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名人を獲る

2012年に亡くなられた、将棋の米長邦雄先生の著書はほとんど読んでいます。  また、ブログで何回も取り上げています。
今回は『名人を獲る  評伝 米長邦雄』(田丸昇著 国書刊行会)を読みました。  田丸さんは、米長先生の弟弟子です。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.米長は名人戦で中原誠名人を4連勝で破り、7回目の挑戦で悲願の名人を獲得した。  49歳11ヶ月での達成は、最年長記録であった。  


2.米長は将棋雑誌のインタビューで、自身の勝負哲学の基について、次のように語った。

「①この世の中には勝利の女神がいて、女神に好かれた人間が勝つんです。  その女神が好きなことは《謙虚さと笑い》です。  

②最も大事なことは、自分に対する謙虚さで、それを《惜福(せきふく)》といいます。  自分一人で福を独り占めするのではなく、人にも福を分け与えるという意味です。  名人になった記念扇子には、惜福の言葉を揮毫しました。

③それから、得にならないことを喜んでする、ことも大事です。  つまり《得を捨てて、徳を取る》。  これも女神に好かれることになります。

④また、笑う門には福来るというように、笑いがないと人生の勝利者にはなれません」


3.①1993年7月20日。  東京・新宿の京王プラザホテルで、米長新名人の就位式と祝賀会が盛大に開かれた。  その案内状には、次のような文言が記されていた。

《50歳にして名人位に就けるとは!  天国の升田幸三(実力制第四代名人)先生よりお言葉あり。  「米長君、人生は笑える時にうんと笑っておけ。  すぐに泣く時が来るんだから」。  このパーティーは私の喜びと幸運とを皆様と共に分かち合おうというものです》


4.米長は謝辞で、次のように語った。

「①私が名人になれましたのは、何といっても運が良かったことに尽きると思います。  実力でしたら、もっと早く取っていましたから(拍手と笑い)。

②幸運を独り占めしてはいけません。  今夜は、お集まりいただいた皆さんに、私の運を少しづつ分けてさしあげたいです。

③将棋は、板一枚、紙一枚でもできる自然に近いゲームで、それでいて奥行きが深いです。  皆さまには、この素晴らしいゲームをぜひ広めていただきたい」』

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3つの幸福

『精神科医が見つけた 3つの幸福』(樺沢紫苑著 飛鳥新書)を読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①あなたにとって「幸せ」とは何でしょう?  どんな状態になったら「幸せ」と言えますか?  

②「えーと・・・・・・」ほとんどの人は口ごもります。  間髪入れずに答えられる人は非常に少ないはずです。

③「幸せとは何か?」がハッキリしない状態で、幸せになることができるでしょうか?  「目的地」を決めてもいないのに、「目的地」に到着することはありません。

④あるいは、どんな状態になったら「幸せ」かがわからずに、自分が「幸せ」になったときに、それに気付けるでしょうか?


2.①私が論じるのはありきたりの「幸福論」ではなく、精神医学、脳科学に基づいた「実用のための幸福」となります。

②ある日、思いました。  私たちが「幸せ」と感じるときに、脳の中ではどのような反応が起きているのだろう?  そして、具体的にどのような「脳内物質」が分泌されているのだろう?  (中略)

③私たちの日常的な幸福感を構成する主たる幸福物質として、「ドーパミン」 「セロトニン」 「オキシトシン」の3つが特に注目されます。


3.①ドーパミンが出ていると、心臓がドキドキするような高揚感をともなう幸福感が出ます(・・・お金や成功、達成の幸せ)。

②セロトニンが出ていると、さわやか、安らかな、おだやかな幸福感が出ます(・・・健康、やすらぎ、気分の幸せ)。

③オキシトシンが出ていると、人やペットなどとの「つながり」 「愛情」、あるいは赤ちゃんを抱っこしているときの、愛に包まれた幸福感が出ます(・・・愛、つながりの幸せ)。


4.①有史以来、多くの人が頭を悩ませていた「幸福とは何か」の問いに、本書ではたった10秒で答えを出してしまいましょう。

②ドーパミン、セロトニン、オキシトシンが十分に分泌された状態で、私たちは「幸福」を感じる。  つまり、脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、幸福物質を出す条件というのが「幸せになる方法」であると言えます。


5.①「お金、成功」 「健康」 「つながり」。  「3つの幸福」の全てを手に入れている人は非常に少ない。  それは、「3つの幸福」を得るためには、「優先順位」があるから。  そして、ほとんどの人がその優先順位を間違えているから、幸せになれないのです。

②ズバリ結論から言いましょう。  セロトニン的幸福→オキシトシン的幸福→ドーパミン的幸福の順番。

③この順番を間違えると、幸福になるどころか、むしろおもいっきり不幸になる可能性もありますし、私はそうなった人を山ほど見ています。  (中略)  

④自分の健康を害して、なぜそこまで頑張るのだろう?  (中略)  そこで私は気付きました。  セロトニン的幸福をないがしろにして、ドーパミン的幸福を目指すと、メンタル疾患や身体疾患に陥るのだと。  幸福になるどころか「不幸」になってしまうのだと。  (中略)  セロトニン的幸福が先で、ドーパミン的幸福は後です。 

⑤「家族のつながり」を軽視して、仕事で頑張りすぎると、ろくなことにはなりません。  どれだけ仕事で成功しても、妻に離婚され、子供からも毛嫌いされてしまっては、「幸せ」とは言えません。  (中略)  オキシトシン的幸福が先で、ドーパミン的幸福は後なのです。

⑥仕事も順調で、「家族と一緒に最高に幸せな生活」をしていたとしても、ある日突然、「がん」を宣告されたとしたらどうでしょう。  (中略)  自分の「健康」があってこそのつながりです。  (中略)  セロトニンが先で、オキシトシンが後なのです。       


6.①これで幸福な人生にアプローチすための手順が明らかになりました。  (中略)  「セロトニン→オキシトシン→ドーパミン」の順番に積み上げていかなくてはいけない、ということです。  (中略)

②セロトニン・オキシトシン的幸福の「幸福の基礎」がしっかりと固まっていれば、その上にドーパミン的幸福は、高層ビルのようにいくらでも積み上げていくことができます。

③セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福を盤石にして、ドーパミン的幸福を積み上げていく。  結果として、セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福の3つの幸福、全てを手に入れることができる。  

④これが、「幸せの三段重理論」です。』

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結果を出す

1.2019年1月9日のブログで、『最強のポジティブチーム』(ジョン・ゴードン著 日経BP社)を取り上げました。 抜粋して、再度紹介します。

『①2001年からバージニア大学の男子テニス部の監督を務めたブライアン・ボーランドによると、準々決勝や準決勝に何度も勝ち進み、決勝まで残ったことも数回あった。  それにもかかわらず、優勝はできなかった。  ところが2013年にすべて変わり、その後は5回の全国大会のうち実に4回優勝している。

②私はブライアンに何があったのかと尋ねた。  「私が変わり、私たちが変わった。   それまでの私はただ厳しく、結果ばかりを気にしていた。  選手たちもそれを感じ取っていた。  でも2013年にカルチャーを中心に据えて、それまでの結果重視の方針からカルチャーやプロセスを大切にするようになった。  つまり、それまでは優勝したいと考えている個人の集まりだったが、偉大なチームになろうと考えるようになったんだ」  (中略)

③木になる果実にばかり気を取られているチームが多すぎる。  彼らが意識しているのは、結果、数字、株価、テストの点数、利益、そして勝敗だ。  果実ばかりに目が行って、根っこの部分のカルチャー、人、人間関係、プロセスを見ていない。』


2.4月5日の日経新聞夕刊に、武野顕吾さんの『自己変革の伴走者』という連載が載っていました。  武野さんは臨床心理学を日本のスポーツ分野に応用したパイオニアだそうです。  『「結果を出す」 「普段通り」といったアプローチには懐疑的だ。』という項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①どんな分野の一流の方でも、ここぞというときにうまくいかない、もうひとつ殻を破れない、という悩みを抱えている場合があります。  アピールしなければ、結果を残さなければ。  周囲の評価に気をとられてしまうと、目の前の勝負に集中できなくなり、自分の能力が発揮できなくなってしまいます。

②結果は大事です。  ただ逆説的ですが、結果を出すためには、結果を出すという意識を一旦脇に置くことが重要です。  結果という狭い針の穴に自分という糸をうまく通そうとすると、縮こまってしまいます。  気付いたら通っていた、というのが本当に勝負に集中していた時の心理状態です。  スポーツ中継でも聞かれる「結果を出す」というフレーズが、かえって我々の心を縛ることもあるのです。

③僕は「緊張しないように」というアドバイスより、目の前の勝負に没頭できるかを重要視します。  「普段通り」 「練習通り」も同じです。    世界一を決める舞台と普段の練習とでは、緊張状態が違って当たり前です。』


3.①極真空手において「結果を出す」、つまり「全日本チャンピオンになる」 「世界チャンピオンになる」、という高い志を持つことはもちろん大切です。  また、その結果を出せるような稽古の仕方を研究することも必要です。 でも、私はまず「楽しんで稽古する」、その先に「結果が付いてくる」のだと思っています。

②1.で紹介したブログの最後に、以下のように書きました。

『私が理想とするチーム城西のカルチャーは次の通りです。

「どこよりも創意工夫する、どこよりも練習する、どこよりもそれらを楽しんでやる」

そして、本書に書いてあるように、「カルチャーに命を吹き込み、カルチャーをつくっていくのはチーム全員の使命」です。

今年もチーム城西一丸となって稽古していきましょう。』


4.孔子も『論語』の中で

「これを知る者はこれを好む者に如かず(知識がある人も、好きでやっている人にはかなわない)。   これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(好きでやっている人も、楽しんでやっている人にはかなわない)。」

と言っています。

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平時の指揮官 有事の指揮官

1.「東大安田講堂事件(1969年)」 「連合赤軍あさま山荘事件(1972年)」で警備幕僚長として危機管理にたずさわった佐々淳行さんが書かれた『平時の指揮官 有事の指揮官』(文春文庫)を読みました。  『「動揺」を表に出してはならぬ』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①1967年に始まった第二次日米安保条約改定阻止闘争の大波は、1970年の同条約改定の日まで990日間続き、警視庁機動隊員延べ1万2千人が重軽傷を負い、大動乱の時代となった。  (中略)

②なにか大きな事件、事故が起きると、部下は全員指揮官の顔を見つめる。  そんなとき、指揮官は自分の表情に恐れ、不安、躊躇、狼狽など、内心の動揺を表さないよう、自分の気持ちをコントロールしなくてはいけない。

③ある夜、警備第一課長室にあって全般指揮にあたっていたとき、アメリカ大使館に対する過激派のゲリラ攻撃が突発し、傍受していた警備無線の通話がかなり錯綜し、興奮状態に陥った。  当時の警備第一課は大課制で、大部屋には200人近い課員がひしめいていた。 

④「顔を見せたほうがいいな」  私はとっさにそう考え、個室を出て隣接の大部屋に入ってゆき、真ん中の警備実施管理官席に座った。  電話のベルは室内のいたるところで鳴り響き、皆は大音声を張りあげて怒鳴り合い、大部屋は興奮の渦だった。

⑤不思議なことに私が大部屋に入ってゆくと、私に気づいた課員の誰彼が「あっ、課長が来たぞ」と叫び、私が真ん中のデスクに、大勢の課員たちのほうを向いてドッカリと腰をおろした途端に、喧騒の渦は、荒れ狂う海に油を撒いたかのように、スウッと鎮まって静かになったのである。 

⑥みんな私を見つめている。  別に私に解決の妙案があるわけではない。  ただ指揮官である私のしたことは、平気な顔をして入っていって、ド真ん中の席に座ってみせただけのことである。

⑦騒いでも起きてしまったことはしょうがない。  どうってことない。  事態の進展を見ながら、ベストと思う手を打っていく以外どうしようもない。  そういう開き直った冷静さが私の心にあり、それが実に素直に、課員全体に伝わっただけのことであった。  (中略) 

⑧顔の表情の統制は、現場指揮官が身につけるべき大切な技能なのである。』

⑧の「顔の表情の統制」は、極真の選手が身につけるべき大切な技能でもあります。  試合の優勢・劣勢を問わず、淡々と組手を続けることが大切です。  ポーカーフェイスを保ち続ければ、上がったり下がったりしがちな感情の波を鎮めることが可能になります。


2.以下は、久しぶりに本郷孔洋先生のメルマガからの引用です。

子・・・「父ちゃん、酔っ払うってどういうことなの?」
 
父・・・「ここにグラスが二つあるだろろう。  これが四つに見え出したら、酔っ払ったってことだ。」
 
子・・・「父ちゃん、そこにグラスは一つしかないよ」                    (ジョーク集より)

城西の指導員の皆さん、アルコールの飲み過ぎには気を付けましょう 笑

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