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横綱・照ノ富士

『奈落の底から見上げた明日』(照ノ富士春雄著 日本写真企画)を読みました。  『(入門当初の兄弟子)元若天狼・上河啓介さんが語る「弟弟子」照ノ富士』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①入門したての頃の照ノ富士に伝えたのが、「強くなっても、偉くなったと勘違いしちゃダメだよ」ということでした。

②お相撲さんは、関取(十両)になったら、昨日まで自分が誰かのお世話をしていたのに、突然付け人がついて化粧まわしももらって、と急に生活が一変します。  しかしそれは、関取というシステムに則っているだけです。  つまり、ただ相撲で強くなっているだけなのに、まるで偉くなった気になってしまう。  そのことに、早い段階で気づいていないといけません。

③偉くなった気になると、また番付が下がったらどうなるのかも含め、自分自身がブレてしまいます。  その立場で仕事をして、ルールに従っているだけで、偉いかどうかではないのに、どうしても〝上下〟になってしまう。  すると、歯止めがきかなくなって、周りに人がいなくなってしまうんです。

④角界に一生いるなら、まだそれでもいいけれど、その考えのまま相撲界を離れたら、本当にどうするのか。  特に、角界を離れて思いますが、そういうことを理解できていれば視野が広がると、僕は思っています。

⑤人間なので、失敗もいろいろあっていいけれど、どこで気づくかが大事です。  (中略)

⑥お相撲さんや親方衆は、本当に多くの人と付き合いがあるので、さまざまな言葉自体は聞いたことがあっても、それらをどこまで体感して気づいているかはわかりません。  こういったことを理解していくことで、今後も同僚や応援してくださる周りの方々からも慕われるんじゃないかと思いました。

⑦僕自身も、十両でケガをして序二段まで落ちて、また十両に上がった経験があります。  地位の上がり下がりは照ノ富士と随分違いますが、ケガの苦しみは多少なりともわかってあげられるつもりだったので、無責任に聞こえるかもしれませんが、あのときは、「頑張れよ」としか言えませんでした。

⑧周りから言われるだけでは、今後のことも決めきれないので、自分でどう決めるのか。  酒やたばこと一緒で、人に「やめたほうがいいよ」と言われているうちはやめられないけれど、自分で本当にこれはダメだと思ってやめる決心ができたらやめられるもの。  いくら周りがもう一度頑張れと言っても、自分の気持ちがついてこなければ、やる気にはなれないだろうと思ったんです。』

上河さんの話には大変感銘を受けました。

ケガや病気で大関から序二段まで落ち、後に見事復活して横綱に昇進した照ノ富士ですが、その陰には素晴らしい兄弟子の存在があったんですね。



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