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気のはなし

鍼灸師の若林理砂さんが書かれた『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.東洋医学はリアル+ファンタジー

①このあたりの話をすると、みんな変な顔をするんですが、東洋医学というのは、リアルに観察できている解剖生理+思想宗教の混じり合ったものであって、時代によって体の仕組みに変化があるのです。

②そもそもの話、経絡や経穴は現在の形になるまでにだいぶ変遷があります。  もし、血管や神経のように、解剖して目に見える構造だったとしたら、徹頭徹尾変わらないはずでしょう?  こういうのが、リアル+ファンタジーである証拠でもあるんですね。

③しかしですね、その、完全にファンタジーの部分でありそうな、陰陽や五行の仕組みを応用して治療を行うと、それで難しい症状が一気に治ってしまうことが多々あり、いったいどこからどこまでがリアルで、どこがファンタジーだったりこじつけだったりするのかを特定するのが非常に困難になっているのです。

④気の話も似たようなもので、どこまでがリアルで、どの辺がファンタジーだったり宗教的なものであるかが分別不能となっています。


2.現代中国は気をどう説明するのか

①(前略)これは私にとっては衝撃的な話でした。  ああ、どうやら中国の国家的な公式見解では電気だと言われているのだな、と。

②気はいったいなんなのかを科学的に検証するという研究は、80年代にたくさん行われており、2000年代に入ってからの研究はほとんど見当たりません。  おそらく、気を捉えられそうな計測機器による研究が出尽くしたのだろうと思います。

③そして、それらの研究はいくつかのエネルギーが体を流れている、もしくは体から放出されている様子を検出しました。


3.電気と言い切れない何か

①人体の気=電気というのは、気の一部分を確実に言い当ててはいるのですが、おそらくそこからこぼれ落ちてしまうところがたくさんあるのです。  

②電気であり、遠赤外線であり、波長であり、ホルモンであり、音波であり、温度であり、湿度であり、・・・・・・という、現代の医学や科学では全然関係のないさまざまなことが、いっせいに取り囲んでその真ん中あたりに「モヤッと」立ち昇る、実体があるんだかないんだかわからない「何か」が、たぶん、気そのものなんじゃないのか、私はそんなことを考えるのでした。』

私が日課にしている立禅は「気の養成」がメインテーマです。  また、週に一回、菊澤院長の針治療で「気の調整」を行ってもらっています。  

どちらも、説明しろと言われれば、上の1.に書いてあるように、リアル(科学)+ファンタジー(神秘)としか言いようがありません。  しかし、私自身の長年の実体験から感じるその効果は絶大です。

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勇気

NHK・Eテレの『100分de名著』を毎週観ています。  今月取り上げられているのは古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが書いた『ニコマコス倫理学』です。  第3回のテーマは『「徳」と「悪徳」』でした。  今月の『NHKテキスト』(山本芳久著 NHK出版)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①人間の性格や人柄は習慣の積み重ねから生じてくるというのがアリストテレスの見解でした。  どのような人柄を形成すれば全体として幸福な人生を送ることができるかを考察する学問が「倫理学」であり、その中心にあるのが「徳」というものなのです。  徳のなかでも極めて重要なのが「賢慮」「勇気」「節制」「正義」の四つです。  (中略)

②アリストテレスによれば、徳というものは、生まれながらに備わっているものではありません。  というのも、生まれながらに備わっている性質というものは、固定的な在り方をしているものであり、習慣づけることによって変化させていくことができないからです。  (中略)

③アリストテレスは、徳に関する話として、「正しいことを行うことによって、われわれは正しい人になり、節制あることを行うことによって節制ある人になり、また勇気あることを行うことによって、勇気ある人になる」と述べています。  (中略)

④アリストテレスは、「徳」を身につけることは、様々な「技術」を身につけることと同じだと述べているのです。  (中略)

⑤勇気についても同様です。  戦場において勇敢な行動をすることに困難を感じ、常に逃げ出してしまうような人が、あるとき踏みとどまって戦うことができた。  すると、「これまで勇気を奮って戦うことはとても困難なことだと思っていたが、そうでもなかった」と気がつく。

⑥むしろそれまでは、いくら逃げても敵が迫ってくるような気がしてずっと怖かった。  でも堂々と立ち向かってみると、敵のほうが逃げていって怖くなかった。  「なんだ、こっちのほうが楽じゃないか」。  このようにして、勇敢な選択肢を素早く選び取ることができるようになり、その在り方に喜びを感じるようにもなる。

⑦このように、技術と徳は、身につける仕方についても、また身につけたときに素早さや喜びがともなうという点においても、大いに共通点があるとアリストテレスは述べています。  (中略)

⑧②で「徳は生まれつき備わっているものではない」という話をしました。  だからと言って私たちは自らの性格を自由自在に築き上げていくことができるかというと、必ずしもそうではありません。

⑨なぜならば、私たちが「自分の性格を何とかしたい」などと思い始めたときには、すでに相当な習慣づけがされているからです。  もっと勇敢になりたいと思う人は、つい尻込みすることが身についてしまっているからこそそう思うわけですよね。

⑩つまり、私たちはニュートラルな状態から出発できるわけではなく、気づいたときには「徳」と「悪徳」の組み合わせによる、ある種の傾向を身につけているわけです。

⑪アリストテレスが言ってるのは、その身につけてしまったものを引き受けたうえで、「いま、ここ」でどのように振る舞うかが大事だということです。

⑫それによって、少しづつではあるけれど決定的な仕方で、自らの人生に方向づけを与え直していく。  より現実的に、それぞれの人が直面している状況のなかで何ができるかを考えさせてくれる、柔軟性の高い捉え方だと言えます。』

「自分の今の在り方に気づくこと」→「気づいたら、なるべく早めに習慣化すること」が大事なんですね。

「勇気」を身につけるには、極真空手は最適です。  稽古・審査会・試合を通じて、「勇気ある自分」が習慣化されるからです。

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内臓脂肪

『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(奥田昌子著 講談社)を読みました。  「不健康な内臓脂肪は、なぜ受け継がれているのか」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①残念ながら、日本人を含む東アジア人はお腹の脂肪、正式には内臓脂肪がつきやすいことがわかっています。  脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪があり、このうち内臓脂肪は、その名のとおり肝臓、膵臓、腎臓などの内臓の周囲にたまります。  (中略)

②実際に、同じ体型どうしで比較すると、東アジア人は他の人種とくらべて高血圧と糖尿病になりやすいことを示す報告が多数あります。  

③これをふまえて、男性の腹囲の基準値は日本と米国で大きく異なり、日本の85cmに対して米国は102cmです。  この基準値の意味は、腹囲102cmの欧州系米国人についている内臓脂肪の量と、腹囲85cmの日本人についている内臓脂肪の量が同じということです。  (中略)

④日本人は欧州系の人より一見やせていても、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)に注意が必要だということです。

⑤それにしても、内臓脂肪がつきやすいという不利な体質が、なぜいまだに受け継がれているのでしょうか。  答えは簡単、内臓脂肪には本来重要な役割があるからです。

⑥人は動物と違い、体を立てて生活するため、そのままだと臓器が重力で下がってしまいます。  内臓脂肪がある程度ついていれば臓器をほどよく固定できるうえに、体に受けた衝撃から臓器を守るのに役立ちます。

⑦そんな内臓脂肪がとくに東アジア人につきやすい原因は、筋力の強さとの関係で説明できます。

⑧筋肉は白筋(はっきん)と赤筋(せっきん)という性質の異なる2つの成分が混じってできています。  白筋が瞬間的に大な力を発揮して瞬発力を生むのに対して、赤筋はゆっくり長い時間にわたって働くことで持久力をもたらします。  陸上競技でいうと、白筋が強ければ短距離走に、赤筋が強ければ長距離走に向いているといえそうです。 

⑨赤筋と白筋の比率はACTNという遺伝子のタイプで決まります。  人種による差が大きく、運動で鍛えてもほとんど変化しません。  アフリカ系、欧州系、アジア人の順で白筋の割合が高いとされています。

⑩内臓を支えるのに役立つ筋肉は2つあります。  腹横筋と腹斜筋です。  どちらもおもに白筋でできているため、白筋の力が弱い日本人は筋力が弱く、内臓を支えることができません。  これを補うには、内臓脂肪がある程度ついているほうがよいのです。

⑪内臓脂肪がいけないわけではなく、問題はつき過ぎなのです。』

赤筋と白筋は武道やスポーツにおける持久力やスピードだけではなく、内臓脂肪の量にも関係あったんですね。

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師弟愛

菊澤院長から薦められた『武術空手の知と実践』(宇城憲治著 合気ニュース)を読みました。  後半部分で著者が師である座波仁吉先生(沖縄古伝空手心道流宗家)と対談しています。  「師弟愛があってこそ技は伸びる」の項の座波先生の発言から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『・・・教えながら先生が学ばれるというのはありますか。

①そうね、空手を教えるというひとつの時期でも自分の稽古は怠ったことがない。  教える稽古と自分の稽古は別。  自分の稽古の通りに生徒に教えても通用しない。  だから自分の稽古は自分の稽古。  学生に教える稽古は大衆的な稽古。  そうやってはっきり区別していました。

②しかし僕は今でもよく言いますけど、弟子に教えながら僕の技の60パーセントは弟子から習っておる。  だから弟子が上達するほど、僕の技が増えてくる。  それが僕の目標であり、楽しみなんです。  

③もうひとつの僕の目標は弟子を出世させること。  いつのまにか師匠より上手になったなぁというような弟子になれと言っているんです。

④指導者と弟子の関係は、僕は非常に重要に考えているけど、現在の空手の先生たちはそういうのをあまり考えていないね。  僕に言わしたら現代空手の欠陥はそこにある。

⑤弟子と先生が一心同体というのは昔の言葉だけど、先生が弟子をかわいがらんことにはほんとの師弟愛というのはできない。  師弟愛ができてこそ技が伸びるのであって、それは師匠の心掛けなんです。

⑥師匠が弟子は弟子だと考えていたら、弟子も師匠は師匠だとそれでけりをつけてしまう。  それでは師弟に本当の技のつながりができない。  師弟を育てるには、まず自分がその師弟の保護者にならなきゃいかん。  それが僕の希望であって、考え方です。

⑦僕の弟子で、こらぁ~おまえはと言われるような弟子は一人もおらん。  そうだと思うんです。  弟子のみんなに聞いてみなければわからんけど(笑)。』

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運動前ストレッチ

4月22日の日経新聞・土曜別紙の連載『元気の処方箋』のタイトルは「運動前ストレッチ 依然利点多く」でした。  筆者は東京大学医学部付属病院の理学療法士・山口正貴さんです。  番号を付けて紹介します。

『①多くの人が学生時代に「運動前にはしっかりストレッチするように」と指導されたのではないだろうか。  ただ、今でも続けている人は少し注意が必要だ。

②なぜなら2000年代後半、静的ストレッチ(反動をつけずに一定時間保持して筋肉を伸ばす)をすると、筋力やジャンプ等の瞬発力が数%低下することが分かったからだ。  つまりそれまでの常識が変わった。

③ストレッチには柔軟性の向上や筋肉・腱の損傷リスクの低下といったメリットがあるとされている。  そのため、これまで準備体操としてストレッチを当然のように行ってきたスポーツ界は困惑した。

④混乱を招いているのはそれだけではない。  最近になって再び「運動前に静的ストレッチを行った方がよい」という従来の見解に戻ったためだ。  ただし、これには2つの条件が新たに追加された。

⑤1つ目は運動前のウオーミングアップ(動きながら行う動的ストレッチやバイクやジョギングなど)の一部として静的ストレッチを行うこと。

⑥2つ目は、各ストレッチの総時間を60秒以内にすること。  例えば1カ所につき30秒なら2回、20秒なら3回まで。  

⑦60秒より長く静的ストレッチをすると筋力やパワー(筋力×スピード)が4~7.5%低下するとされているため、パフォーマンスへの影響を気にするのであればストレッチ時間は考慮すべきだ。

⑧この2つの条件を満たすのであれば、静的ストレッチは筋力とパフォーマンスには些細(ささい)な悪影響しか与えないことが様々な研究から分かった。

⑨0.01秒を競うアスリートのような人は、運動前の静的ストレッチに注意する必要がある。  

⑩一方、大多数の人にとっては僅かな筋力低下というデメリットよりも、柔軟性向上やケガの予防というメリットの方が大きい。  「運動前にはウオーミングアップの一部として60秒以内の静的ストレッチをしましょう」という現在の常識に沿うことをおすすめする。』

極真空手の試合前のウオーミングアップの際も、㋐柔軟性向上、㋑ケガの予防、㋒パフォーマンスへの影響を総合的に勘案する必要があります。  ですから、「運動前にはウオーミングアップの一部として60秒以内の静的ストレッチをしましょう」ということになりますね。

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