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2021年05月 | ARCHIVE-SELECT | 2021年07月

地面反力を使う

1.『ロジカル筋トレ』(清水忍著 幻冬舎新書)を読みました。  『バーベルを上げるときは「地面から力をもらう」』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「地面反力」というのは、地面を強く蹴ったり押し込んだりしたときの反動として「地面からもらい受ける力」のことを指す。  たとえば、スクワットは地面への踏み込み能力を向上させるためのトレーニングと私は考えているのだが、バーベルを持ってのスクワットで体を上げていくときに「もっと地面反力を使って上げろ!」と言ったりする。

②しっかりと地面反力をもらうには、しっかりと立って地面を強く踏み込まなくてはならない。  そのため、私は、体重70キロの人が100キロのバーベルを上げる場合、「100キロのバーベルを上げようとするよりも、自分の体重とバーベルの重量を足した170キロで地面を押し込め」といった指導をする。

③この感覚がつかめてくると、人は自然に「いちばん強く地面を押せるポジション」をとってスクワットするようになる。  また、フォームもおのずと整ってきて、「地面を強く押せる理に適ったフォーム」をとるようになっていく。  そうすると、170キロの力強さで地面をしっかりと押し込み、その地面反力を使って100キロのバーベルを上げられるようになっていくのである。

④このように、人は「地面をしっかりと押すこと」を意識していると、あれこれ教えられなくても本能的に合理的な動作をとるようになっていくものなのだ。  もちろんスクワットに限った話ではない。  他の筋トレメニューでも「足腰で地面を力強く押すこと」を意識していると、押すためのフォームがピシッと固まって、合理的かつ効率のいいトレーニングができるようになっていく。

⑤さらに、日々足腰で地面を踏み込むトレーニングを積んでいると、日常動作にも好影響が現れるようになる。  例を挙げれば、床から重い荷物を持ち上げる際、足で地面を踏み込むことによってスムーズに持ち上げられるようになったり、電車通勤の際、足を踏み込んで立っているために大きく揺れても体がグラつかなくなったり・・・・・・。  なかには、普段から地面を押すのを意識しながら歩いたり走ったりしていたら、いつの間にか足が速くなっていたという人もいる。

⑥おそらく、地面を押し込み、地面から力をもらうということは、人間が合理的な動作をするためのいちばんの基本なのだろう。  逆に言えば、わたしたち人間は「足腰で地面を押す」を習慣にすることによってこそ、合理的で効率のいい身体動作を取り戻していくことができるのではないだろうか。』


2.1.④の「他の筋トレメニュー」に関し、他の章で、ベンチプレスについて次のように書かれています。

『私がアスリートを指導するときには、よく「ベンチプレスは肩甲骨の『地面反力』を使え」という言い方をしている。  「肩甲骨の地面反力」を使ってベンチプレスを行なうと、大胸筋だけでなく上腕三頭筋・三角筋前部など複数の筋肉が最適なタイミングで使われ、それらの筋肉の連動性や力の伝達力を合理的に高めていくことができるのだ。』


3.「地面反力」については、意拳の創始者である王薌齋先生も言及されています。  孫立先生が書かれた『王薌齋伝』(ベースボールマガジン社)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①練習にさいしては、また人体の外力と内部の動きのあいだにある対立と統一の法則を巧みに運用しなければならない。

②人体の外力には四種類ある。  ひとつは人体の力、つまり重力で、位置エネルギーが運動エネルギーに転化することで、「地球の中心と争う力」になる。

③地面が支える力とそれに対する反作用の力は、いわゆる「地面から離れて飛び立つ」力である。』

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ストレッチよりマッサージ

昨日の日経新聞・別紙の特集『元気の処方箋』のタイトルは「運動後、ストレッチよりマッサージ」で、理学療法士の山口正貴さんが書かれていました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①激しい運動をした後、筋肉痛軽減、疲労回復のためにストレッチや軽いジョギング・ウオーキングでクールダウン(整理運動)をする。  常識として今も続けている人は多いのではないだろうか。  しかし現代のスポーツ医学ではストレッチやジョギングでクールダウンするのは必ずしも常識ではなくなってきている。  (中略)

②実は筋肉痛や疲労のメカニズムは完全には解明されていない。  かっては筋肉を動かすとできる乳酸の蓄積が疲労の原因と考えられていたが、最近の研究をみると、必ずしもそうとはいえないようだ。  乳酸はむしろエネルギーとして再利用されるなどしている。  

③ただ運動で損傷した筋肉の修復や老廃物の排出のために血行をよくするのが大切なのは変わりないようだ。  それでは様々な方法の中で本当に効果的なクールダウンはどれなのか。  

④ジョギングやストレッチのほか、血行をよくするという意味ではマッサージや冷水浴、お湯と冷たい水に交互につかる交代浴、患部を短時間冷やす寒冷療法といった方法が知られている。  近年では体にぴったりとはりつくような着圧ウェア、電気刺激を活用することもある。

⑤こうした方法のいくつかについて実際に効果を比較検証した研究報告によると、筋肉痛や疲労の軽減に明確に効果があるのはマッサージで、他の多くは統計学的に明らかな効果が認められないという。  ただ筋肉痛などの炎症の改善には冷水や寒冷療法など冷やす方法は有効としている。

⑥スポーツ医学は日進月歩。  これまでの常識を覆す研究が世界中で進んでいる。  クールダウンでも現状ではストレッチより、使った筋肉をマッサージしたり、冷やしたりする方法をおすすめしたい。』

というわけで、今日の午後は代官山・フラックスの菊澤院長の所です(^^)/

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マイケル・ジョーダンの「舌出し」

1.『近くて遠いこの身体』(平尾剛著 ミシマ社)を読みました。  『無の境地=「ゾーン」にいたったら』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①スポーツの世界では、重圧がかかる場面でも高いパフォーマンスを発揮できる理想的な心身の状態を指して「ゾーン」という。  極度に集中力が高まった心身の状態を意味し、試合の流れを左右するような大事な場面でいかんなく能力を発揮するには、「ゾーン」に入る必要があるとされている。  (中略)

②「ゾーン」、つまり無心の境地にあるときには口元は必ず緩む。  (中略)  このときの身体実感は「適度な緊張感を保ちつつのリラックス」である。  だから口元は緩む。  (中略)

③プレー中に口元が緩んでいるアスリートは意外にもたくさんいる。  舌を出しながらプレーする選手はたくさんいて、有名なのは、NBA元バスケットボール選手のマイケル・ジョーダン。  写真でも映像でも、彼はぺろりと舌を出しながらプレーをしている。

④ボールを保持せず味方に指示を出している場面では眉間に皺を寄せた険しい表情も見られるが、いざプレーしている場面ではそんなことはない。  少しおどけた顔で舌を出すのがほとんどである。

⑤これは歯を食いしばっていないということに他ならない。  つまり力んでいない。  身体のどこにも力みがない状態でなければ、情況の変化に応じた最適な動き方ができるはずもないのである。  (中略)

⑥だが、「ゾーン」がどのような状態かがわかったところで、そこに至ることができるかどうかはまた別問題である。  これがまた相当な難題であることは論を俟(ま)たない。  (中略)  目指すは「ゾーン」に自由に出入りできる身体。  少なくとも歯を食いしばらないようにだけは努めることにするか。』


2.マイケル・ジョーダンの「舌出し」について、スポーツライターの青島健太さんが、日経ビジネスのサイト(2017年12月25日)で書かれていました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①私が「舌」を出す選手に注目して、その効用を考えていたのは90年代のことだ。  NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンがいつも「舌」を出してプレーしていたからだ。  彼の代名詞「トリプルアクセル(空中で3回のフェイクを入れる)」からダンクシュートを決める時にも、空中で大きく口を開け「舌」を出しながらゴールのリングにボールを叩き込んでいた。

②彼に会った時に「なぜ舌を出すのか」と聞いたことがあるが、彼のおじいさんに「舌を出すとよいプレーができる」と子供の頃に教わったからだと言っていた。

③それは舌を出すと奥歯を踏ん張らないので、上体の力が抜けてリラックスした状態でプレーできるからだろう。  バスケットボールは視野を広くして、瞬時に臨機応変に動く必要がある。  華麗なドリブルからパスを出すのか、自分でカットインするのか、いずれにしても求められるのは柔軟な対応力だ。  それが舌を出すことで助長される!?』

私の知る限りでも、NFLカンザスシティ・チーフスの天才クォーターバック、パトリック・マホームズがパスを投げる際によく舌を出しています。

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荒川道場

私が子どものころのヒーローと言えば、大相撲の若乃花(初代)、プロレスの力道山、巨人の王・長島です。

6月1日のYahooニュースで王選手に関する記事を見つけました。  タイトルは『王貞治の一本足打法を生んだ伝説の「荒川道場」』です。  全文に番号を付けて紹介します。

『①黄金期の巨人ではコーチと選手の間に強固な“師弟関係”があり、その関係性のもとで培われた力がチームを下支えした。  その代表例が1965年からのV9時代の礎となった荒川博・一軍打撃コーチの「荒川道場」だった。

②V9時代の巨人で、小柄ながらも闘志溢れるプレーで「豆タンク」の愛称で親しまれた黒江透修氏はこう振り返る。

「僕は3年目(1966年)に遊撃手のレギュラーになれましたが、すべて荒川コーチのおかげです。  前年の時点で、マスコミの前で“来年は黒江を2番に定着させる”と言ってくれた話を耳にして、その年の12月1日から荒川道場に通うようになりました。  当時は(毎日オリオンズ時代から荒川氏の後輩だった)榎本喜八さんが一番弟子で、二番弟子がワンちゃん(王貞治)。  オフに荒川コーチの前で練習をしていると、途中で榎本さんがやってきてバットを振るのですが、これがとてつもなく速かった。  見るだけでも勉強になりました。  ワンちゃんのスイングも正座しながら見ましたが、レギュラーは違うと思いましたね。          

それでも1か月、荒川コーチのもとに通い詰めて、少しは成果があったと思ったところで正月になった。  鹿児島の実家に帰ろうとしたら、榎本さんから“九州に帰る? レギュラーを取りたくないのか”と言われて、帰省をやめて正月も練習した。  荒川さんの船に乗った以上は、最後まで乗ってやろうと必死でしたね」

③当時の川上哲治・監督から指示を受けた荒川氏が、王氏と二人三脚で「一本足打法」の習得に励み、“世界の王”を育て上げたことはあまりに有名なエピソードだ。  黒江氏が続ける。

「荒川コーチのところに行けば、必ずうまくなるという思いがあった。  榎本さんやワンちゃんが厳しい練習をするのを見て、自分はもっとやらないといけないと思いましたよ。  2人の実績があるから、荒川コーチのもとで頑張ればうまくなるという確信が持てました」

④V9が始まった1965年に入団し、後に“史上最高の五番打者”と呼ばれた末次利光(当時・民夫)氏は、ルーキーイヤーの終盤にわざわざ荒川氏の自宅の近所に引っ越し、荒川道場に“志願入門”した。  末次氏が言う。

「最初はON(王貞治、長嶋茂雄)の後ろを打ちたいなんて大それたことを考えていたわけではなく、川上さんがONの後の5番を打たせるために他球団からどんどん大物選手を補強してくるので、“まともにやっていてはレギュラーになれない”と思って、荒川さんの家の近くに住むことにしました。  とにかく、なんでも吸収したいという思いでしたね。  近所なので、とにかく朝に晩にとスイング指導を受けました。  王さんや榎本さんというお手本がいたのも大きかった」

⑤現在の球界を見渡しても、そこまで強固に結ばれたコーチと選手の師弟関係は見当たらない。  末次氏はこう言う。

「今の時代に荒川道場がないのは仕方のないことでしょう。  打撃理論について、様々な情報に触れられる時代ですからね。  昔と同じような厳しい指導をしたらパワハラと言われかねないし、なかなか指導が難しくなっていると思います。  ただ、これだけ様々な新しい打撃理論の情報を目にする時代になっても、僕は“荒川道場を卒業できた”と思ったことは一度もありません。  それくらい、荒川さんが追い求めた野球理論は奥深いものでした」

私が指導する朝練も、「荒川道場」が理想形です。

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