問題からわれわれの関心をそらしかねない。  民主主義はロシアや中国の権威主義の脅威によって危うくされるというより、それ自体がはらむ脆弱(ぜいじゃく)さによって自壊しかねないことを知っておくべきであろう。』


(2)追記

1月3日の朝日新聞の社説も上記(1)に関連した記述でした。  タイトルは『民主主義を守り育む』です。 抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①「民主主義国同士は戦争をしない」と、しばしば言及される。  確かに歴史を振り返れば、民主国同士が戦った例はほぼない。

②そもそも民主政治は暴力ではなく、話し合いを通じて問題に対処することを旨としている。  人権や少数意見の尊重を範とし、権力は民意に目を配らざるをえない。

③こうした仕組みや考え方を共有する国同士であれば、仮に対立や紛争が生じても対話や交渉で解決を探ることになる。

2.①日本も、政権の専横と代議制の不全という病が長引く。

②民主主義は政治的な共存の一つのあり方である。  人々を一色に染めがちな権威主義とは違い、様々に異なる思想信条、価値観、信仰などを持つ人々がそれでもなんとか共に生きていくための方法である。

③そこに最終的な解決というようなものはなく、常に暫定的な決定を重ねていくしかない。  間違えたと思ったらやり直せるのが民主主義のいいところだ。  こうして不断のプロセスが続く。  めんどくさいし、じれったいかもしれないが、上手に使いこなしていかなければならない。』


(3)追記その2

今朝(1月3日)ネットで、『毎日小学生新聞』の2022年12月21日の連載『名ぜりふ劇場』の記述を見つけけました。  これも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。  他に試みられたあらゆる形態を除けば」・・・イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルの名言です。
 
②民主主義はいろいろ厄介な問題があるが、これに勝る政治のかたちはない、というこの言葉ことば。  なるほどと思おもわせます。

③公平な議論を進める手順の面倒さ。  少数派の意見を大切にする心くばり。  多数派が何ごとも数の力で押通す危険。  皆さんのクラスの話し合いや討論でも意見をまとめきれず、議長役は大変でしょう。  でもそうした「苦労」が民主主義の土台をつくるのです。』




    

TOP↑

2022年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2023年02月