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意拳学

1976年から、立禅を中心とした意拳を朝の日課にしています。  一昨年は『武道気功 私の「立禅」修行』(道義出版)という本を出しました。  私が指導する選手稽古も、まず意拳から始まります。

今回は、私が若いころご指導いただいた澤井健一先生の兄弟弟子である韓星橋先生が書かれた『意拳学』(スキージャーナル)という本から抜粋し、番号を付けて紹介します。  本書では立禅のことを站樁(たんとう)と書かれていますが、理解しやすいように「立禅」に統一しました。

『意拳の練習過程は、求力・試力・発力の三段階に分かれる。  (中略)

1.求力
①求力は、鍛錬を通して自分が拳術の力を獲得することである。  この拳術の力は、人体各部に本来備わった力で、拳術の技撃の目的に基づいて熟練運用しなければならない。  (中略)

②意拳では、立禅の方法を通して拳術力を求める目的に達する。

2.試力
①試力は立禅の基礎の上、点、線、面、体の直線を通して、各立禅間での空間の移行・転換を完成し、全空間において意に伴って渾円力(空間のどの方向上にも随時意のままに身体を運用できる能力のこと)を使用するという目的を達成するのである。

②試力の鍛錬を経過した後、我々はすでに空間において意のままに各種の動作ができるようになり、全身の均整協調を失うことがない。  この種の状態を「得力」と呼ぶ。

3.発力
①技撃において単に自分の姿勢が均整のみでは足りず、自身の力を相手の体に作用させなければならない。  (中略)

②発力練習を通して、どのように自分の整力を相手の体に作用させるかを習得しなければならない。』

少し難解ですが、意拳の稽古体系を理解する上で大変参考になります。

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第53回全日本大会

一昨日は第53回全日本大会・2021全日本女子大会でした。  男子10名、女子1名が出場しました。  以下はゼッケン番号順のコメントです。

①針山功靖(ゼッケン5番)・・・1回戦で川端翔選手に本戦判定負け。  体重差10㎏の川端選手にパワー負けしました。  ウェイトトレーニングによるパワーアップが必要です。  技術的には、相手のパワーをまともに受けないような体捌きの研究が大切です。

②奥寺勇輝(ゼッケン13番)・・・3回戦で飯塚翼選手に本戦判定負け。  飯塚選手の若さと勢いに飲み込まれた印象でした。  技術的には奥足外の下段回し蹴りの脛受けができなかったことが致命的です。  今後の奮起に期待します。

③加賀健弘(ゼッケン14番)・・・準決勝で西村界人選手に再延長戦判定負け。  第3位。  再延長戦も大差はありませんでした。  悲願の初優勝に向けて、あと1歩のところまで来ているように感じます。

④平山尚樹(ゼッケン18番)・・・1回戦で杉山徳選手に本戦判定負け。  真面目に取り組んでいるようですし、気迫も感じますが、攻防における受け返し、下段回し蹴りの脛受けなど、基本的な技術が不足しています。  もう一度原点に返って組手技術の習得をする必要があります。

⑤金子雄大(ゼッケン22番)・・・1回戦不戦勝、2回戦で徳田寛大選手に本戦判定負け。  23㎏重い相手に対して善戦はしましたが、重い突きを身体でまともに受けてしまいました。  針山同様、相手のパワーをまともに受けないような体捌きの研究が必要です。

⑥石崎恋之介(ゼッケン27番)・・・準々決勝で山川竜馬選手に本戦判定負け。  第6位。  身長で18㎝、体重で15㎏上回る相手の突き・押しと膝蹴りのラッシュの好印象を消し込めませんでした。  以前から指摘されていることですが相手の真正面に立たずにずれて攻防すること(ポジショニング)と、針山・雄大同様に体捌きの研究が必要です。

⑦岡部慎太郎(ゼッケン36番)・・・3回戦で山川竜馬選手に本戦判定負け。  新人賞。  昨年末の錬成試合の敗北を受けて、組手の改造に取り組んできましたが、その成果が出てきました。  真面目に稽古しているので、経験さえ積めば、チャンピオンも見えてくると思います。

⑧佐藤拓海(ゼッケン43番)・・・準々決勝でコンスタンティン・コバレンコ選手に本戦判定負け。  第7位。  慎太郎同様、昨年末の錬成試合の敗北を受けて、組手の改造に取り組んできましたが、その成果が出てきました。  突きが、今はまだ「蹴りのつなぎ」になっていますが、今後倒せるような強いものに変われば、表彰台も夢ではありません。

⑨平沢拓巳(ゼッケン46番)・・・1回戦で長澤大和選手に本戦判定負け。  天性の素材の良さはあるのですが、17㎏重い相手の前に出る圧力を止めきれず、下がる展開になってしまいました。  無差別の大会で戦うには、ウェイトトレーニングによるパワーアップが欠かせません。

⑩小木戸瑛斗(ゼッケン51番)・・・1回戦で岩田大選手に本戦判定負け。  体重差は26㎏あり、若干押される場面も見られましたが、直線的に下がることなく、回り込んで上手く戦っていたと思います。  技・パワー・スタミナをさらに向上させるべく、今後の精進に期待します。

⑪八幡華菜(ゼッケン201番)・・・決勝戦で佐藤七海選手に本戦判定負け。  準優勝。  パワー・技術・スタミナ面において、優勝した佐藤選手のほうがわずかずつですが、上回っているように見えました。  11月の全日本大会で優勝するには、それらの差を縮め、少しでも上回ることができるかどうか、にかかっています。

1年5か月ぶりの全日本大会でしたが、今後の研究材料・課題を多く見つけることができました。  6月の体重別大会、11月の第54回全日本大会に向けて、チーム城西一丸となって稽古に励みましょう。

選手・セコンド・コーチ・応援の皆さん、お疲れ様でした。  

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油を塗った球

3月13日のブログで『澤井健一の遺産 太気拳で挑む』(高木康嗣著 福昌堂)を紹介しました。  今回も澤井先生のお弟子さんが書かれた『太気拳の教え』(岩間統正著 ゴマブックス)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①闘いの場においては、自分がいて相手がいるわけですから、二人の間には空間、いわゆる「間合い」というものが存在します。  それは一定の体積を持ったものではなく、いままさに相手が打とうとする瞬間に、自分が後ろに下がるべきか、それより早く一気に攻め込んでいくかという舞台になる、「一瞬の空間」です。

②その間合いをどう操作するかを、私は「打気」と呼んでいますが、闘いの場においては、これが重要な要素になってきます。

③このとき、太気拳では自分の身体を「油を塗った球(たま)」にすると表現しています。  相手がこちらを捕まえようとしても、打とうとしても、つるりと滑って捕まえられないようにする動きです。  これができれば、打撃戦になっても、相手はこちらの体を捕まえることができません。

④たとえば、自分が負ける場合のパターンをいくつか想定してみましょう。  (中略)  そうした状態を避けるためには、相手の攻撃を手で払ったり、受け流したり、足でブロックしたり、ステップバックして受けたり、間合いを詰めて攻撃力をそいだりする方法があります。

⑤太気拳では、「自分の体の中心に、直接相手の力を届かせないようにする」ことをたいせつにしています。  そのために「這い(摩擦歩)」という特殊な練習方法を用いて、つねに一番有利な位置取りをするためのフットワークと、それに伴って柔軟に回転する体の使い方を学びます。

⑥相手の攻撃をがっちりと食い止めるのは格好よく見えますが、それでは自分の体で相手の力を受けてしまうことになります。  相手の攻撃によって自分にかかる圧力を、自分の中心から、手、膝、腰を連動してそらし、自分の中心に圧力がかからないようにすることが要点です。』

上記③の「自分の身体を油を塗った球にする」ということでは、かっての名選手・堺貞夫選手を思い出します。  身長157cm、体重60kgの小兵ですが、対戦した城西メンバーのほとんどが敗れ、勝ったのは大賀雅裕(第1回ウェイト制大会軽量級チャンピオン)だけでした。

大型選手の少ないチーム城西において、「自分の身体を油を塗った球にする」というのは、技術面における最大のテーマだと思います。


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ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足

1999年に発行された『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足』(小長谷正明著 中公新書)を読みました。  「まえがき」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①筆者は神経内科医である。  脳や脊髄、末梢神経、筋肉などのはたらきの異常を診るのが専門だ。  精神科ではない。  シビレなどの感覚障害、ふるえやマヒなどが主な症状だ。  だから、目にする人の立ち居ふるまいや、表情、声の調子などが気になる。

②そして、20世紀は科学技術の世紀であり、映像の世紀でもある。  会えるはずのない、海の向こうや歴史の彼方の政治家、それに雲の上の人の歩き方や動作をテレビや映画でみることができ、ついプロ意識で病気かどうかを診断することがある。

③いわば神経内科医の本能で、ヒトラーのふるえや毛沢東のすり足もブラウン管を通して視診した。  そこで、20世紀のリーダーたちの神経疾患を調べてみて、歴史に投げかけた影を考えてみた。

④20世紀は何かときな臭く、政治的に不安定で、大変動が多かった時代である。  2つの世界大戦や、ロシアや中国などでの革命と、それらにまつわる局地戦争や動乱、粛清がたえずあった。  

⑤そのつど、都市と文化は破壊され、兵士だけではなく、多くの普通の市民が命を落とした。  決して明るさと希望にみちていた世紀ではなかったようだ。  

⑥この100年間のきわめつけの大事件は第二次世界大戦と、ほぼ1世紀にわたる中国の大混乱、そして共産主義の実験国家、ソ連の盛衰である。

⑦これらの事件では、いずれも強烈なリーダーないし独裁者があらわれ、彼らのパーソナリティーが歴史の流れや人々の運命に大きく作用した。  彼らがどのように世界を考え、どうしたいと思い、また感情がどうゆれ動いたかで、人類の行く末が左右されたともいえる。  (中略)

⑧20世紀の大事件のリーダーたち、ヒトラー、レーニンとスターリン、毛沢東、さらにアメリカ大統領のウィルソンやフランクリン・ルーズヴェルトは、脳の器質的障害による神経疾患にかかり、この世から去っていった。  

⑨アメリカのカーター大統領の特別補佐官であったブレジンスキーが1993年に出したある計算では、20世紀に、人による命令あるいは決定によって殺された人の数は、1億6700万人にのぼるという。  この数字のかなりの部分に前にのべた人たちは直接、間接にかかわっていた。

⑩ある場合は、指導者たちの病気によって混乱はさらに深まり、より悲惨な将来をもたらすこともあったし、別のケースでは独裁者の死でもってマイナスの歴史をそこで断ち切ることができたこともあった。(中略)

⑩20世紀の独裁者、あるいは為政者の病気が、世界や人々におよぼす影響を考えることは、次の21世紀をより良い時代として迎えるために、意義があるにちがいない。』

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