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ギャンブル障害の怖さ

9月11日のブログで、作家・精神科医の帚木蓬生さんの「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」に関するインタビュー記事を紹介しました。  ネガティブ・ケイパビリティとは、どうにも答えの出ない事態に直面した時に性急に解決を求めず、不確実さや不思議さの中で宙づり状態でいることに耐えられる能力、を意味する言葉です。  

今回は著書『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日新聞出版)から、「ギャンブル障害(依存症)」について書かれた部分を抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①ヒトの脳は、物事を楽観的に見るように作られているとしか思えません。  これは、ヒトが何十万年にもわたって生き延びるうちに、脳がそういう方向に進化したと考えられます。  生存のためには、悲観的に考えるより、楽観的に考えるほうが有利に働きます。  (中略) 

②しかし希望を見出す脳の機能のタガがはずれて、もはや妄想の領域に入り込み、抜け出せなくなった精神障害があります。  ギャンブル障害(依存症)という病気です。

③ギャンブル障害の本質は「同じ行為を繰り返しながら、違う結果を期待する」です。  (中略)  今度は絶対に勝ってやる、勝ちそうな気がすると思うのです。  これまで20年30年とスロットマシーンをしていて、もう500万円も1000万円も負けているのですから、これから先どうあがいても、長い目で見て勝てないのは明らかです。

④しかも一方で、ギャンブル症者には「ギャンブルで作った借金は、ギャンブルで返さなければならない」という妄想じみた思い込みがあります。  (中略)

⑤こうしたギャンブル症者の脳の活動を、脳画像検査で検討すると、「勝ちにも負けにも鈍感になっている」という結果が出ました。  競馬で言えば、10万円買っても何の嬉しさ、興奮もありません。  ですからギャンブル症者は、必然的に穴ねらいになります。  穴ねらいですから、やはり負ける確率も高いのです。


2.①私は10数年来、ギャンブル症者の自助グループのミーティングに週1回参加しています。  (中略)  目指すのは、単にギャンブルをやめることではなく、人としての徳目を身につけることです。  

②その徳目として「思いやり」 「正直」 「謙虚」 「寛容」があげられています。  これらの四徳目はギャンブルにうつつを抜かしているうちに、ことごとく失われていきます。

③人を思いやる心はすり減って、大切なのは人よりもお金になります。  

④正直どころか、不正直の塊になり、朝起きて夜眠るまで嘘をつきまくります。  嘘八百ではなく嘘八十万です。  夢の中でさえ嘘をついています。

⑤謙虚さもなくなり、自分はさんざん人を苦しめているのに、悪びれたところは微塵もなく、傲慢そのものです。

⑥そして寛容ですが、借金を繰り返して家族に大迷惑をかけているにもかかわらず、その家族を責めたてます。  自分の非は棚に上げての逆恨みです。  他人がちょっとでも気に食わないことをすれば、口を極めて罵るのです。

⑦人を許すということをしません。  心の中はいつもカリカリして、責めたてる材料を探します。  悪いことをしているのは自分なのにです。  寛容のかけらも失うのです。』

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運動脳

1.2021年1月31日のブログで『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著 新潮社)を紹介しました。  今回は同じ著者による『運動脳』を紹介します。  2016年に刊行されてから、著者の母国スウェーデンで67万部以上が売れた(人口の6%超が買った)超ベストセラーです。


2.「はじめに」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①腕を鍛えたければ脚ではなく腕のトレーニングをするのだから、脳も同じはず。  私たちはそう考えて、クロスワードパズルや記憶力のトレーニング、様々な脳トレ・メソッドで頭を鍛えようとする。

②しかし結論からいえば、効果はあまり期待できない。

③脳の機能を高めるには戦略的に運動するほうが、パズルや脳トレよりはるかに効果があることを、研究成果がはっきりと証明している。

④驚いたことに、脳は頭を働かせようとするより、身体を動かすことでこそ威力を発揮する器官らしいのだ。』


3.第1章「現代人はほとんど原始人」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①何百万年もの間、私たちの祖先は、現代人よりもはるかに活発に動きまわっていた。

②理由は単純だ。  人類の歴史において、ほとんどの時代、身体を動かさなければ食料を手に入れることも、生き延びることもできなかったからだ。  そのため、私たちの身体は動くのに適したつくりになっている。

③脳も例外ではない。

④私たちの脳は100年経っても、(新石器時代から)1万2000年経っても、さほど大きく変化していない。

⑤生活習慣は一変し、その結果、もともと身体が適応していた生活からはますます遠ざかってしまったが、あなたや私の脳は、今もまだサバンナで暮らしている。  そして、私たちが活発に動くことに、脳は何より敏感に反応する。

⑥もはや食料を調達するために狩りに出かける必要はなく、インターネットで注文までできる時代だ。

⑦それでも、ほんの少し祖先の生活に近づけば・・・つまり身体をもっと動かせば、私たちの脳は、今よりもずっと効率よく動いてくれることだろう。』


4.第2章「脳から『ストレス』を取り払う」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ここ数年、ストレスや不安に悩まされて精神科を訪れる思春期の子どもたちは増えるいっぽうだ。  生物学的に見れば、この時期の子どもたちが不安に悩まされてしまうことは当然といえる。

②前頭葉や前頭前皮質など、ストレスを抑える脳の部位は、最後に完成する。  10代では、まだ発達途中の段階で、じつをいえば、25歳ぐらいになるまで完成しない。

③いっぽう扁桃体のようなストレスを生み出す部位は、17歳でほぼ完成する。

④不安を引き起こす部位は充分に発達していても、それを抑える部位が未熟となれば、思春期の子どもたちが感情の起伏が激しく、衝動的で、いつも何かしら悩みごとを抱えているのも無理はない。

⑤そして、こういった思春期の子どものストレスや不安に対しても、運動は絶大な効果をもたらす。』


5.第7章「『学力』を伸ばす」では、運動が子供たちの基礎的な学力・・・いわゆる「読み・書き・計算」の力を伸ばすことの実例が紹介されています。


6.運動、特に有酸素運動が脳の機能向上に及ぼす影響については、2021年9月26日のブログでも『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョン・J・レイティ著 NHK出版)を紹介しました。

そのときも書きましたが、空手の稽古は心肺機能のスタミナを養成する有酸素運動そのものですから、脳の機能向上(少年の学力向上、思春期の情緒安定、高齢者の認知症予防)に最適ですね。







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ネガティブ・ケイパビリティ、気づく力

最近の新聞記事から、私が備忘録的にメモしておきたい内容を二点、抜粋し番号を付けて紹介します。

1.ネガティブ・ケイパビリティ(8月9日・朝日新聞、作家・精神科医の帚木蓬生さんのインタビュー記事)

『①病気と長く付き合わなくてはいけない患者さんと向き合う時、「治そう」という考えだけでは、どうにもなりません。  私が逃げ出さずにやってこられたのは、約40年前に出会った「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」という言葉に支えられたからです。

②どうにも答えの出ない事態に直面した時に性急に解決を求めず、不確実さや不思議さの中で宙づり状態でいることに耐えられる能力、を意味する言葉です。  元は19世紀の英国の詩人キーツが、詩人が対象に深く入り込むのに必要な能力として使った言葉でした。

③ネガティブ・ケイパビリティによる処方を、私は「目薬・日薬・口薬」と言います。  「あなたの苦しみは私が見ています」という目薬、「なんとかしているうち、なんとかなる」という日薬、「めげないで」と声をかけ続ける口薬。  患者さんは難しい状態にあっても、なんとかこれでやり過ごせます。

④医師でなくても、調子の悪い家族や友達を心配することがあるでしょう。  「早く何とかしてあげなくては」と焦ると、治らない時にいらだってしまいます。  人間の復元力は、早さとは異次元の所で発揮されますから、早さばかりが頭にあると、つまずきやすい。    
 
⑤人は「自分の脳みそで考えて解決しないといけない」と凝り固まるところがありますが、それはせっかく晴れかけた空をかき乱すようなもので、成り行きに任せた方がいいこともあるのです。

⑥心配による心の痛みは、ワクチン注射くらいに思ってはどうでしょうか。  思い通りにならない物事に対する免疫ができ、ちょっと強くなったなと。  痛みを嫌なものとして払いのけようとすると、そのたびに痛みがこたえます。

⑦痛みというのは、心理的なものも大きい。  訴えるたびに痛みを感じる回路が黒々と太くなるかのようです。  痛みは「見せず、言わず、悟られず」、淡々と日常のことをこなしていた方が楽になることもあります。

⑧社会の問題に向き合う時も、ネガティブ・ケイパビリティは役立ちます。  「みんなが言うから自分も」という付和雷同を慎み、待てよ、と踏みとどまる。  極論に走らず真ん中を見通すための、知性と歴史観を持つことが大切だと思います。』

経営者になって40年以上になりますが、経営者とはある意味「問題解決業」だと私は思っています。  会社を経営する中で日々生じてくる問題やトラブルを一つづつ解決していくことが業務の中心になります。

その際、すぐにでも解決できる問題・トラブルと、時間をかけないと解決できない問題・トラブルとに分けて考えることが必要です。  後者について焦って早く解決しようとすると、かえって問題を大きくしてしまいます。


2.気づく力(9月6日・日経新聞、大相撲の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里))

『①中学卒業後、15歳で旧鳴戸部屋に入門した私は、倍以上も年の離れた30代の兄弟子を含む約30人と一つ屋根の下で暮らす「密」の中で育ち、人としてもっとも大切な礼儀や気づかいを学んだ。

②とくに後援者らを部屋に招いてちゃんこをともにする時間や千秋楽の後にホテルで開催する部屋主催のパーティーの場などは人間形成と社会勉強になった。

③こうした場では後援者の隣で話を聞くだけではなく、食事を取り分けたり、空いたグラスにビールをついだりしなくてはならない。  私は若いころ、先代師匠(故鳴戸親方=元横綱隆の里)や兄弟子から会食の場でのこの「給仕(きゅうじ)」の大切さを教わった。

④おかげで表情や目線から相手が今何を求めているのかを読み取り、自分が次に何をすべきかを先回りして考え、行動する癖がついた。

⑤これができなくて強い力士になれるわけがない。  土俵上でも相手の表情や動作のわずかな変化を見逃さないことが勝負を左右するからだ。

⑥稽古土俵に落ちているゴミを拾わない力士もものにはならない。  足元のゴミに気づかないのは、常にアンテナを張っていないからだろう。

⑦私の弟子でも番付が一番上(東幕下2枚目)の友風はいろいろなことによく気づき、先回りできる。  やはり気づく力と相撲の強さは相関関係にあると、親方になって改めて実感している。』

⑦の「気づく力と強さの相関関係」は極真空手においても成り立つと思います。

指導中、道場に落ちている小さなゴミや髪の毛を、私はよく拾います。  選手がこのブログを読んでくれたら、道場がもっとキレイになるかも 笑


3.昨日は東日本大会でした。  入賞選手へのコメントは、セコンド役の指導員がブログに書くことになっています。

選手・セコンド・応援の皆さん、お疲れ様でした。

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上機嫌とユーモア

1.毎週水曜日に弁護士の鳥飼重和先生からメルマガを送っていただいています。  8月10日のタイトルは『上機嫌こそ人生の柱に』でした。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「人間の最大の罪は不機嫌である」  これはドイツを代表する文豪ゲーテの言葉です。
  
②何故、不機嫌が人間の最大の罪なのでしょうか?  不機嫌は他人に伝播し、負の連鎖を引き起こすためです。  

③不機嫌な人は周りの空気を汚し、その空気を吸った人たちをどんどん負のスパイラルに巻き込んでいきます。  たった1人の不機嫌が負の連鎖の源になるのです。

④反対に、上機嫌も他人に伝播し、正の連鎖の源になりえます。  それを表す、フランスの哲学者・アランの有名な言葉があります。  「他人への最大の贈り物は上機嫌」
 
⑤さらに、アランは上機嫌を次のようにも言っています。  「上機嫌は、世の中すべてを豊かにする真の礼儀である」
  
⑥確かに、上機嫌の人といると、幸せな気分になってきます。  笑顔で上機嫌で過ごすと、周りにも笑顔が伝播し、自分だけでなく周囲の人たちを連鎖的に元気にし、幸せの輪が広がっていきます。
  
⑦たった一人の上機嫌が、幸せの連鎖を生み出すのです。  上機嫌を身に着け、人生の柱にしたいものです。』

「上機嫌」について、今読んでいる対談本『運命を開く 易経の知恵』(渡部昇一・中山理著 モラロジー研究所)の中で、渡部先生が次のように語っています。

『ジュリアス・シーザーは常に上機嫌だったそうです。  将軍として軍隊を率いる人が常に上機嫌だったら、兵士も働きやすいですよね。』


2.8月24日のタイトルは『 ユーモアで仕事力を増やそう 』でした。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ユーモアは人間関係の潤滑油です。  笑うことで心が潤い、その場が明るくなるのは確かですから。
  
②そのため、ユーモアセンスは仕事の能力に直結するといいます。  ある保険会社の営業担当者400人を対象に行った調査がありますが、ユーモア度が高い人ほど営業成績がいいという結果が出たそうです。
  
③この結果は、政治、スポーツ、アカデミックのどの分野でも同じで、心理学の研究でも明るい人ほど成功することが分かっているそうです。
  
④実業家の本田宗一郎氏も、次のように語っていました。  「人間は楽しんでいるときに最高の力を発揮する。  すぐれたジョークは、すぐれたアイデアに通じるのだ」

⑤最悪の状況でも、ユーモアやジョークが生きる力につながります。  惨劇を極めたアウシュビッツ捕虜収容所でも、ユーモアは自己維持のための闘いにおける心の武器となり、生きる力になったのです。
  
⑥精神科医ヴィクトール・E・フランクル博士は、著書『夜と霧』で、ユーモアが心身の健康維持につながったと書いています。
  
「(捕虜収容所の)劣悪な環境という恐怖の中にあっても、ユーモアがあった者ほど心身の健康状態を維持し、生き延びられた」

⑦ユーモアは、ストレス社会に生きる我々にも必要なことでしょう。  マザー・テレサが「平和は微笑みから始まる」と言っているように、世界の共通言語である笑顔やユーモアで、生きる力を育みましょう。
  
⑧職場におけるメンタルヘルスのためにもユーモアを磨きたいものです。』

「笑う門には福来る」、私の好きな言葉の一つです。


3.先週末は京都で、全日本型競技大会・セミコン全国交流大会・西日本大会でした。  

型競技大会で長嶺拓叶(小学2年生の部・第3位)、セミコン大会で晝間俊之介(11歳男子+40kg級・優勝)・三上善晴(12歳男子+50kg級・優勝)、西日本大会で小木戸瑛斗(一般無差別・第3位)の4人が入賞しました。  

選手・セコンド・応援の皆さん、お疲れ様でした。

今週末は東日本大会です。

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