2021.09.26 Sun
脳細胞を育てる
1.『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョン・J・レイティ著 NHK出版)を読みました。 「第一章 運動と脳に関するケーススタディ」から抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①シカゴの西、ゆるやかな丘の上に立つれんが造りのネーパーヴィル・セントラル高校の地階にある天井の低い部屋には、何台ものランニングマシンとエアロバイクが並べられている。 午前7時10分。 これから体育の授業が始まるのだ。 (中略)
②これは昔ながらの体育の授業ではない。 一連の教育実験における最新の取り組み、「0時限体育」である(その名称は、1時限目の前に組み入れられたことによる)。 型破りな体育教師のグループが始めたもので、その結果、ネーパーヴィル203学区の生徒1万9000人は、全国一健康になり、成績も目覚ましく向上した。 (中略)
④なぜ成績向上を期待するかというと、近年の研究によって、運動が生物学的変化を引き起こし、脳のニューロンを結びつけることがわかったからだ。 脳が学習するには、そうした結びつきが作られなければならない。 神経学者がこのプロセスについて研究するうちに、運動がなによりの刺激となって、脳は学習の準備をし、意欲をもち、その能力を高めることがわかってきた。
⑤とくに有酸素運動は「適応」に劇的な効果を及ぼす。 「適応」とは、心身のシステムのバランスを整え、その能力を最大限にしようとする機能であり、自分の可能性を切り開いていこうとする人にとって、欠くことのできないメカニズムだ。』
2.「第二章 脳細胞を育てよう」からも抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①ここまでくれば、運動が三つのレベルで学習を助けていることは十分おわかりいただけたと思う。 まず、気持ちがよくなり、頭がすっきりし、注意力が高まり、やる気が出てくる。 つぎに、新しい情報を記録する細胞レベルでの基盤としてニューロンどうしの結びつきを準備し、そして三つ目に、(脳の)海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す。 (中略)
②有酸素運動と複雑な動きはそれぞれ別の有益な効果を脳にもたらすのだ。 ありがたいことに、この二つは互いに補いあっている。 「両方を取り入れることが大切だ」と神経科学者のウィリアム・グルーノーは言う。 「運動の計画を立てるなら、技能の習得と有酸素運動を含めるべきです」 (中略)
③有酸素運動が神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにする。 動きが複雑であればあるほど、シナプスの結びつきは複雑になる。
④また、こうしたネットワークは運動を通して作られたものではあっても、ほかの領域に動員され、思考にも使われる。 ピアノを習っている子どもが算数を習得しやすいのはそのためだ。 前頭前野は、難しい動きをするために必要な知的能力を、ほかの状況にも応用しているらしい。
⑤ヨガのポーズ、バレエのポジション、体操の技、フィギュアスケートの基本、ピラティスの姿勢、空手の型・・・これらすべての練習には、脳全体のニューロンがかかわっている。
⑥そしてたとえば、ダンサーを対象とするいくつかの研究によれば、規則的なリズムに合わせた動きよりも、不規則なリズムに合わせた動きの方が脳の可塑性が向上するという。
⑦歩く以上に複雑な運動技能はすべて、学ばなければ身につかないため、どれも脳を刺激する。 はじめは少々ぎこちなくて恰好悪くても、小脳と大脳基底核と前頭前野をつないでいる回路がスムーズに流れるようになるにつれて、動きは正確になっていく。
⑧何度も繰り返すことでニューロンの軸索の周りの髄鞘も厚くなっていき、信号の質や伝達速度が向上し、回路はより効率的になる。 空手を例に挙げれば、ある型を習得すると、より複雑な動きにそれを組み入れられるようになり、じきに状況に応じた反応も洗練されてくる。』
3.本書を読むと、以下の理由で、空手の稽古は脳を育てるのに最適ですね。
(1)空手の稽古自体が、心肺機能のスタミナを養成する有酸素運動そのものです。・・・上記1.⑤、2.②③参照
(2)基本・移動稽古・型は、きわめて複雑な動きの習得の積み重ねです。・・・上記2.③参照
(3)スパーリング・組手試合は相手との攻防になるため、当然、不規則なリズムに合わせた動きとなります。・・・上記2.⑥参照
『①シカゴの西、ゆるやかな丘の上に立つれんが造りのネーパーヴィル・セントラル高校の地階にある天井の低い部屋には、何台ものランニングマシンとエアロバイクが並べられている。 午前7時10分。 これから体育の授業が始まるのだ。 (中略)
②これは昔ながらの体育の授業ではない。 一連の教育実験における最新の取り組み、「0時限体育」である(その名称は、1時限目の前に組み入れられたことによる)。 型破りな体育教師のグループが始めたもので、その結果、ネーパーヴィル203学区の生徒1万9000人は、全国一健康になり、成績も目覚ましく向上した。 (中略)
④なぜ成績向上を期待するかというと、近年の研究によって、運動が生物学的変化を引き起こし、脳のニューロンを結びつけることがわかったからだ。 脳が学習するには、そうした結びつきが作られなければならない。 神経学者がこのプロセスについて研究するうちに、運動がなによりの刺激となって、脳は学習の準備をし、意欲をもち、その能力を高めることがわかってきた。
⑤とくに有酸素運動は「適応」に劇的な効果を及ぼす。 「適応」とは、心身のシステムのバランスを整え、その能力を最大限にしようとする機能であり、自分の可能性を切り開いていこうとする人にとって、欠くことのできないメカニズムだ。』
2.「第二章 脳細胞を育てよう」からも抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①ここまでくれば、運動が三つのレベルで学習を助けていることは十分おわかりいただけたと思う。 まず、気持ちがよくなり、頭がすっきりし、注意力が高まり、やる気が出てくる。 つぎに、新しい情報を記録する細胞レベルでの基盤としてニューロンどうしの結びつきを準備し、そして三つ目に、(脳の)海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す。 (中略)
②有酸素運動と複雑な動きはそれぞれ別の有益な効果を脳にもたらすのだ。 ありがたいことに、この二つは互いに補いあっている。 「両方を取り入れることが大切だ」と神経科学者のウィリアム・グルーノーは言う。 「運動の計画を立てるなら、技能の習得と有酸素運動を含めるべきです」 (中略)
③有酸素運動が神経伝達物質を増やし、成長因子を送り込む新しい血管を作り、新しい細胞を生み出す一方で、複雑な動きはネットワークを強く広くして、それらをうまく使えるようにする。 動きが複雑であればあるほど、シナプスの結びつきは複雑になる。
④また、こうしたネットワークは運動を通して作られたものではあっても、ほかの領域に動員され、思考にも使われる。 ピアノを習っている子どもが算数を習得しやすいのはそのためだ。 前頭前野は、難しい動きをするために必要な知的能力を、ほかの状況にも応用しているらしい。
⑤ヨガのポーズ、バレエのポジション、体操の技、フィギュアスケートの基本、ピラティスの姿勢、空手の型・・・これらすべての練習には、脳全体のニューロンがかかわっている。
⑥そしてたとえば、ダンサーを対象とするいくつかの研究によれば、規則的なリズムに合わせた動きよりも、不規則なリズムに合わせた動きの方が脳の可塑性が向上するという。
⑦歩く以上に複雑な運動技能はすべて、学ばなければ身につかないため、どれも脳を刺激する。 はじめは少々ぎこちなくて恰好悪くても、小脳と大脳基底核と前頭前野をつないでいる回路がスムーズに流れるようになるにつれて、動きは正確になっていく。
⑧何度も繰り返すことでニューロンの軸索の周りの髄鞘も厚くなっていき、信号の質や伝達速度が向上し、回路はより効率的になる。 空手を例に挙げれば、ある型を習得すると、より複雑な動きにそれを組み入れられるようになり、じきに状況に応じた反応も洗練されてくる。』
3.本書を読むと、以下の理由で、空手の稽古は脳を育てるのに最適ですね。
(1)空手の稽古自体が、心肺機能のスタミナを養成する有酸素運動そのものです。・・・上記1.⑤、2.②③参照
(2)基本・移動稽古・型は、きわめて複雑な動きの習得の積み重ねです。・・・上記2.③参照
(3)スパーリング・組手試合は相手との攻防になるため、当然、不規則なリズムに合わせた動きとなります。・・・上記2.⑥参照