2022.10.24 Mon
チンプ・パラドックス
『チンプ・パラドックス』(スティーブ・ピーターズ著 海と月社)を読みました。 著者紹介には「英国自転車競技チームの専任精神科医として心理マネジメントを担当。 ロンドン・オリンピックでは金メダル8個を含む12個のメダルを獲得した。」とあります。 本書から抜粋し、番号を付けて紹介します。
『1.「1章 心の中」
①(本書では脳内の)前頭葉、辺縁系、頭頂葉をそれぞれ〈人間〉、〈チンパンジー〉、〈コンピューター〉と名づける。 この三つの領域は協調してはたらくこともあるが、たびたび対立して主導権を握ろうとする。 その争いでは〈チンパンジー〉(辺縁系)が勝つことが多い。
②まだ母親の胎内にいるとき、前頭葉〈人間〉と辺縁系〈チンパンジー〉は別々に成長し、そのあと互いに自己紹介して関係を築く。 〈人間〉と〈チンパンジー〉は独立した個性をもち、思考法も、懸案事項も、行動パターンも異なる。 つまり、あなたの頭のなかには事実上ふたつの生き物が存在するのだ! 困ったことに、ほとんどの場合、両者の意見は一致しない。 (中略)
③ここで重要なのは、片方、すなわち〈人間〉だけが「あなた」であることだ。 〈チンパンジー〉は誰もが持つ感情装置で、理性から独立してはたらき、決定をくだす。 感情や感覚を司り、建設的にもなれば破壊的にもなる。 良い悪いの問題ではなく、たんに〈チンパンジー〉なのだ。
④「チンプ・パラドックス」とは、その〈チンパンジー〉が、最良の友でありながら最悪の敵にもなりえ、油断するとあなたの思考を乗っとってしまうことを指している。 本書のおもな目的は、あなたのなかの〈チンパンジー〉をコントロールするのを手伝うこと。 あなたのためになるときにはその力と強さを活かし、ためにならないときには無力化するのだ。 (中略)
⑤〈心のなか〉には思考や行動の保管場所もある。 これを〈コンピューター〉と名づけよう。 〈チンパンジー〉と〈人間〉、どちらが入力した情報も、ここに保管される。 そして、その情報をもとに、〈チンパンジー〉と〈人間〉のために自動ではたらく。 両者の情報源にもなる。
2.「2章 あなた自身とあなたの〈チンパンジー〉を理解するために」
(1)①ジョンは妻のポリーンに隣の男について話している。 その男が私道をまたいで駐車したせいで車を出せなかったので、移動してくれと言いに行ったという。 このとき、ジョンのなかの〈人間〉は冷静に事実を話し、〈チンパンジー〉もおとなしく聞いている。
②だがポリーンが、「どうしてそんなことで大騒ぎするの? もう解決したんでしょう?」と応じると、ジョンと〈チンパンジー〉はまったく異なる解釈と反応をするはずだ。
③ジョンのなかの〈人間〉は論理的に、「大騒ぎなんてしていないが、ポリーンは聞く耳をもたないだろうから、そっとしておこう」とか、「たしかに問題は解決ずみだ。 ポリーンの言うこともわからなくはない。 黙って聞いておこう」と考えるが、〈チンパンジー〉はポリーンのことばを嫌味と受けとり、カッとなる。
④面と向かって批判されたと解釈し、攻撃モードか防御モードになるのだ。 すると、声を荒らげて「なんでいつも文句ばかり言うんだ?」、「大騒ぎなんかしてないぞ。 きみはどこかおかしいんじゃないか?」、「妻のきみにも関係すると思ったから話しただけじゃないか」といったことばを投げかちになる。
⑤〈チンパンジー〉は〈人間〉よりはるかに強力なので、たいていの場合〈人間〉が制御しようとするまえに話しだす。 そして、そうなれば事態は悪化の一途をたどる。 ジョンは、なぜ妻のことばに反応してしまったのかと悔やむことになるのだ。
(2)①〈チンパンジー〉はジャングルの掟にしたがい、強い衝動と本能によって行動するのに対し、〈人間〉は社会の法にしたがい、倫理と道徳の強い衝動、典型的には「良心」によって動く。 (中略)
②〈チンパンジー〉は、本能と衝動にもとづく〈ジャングル中枢〉をもっている。 これは〈チンパンジー〉がジャングルで生き残るために必要な信念と行動のもとになっているもので、ジャングルではうまく機能するが、社会ではあまりうまくいかない。
③うまくいかないどころか、〈チンパンジー〉が〈人間〉の社会にジャングルのやり方をもちこむと、大きな問題が生じる。 (中略)
④あなたの〈チンパンジー〉も、自分とあなたを安全に保つために強力な本能を発動させる。 なかでも、闘争(ファイト)、逃走(フライト)、硬直(フリーズ)という「FFF反応」は、おそらくもっとも出現頻度の高い〈チンパンジー〉の重要な本能だ。
3.「3章 〈チンパンジー〉を管理するために」
①「なぜ〈チンパンジー〉をパワーオフして意思決定できないのか?」 この答えは簡単で、〈チンパンジー〉が〈人間〉より力強く、すばやく行動するからだ。 野生のチンパンジーの力は人間の五倍だ。 同様に、頭のなかの〈チンパンジー〉もあなたの五倍の力をもっている。 (中略)
②意志の力で〈チンパンジー〉をコントロールしようとしても無意味だ。 私はこれを「チンパンジーとの腕相撲」と呼んでいる。 うまくいくのは、〈チンパンジー〉が寝ているか、無関心か、同意しているときだけだ。
③〈チンパンジー〉と懸案が異なるときには、意志の力はまったく当てにならない。 だから、〈チンパンジー〉に対処する別の手段を学ばなければならない。
4.「4章 心の〈コンピューター〉を理解するために」
①あなたの〈コンピューター〉には、ふたつの機能がある。
・情報、信念、価値観の源になる。
・プログラムされた思考と態度によって無意識に考え、行動できる。
②〈コンピューター〉の動作速度は〈チンパンジー〉の約四倍、〈人間〉の二十倍と考えられる。 したがって〈コンピューター〉が正常に機能すれば、〈チンパンジー〉や〈人間〉が思考を終えるまえに、驚くべき速さで正確に命令を実行できる。』
アンガーマネジメント(怒りのコントロール)が一番の課題である私にとって、最良の教科書です。
普段のあり方や人間関係を見直すうえで、大変参考になりました。
『1.「1章 心の中」
①(本書では脳内の)前頭葉、辺縁系、頭頂葉をそれぞれ〈人間〉、〈チンパンジー〉、〈コンピューター〉と名づける。 この三つの領域は協調してはたらくこともあるが、たびたび対立して主導権を握ろうとする。 その争いでは〈チンパンジー〉(辺縁系)が勝つことが多い。
②まだ母親の胎内にいるとき、前頭葉〈人間〉と辺縁系〈チンパンジー〉は別々に成長し、そのあと互いに自己紹介して関係を築く。 〈人間〉と〈チンパンジー〉は独立した個性をもち、思考法も、懸案事項も、行動パターンも異なる。 つまり、あなたの頭のなかには事実上ふたつの生き物が存在するのだ! 困ったことに、ほとんどの場合、両者の意見は一致しない。 (中略)
③ここで重要なのは、片方、すなわち〈人間〉だけが「あなた」であることだ。 〈チンパンジー〉は誰もが持つ感情装置で、理性から独立してはたらき、決定をくだす。 感情や感覚を司り、建設的にもなれば破壊的にもなる。 良い悪いの問題ではなく、たんに〈チンパンジー〉なのだ。
④「チンプ・パラドックス」とは、その〈チンパンジー〉が、最良の友でありながら最悪の敵にもなりえ、油断するとあなたの思考を乗っとってしまうことを指している。 本書のおもな目的は、あなたのなかの〈チンパンジー〉をコントロールするのを手伝うこと。 あなたのためになるときにはその力と強さを活かし、ためにならないときには無力化するのだ。 (中略)
⑤〈心のなか〉には思考や行動の保管場所もある。 これを〈コンピューター〉と名づけよう。 〈チンパンジー〉と〈人間〉、どちらが入力した情報も、ここに保管される。 そして、その情報をもとに、〈チンパンジー〉と〈人間〉のために自動ではたらく。 両者の情報源にもなる。
2.「2章 あなた自身とあなたの〈チンパンジー〉を理解するために」
(1)①ジョンは妻のポリーンに隣の男について話している。 その男が私道をまたいで駐車したせいで車を出せなかったので、移動してくれと言いに行ったという。 このとき、ジョンのなかの〈人間〉は冷静に事実を話し、〈チンパンジー〉もおとなしく聞いている。
②だがポリーンが、「どうしてそんなことで大騒ぎするの? もう解決したんでしょう?」と応じると、ジョンと〈チンパンジー〉はまったく異なる解釈と反応をするはずだ。
③ジョンのなかの〈人間〉は論理的に、「大騒ぎなんてしていないが、ポリーンは聞く耳をもたないだろうから、そっとしておこう」とか、「たしかに問題は解決ずみだ。 ポリーンの言うこともわからなくはない。 黙って聞いておこう」と考えるが、〈チンパンジー〉はポリーンのことばを嫌味と受けとり、カッとなる。
④面と向かって批判されたと解釈し、攻撃モードか防御モードになるのだ。 すると、声を荒らげて「なんでいつも文句ばかり言うんだ?」、「大騒ぎなんかしてないぞ。 きみはどこかおかしいんじゃないか?」、「妻のきみにも関係すると思ったから話しただけじゃないか」といったことばを投げかちになる。
⑤〈チンパンジー〉は〈人間〉よりはるかに強力なので、たいていの場合〈人間〉が制御しようとするまえに話しだす。 そして、そうなれば事態は悪化の一途をたどる。 ジョンは、なぜ妻のことばに反応してしまったのかと悔やむことになるのだ。
(2)①〈チンパンジー〉はジャングルの掟にしたがい、強い衝動と本能によって行動するのに対し、〈人間〉は社会の法にしたがい、倫理と道徳の強い衝動、典型的には「良心」によって動く。 (中略)
②〈チンパンジー〉は、本能と衝動にもとづく〈ジャングル中枢〉をもっている。 これは〈チンパンジー〉がジャングルで生き残るために必要な信念と行動のもとになっているもので、ジャングルではうまく機能するが、社会ではあまりうまくいかない。
③うまくいかないどころか、〈チンパンジー〉が〈人間〉の社会にジャングルのやり方をもちこむと、大きな問題が生じる。 (中略)
④あなたの〈チンパンジー〉も、自分とあなたを安全に保つために強力な本能を発動させる。 なかでも、闘争(ファイト)、逃走(フライト)、硬直(フリーズ)という「FFF反応」は、おそらくもっとも出現頻度の高い〈チンパンジー〉の重要な本能だ。
3.「3章 〈チンパンジー〉を管理するために」
①「なぜ〈チンパンジー〉をパワーオフして意思決定できないのか?」 この答えは簡単で、〈チンパンジー〉が〈人間〉より力強く、すばやく行動するからだ。 野生のチンパンジーの力は人間の五倍だ。 同様に、頭のなかの〈チンパンジー〉もあなたの五倍の力をもっている。 (中略)
②意志の力で〈チンパンジー〉をコントロールしようとしても無意味だ。 私はこれを「チンパンジーとの腕相撲」と呼んでいる。 うまくいくのは、〈チンパンジー〉が寝ているか、無関心か、同意しているときだけだ。
③〈チンパンジー〉と懸案が異なるときには、意志の力はまったく当てにならない。 だから、〈チンパンジー〉に対処する別の手段を学ばなければならない。
4.「4章 心の〈コンピューター〉を理解するために」
①あなたの〈コンピューター〉には、ふたつの機能がある。
・情報、信念、価値観の源になる。
・プログラムされた思考と態度によって無意識に考え、行動できる。
②〈コンピューター〉の動作速度は〈チンパンジー〉の約四倍、〈人間〉の二十倍と考えられる。 したがって〈コンピューター〉が正常に機能すれば、〈チンパンジー〉や〈人間〉が思考を終えるまえに、驚くべき速さで正確に命令を実行できる。』
アンガーマネジメント(怒りのコントロール)が一番の課題である私にとって、最良の教科書です。
普段のあり方や人間関係を見直すうえで、大変参考になりました。