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少年部と試合

昨日は城西支部の内部試合でした。  午前中が型で、午後がセミコンです。  午後の閉会式で話した内容について、改めて補足解説します。

『①極真会館では現在、(1)大山倍達総裁が創られた直接打撃制のフルコンタクトルール組手、(2)十数年前から実施している型、(3)昨年から実施している顔面寸止めありのセミコンタクトルール組手の3形式の試合競技を行っています。

②空手の流派によっては試合競技を行わず、実戦を想定した生涯武道としての修行を行うところもあります。

③試合を行うことには、(1)試合を目指すことがモチベーション(動機)となって稽古に打ち込むことができる、(2)試合の緊張感や恐怖感を体験することによって性格の強化につながる、(3)試合の結果によって自分の実力が良くも悪くも明確になる、(4)試合に勝つことによって達成感や感動を体験することができる、(5)試合に共に参加する選手との共感を通じて多くの仲間を作ることができる、などのメリットがあります。

④昨日の試合でも勝って喜ぶ姿や、負けて悔し涙にくれる姿を目にしました。  その喜びも、その悔しさも、明日からの稽古のモチベーションにすれば、より一層稽古が充実したものになるはずです。

⑤ただ、私が危惧するのは、ご父兄や指導者などの関係者が試合の勝ち負けにこだわるあまり、勝った選手を持ち上げすぎたり、負けた選手に対して必要以上に叱咤激励することです。

⑥私が極真会館総本部道場に入門したのは、1971年高校3年生のときでした。  その頃は少年部は極めて少なく、多くは地方の高校を卒業後上京して入門する一般部でした。  そして、その延長線上に全日本大会があります。  トップ選手でも空手歴は数年でした。

⑦現在は少年部が充実し、城西でもそうですが選手のほとんどは少年部から稽古を始めています。  ですから、鎌田翔平みたいに空手歴26年というようになるわけです。

⑧幼年部・少年部については、今の試合結果に一喜一憂することなく、将来成人したときに全日本選手となることを目ざして、長期計画で空手に取り組むというのが、私の理想です。

⑨7月7日のブログ(タイトルは「一万時間の訓練」)、7月21日のブログ(タイトルは「継続 ひたすら継続」)でも書きましたが、最低でも10年間は空手を稽古してもらいたいと思っています。  もし仮に、将来全日本選手を目指さなかったとしても、少年時代に極真空手を10年続けたとしたら、その子が成人した後の人生において計り知れない自信になるはずです。

⑩「10年間の稽古」を前提とすれば、目先の試合の勝ち負けにこだわり過ぎるのはナンセンスです。  逆にそのことによって、好きだった空手を嫌いにさせてしまうことは、我々指導者も含め、最もやってはいけないことです。  ご父兄の皆様にも、何卒ご理解をいただきたいと思います。

⑪試合に参加したからといって必ず「勝てる」わけではありませんが、参加したことによって必ず「成長」はします。

⑫指導者やご父兄には、負けたとしてもどこか成長したところを見つけて、1つでもいいから誉めてあげてもらいたいと思います。   堂々と試合していた、最後まで諦めずに頑張った、大きな気合いを出していた、などどんな小さなことでもかまいません。  そのことが、悔し涙にくれている選手に、勇気とエネルギーを与えるはずです。』

7月21日のブログでも紹介しましたが、極真空手の創始者である大山総裁も、晩年「石上10年」とよくサインされていました。  この年になって振り返ると、物事は大体10年単位のスケジュールで進んでいくな~、というのがわかります(笑)

今回は、私自身への自戒も込めて書いてみました。

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リスクを冒す

菊澤院長が9月2日のfacebookで紹介していた『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(ターリ・シャーロット著 白揚社)を読みました。  「6 ストレスは判断にどんな影響を与えるか?」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.弱小チームはなぜ安全策をとるのか?

①対戦相手に怖気づいた選手は、どのような反応を示すだろう?  (中略)

②ブライアン・バークは、2002年から2006年にかけてアメフトの試合を1000例以上も分析してきた。  そこでわかったのは勝ち目のないチームは、プレイにあまり変化をもたせないということだ。  確かに、保守的な戦略を選べば惨敗する可能性は低いかもしれないが、勝つ見込みも少なくなる。

③クリス・ブラウンの言葉を借りれば、弱いチームは「実力で勝つ見込みはほとんどない。  だから彼らに必要なのは・・・・・・相手に衝撃を与えてチャンスを広げることだ。  うまくいかないかもしれないし、こてんぱんにやられてしまうかもしれない。  しかしやってみなければ、勝つ見込みは確実に低いままだ」


2.リスクの冒し方

①1989年6月5日、パリにあるスタッド・ローラン・ギャロスのテニスコートで、17歳のアジア系アメリカ人選手がサーブを打とうとしていた。  彼の名はマイケル・チャン。  この年の全仏オープンに第15シードで出場していた。  コートの反対側に立つのはイワン・レンドル。  最も注目すべきは、レンドルが世界ランク1位だったことだ。

②チャンとレンドルがコートで顔を合わせたのは、これが初めてではなかった。  1年前にアイオワ州のデモインで、レンドルは赤子の手をひねるようにチャンを打ち負かした。

③全仏オープンのコートでレンドルは最初の2セットをいとも簡単に連取したが、チャンは続く2セットを何とか奪い返す。  しかしその踏ん張りが若者の体力を奪っていった。  3時間以上に及ぶ全力プレイが、彼を衰弱させ脱水気味にさせた。

④「第4セットの終盤になると、ここぞというところでいつも足が痙攣してしまい、思い切り走れなくなりました。  だからムーンボール(・・・スピンをかけ、スピードは速くないが、高くバウンドするボール)を多用する一方で、できるだけ少ないラリー数でポイントを取る手段に出たんです」とチャンは言う。

⑤彼の肉体は限界に達していた。  もうやめよう、彼は思った。  「サーブも打てないし、コーナーへのショットを拾うこともできない。  僕はサービスラインへ歩いていきました。  審判に、もうこれ以上できません、棄権します、と知らせるためにです。」  ところが彼は考え直した。

⑥審判のもとへたどり着く直前、気持ちに変化が起こった。  「ハッと気づいたんです。  もしも今ここでやめたら、この先コートの中で苦しい思いをするたび、もっと簡単に諦めるようになってしまうだろうって。  その瞬間から、勝ち負けは大して重要じゃなくなりました。  今日の僕の課題は、最後まで戦い抜くこと。  勝とうが負けようが、試合をまっとうしようと決めました」。  チャンは踵を返し、ゲームの勝敗を決める最終セットの戦いに舞い戻った。

⑦勝敗にかかわらず、チャンが次に下した決断は、彼を非凡な選手に変えた。  15-30とリードを許し、なおも肉体的に苦しみながら、チャンはある型破りな手段に打って出た。  (中略)  チャンが選んだのは意表をつく作戦だった。  「とっさに思いつきました。  そうだ、ここでアンダーサーブ(・・・下から打つサーブ)を打とう。  もしかしたらポイントを捻り出せるかもしれないって」。  速くて強力なサーブの代わりに、彼は子供が打つようなサーブを放った。

⑧これが功を奏した。  アンダーサーブがレンドルの不意を打ち、ポイントは30-30。  そのゲームを取り自信を取り戻したチャンは、ゲームカウント5-3とリードすると、もう一つの奇策に出る。

⑨「マッチポイントは2回ある。  挑戦してみるのもありかもしれない」。  レンドルのサーブに対し、チャンはゆっくりとサービスラインに向かって歩き、その突飛な動きでレンドルの集中力を乱そうとした。  観客席からは嘲笑や野次が聞こえる。  動揺したレンドルはダブルフォルト(・・・サーブを二回とも失敗すること)を犯し、それで試合は終了した。  

⑩その後も勝ち進んだチャンは全仏オープンを制覇した。』

マイケル・チャン選手は2003年に引退しましたが、2013年から錦織圭選手のコーチを務めています。

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啐啄同時

『稽古の思想』(西平直著 春秋社)を読みました。  著者は京都大学教育学研究科教授で、専門は教育人間学・死生学・哲学です。  「啐啄同時」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①師匠と弟子の関係を見る。  その極限的な場面を、稽古の思想は、禅に倣って「啐啄同時」と呼ぶ。

②「啐(そつ)」は卵の中の雛が内側から殻をつつく音。  「啄(たく)」はその変化に気づいた親鳥が、出てくる先を示すように、外側から殻をつつく音。  殻を破る者とそれを導く者との絶妙なタイミングである。

③禅でいえば、弟子の中に機が熟して悟りが開けゆく、その機を逃さず、師が教示を与え導くことと説明される。

④親鳥は卵を暖めながら「機」をうかがっている。  いよいよ近くなると、くちばしで外側からコツコツと叩く。  それを聴いた雛は、その音を頼りに、コツコツ返してくる。  それを繰り返す中で上手になってゆき、雛鳥は自分の力でカラを割って出てくる。  親鳥の叩くのが強すぎれば殻を破ってしまう。  逆に、弱すぎれば雛を導くことができない。

⑤放っておくのでもない。  教えすぎるのでもない。  先回りしすぎることのない、抑えの利いた心配り。  ということは、その弟子特有のペースを知っていなければ、そのタイミングがつかめない。  早すぎもせず、遅すぎもしない。  「その時」を逃さず、絶妙の機を逃さない知恵である。

⑥こうした知恵は「わざ(スキル)」ではない。  意識的・計画的に実行できるものではない。  ところが、こうした知恵は、ただ待っていても身に付かない。  やはり工夫する必要がある。  ある種の試行錯誤を重ねる中で、そのタイミングを見る「眼」を育てる。

⑦しかしその眼は、意図的に利用することはできない。  あくまで、その時々の弟子との関係性の中で、生じてくるしかない。』

41年間の指導者生活の中で、私のアドバイスが選手の状態とたまたまマッチして、その選手が急激に強くなった、という経験があります。  同じことを言うのでも、タイミングは重要ですね。

なお、『啐啄同時』については、2008年3月4日のブログでも取り上げています。

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言語と余剰

『父が娘に語る経済の話』(ヤニス・バルファキス著 ダイヤモンド社)を読みました。  著者はアテネ大学の経済学教授で、ギリシャの経済危機時(2015年)に財務大臣を務めています。

『「言語」と「余剰」の二度の大きな飛躍・・・・・・このとき、経済が生まれた』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①8万2000年ほど前、人類がはじめて大きく飛躍した。  人間はただのうなり声ではなく、言葉を発するようになった。

②それから7万年後(1万2000年前)、人類は2度目の大きな飛躍を遂げた。  今度は土地を耕すことに成功した。  ①うなり声のかわりに言葉を使い、②木の実を口に入れるかわりに作物を収穫できるようになった。

③そこではじめて、いまのわれわれが「経済」と呼んでいるものが生まれた。

④人類が農耕を「発明」したことは、本当に歴史的な事件だった。  1万2000年経ったいま、振り返ってみるとその大切さがよくわかる。  それは、人類が自然の恵みだけに頼らずに生きていけるようになった瞬間だった。

⑤大昔の人たちは大変な苦労をして、作物を育てる方法を見つけた。  だからといって、それが当時の人にとって幸せな瞬間だったと言えるだろうか?  とんでもない!  われわれの祖先が土地を耕すようになったのは、みんなが飢えて死にそうになっていたからだ。

⑥周囲の獲物を狩り尽くして、人の数も爆発的に増えてくると、食べ物が足りなくなった。  生き延びるためには、土地を耕すしかなかった。  (中略)

⑦たとえば、自然の恵みが豊かなオーストラリアでは、畑を耕したりしなかった。  土地を耕さなければ生きていけない場所でだけ、農耕が発達した。  (中略)

⑧農作物の生産によって、はじめて本物の経済の基本になる要素が生まれた。  それが「余剰」だ。  (中略)

⑨ここで、注目してほしいことがふたつある。

⑩まず、狩りや漁や、自然の木の実や野菜の収穫は余剰を生み出さないということ。  (中略)  とうもろこしや米や麦のような保存できる穀物と違って、うさぎや魚やバナナはすぐに腐ってしまうからだ。

⑪次に、農作物の余剰が、人類を永遠に変えるような、偉大な制度を生み出したということ。  それが、文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教といったものだ。

⑫テクノロジーも、最初の生物化学兵器を使った戦争もまた、もとをたどると余剰から生まれている。』

9月に入ったとはいえ、30度を超える日が続くようです。  ご自愛ください。

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苦しみを楽しむ覚悟で

(1)NHKBS1『奇跡のレッスン・・・世界の最強コーチと子どもたち』の再放送を観ました。  

今回の「最強コーチ」は、イタリアのレナート・カノーバさん(74歳)で、ケニアを拠点に陸上・長距離選手を指導しているそうです。  教え子たちがオリンピック等で48個のメダルを獲得し、「マラソン界の魔術師」と呼ばれる伝説的な指導者です。  

番組は、レナートさんが東京の公立中学の駅伝チームを1週間指導する内容で、前編と後編が放映されました。  番組内でのレナートさんの語録を抜粋し、番号を付けて紹介します。  

『1.前編・・・タイトル「走れ!苦しみの向こうへ」

①(トレーニングで)苦しむ準備ができていれば、苦しみに耐えられる。

②自分が向き合うことになる苦しみを楽しむ覚悟を決めるんだ。

③苦しみに向き合えば、自分の力を知ることができる。  それに打ち勝つことで強くなることができる。  だから、自分から苦しみを求めよう。  結果はその後についてくる。


2.後編・・・タイトル「苦しみを楽しむ覚悟で走れ」

①トレーニングは苦しいが、苦しみが大きいほど大きな達成感が得られる。

②君が走るのが好きなら、レースを試験だと思わないで欲しい。  自分を表現できる喜びと考えて。

③速くなりたければ、速く走らなければならない。  速いスピードの練習はとてもつらいものだ。  でも、その苦しさに慣れることができれば、苦しみと共に前に進めるようになる。


3.(200m走+ジョギング)×10本のインターバルトレーニングについてのコメント

このトレーニングの狙いは体内に生理的な変化を引き起こし、心肺機能を高めることにある。  心臓を大きくし、送り出す血液の量を増やす。  これは武器になる。  全身にたくさんの酸素やエネルギーを送れるようになり、持久力が上がる。』


(2)駅伝の第一走者として順位を上げられず、レース後に落ち込んでいるチームキャプテンに、レナートさんがかけた言葉にもしびれました。

『君がうまく走れなかった責任は私にある。  君を一区に選んだのは私だ。  君が一番強いランナーだから任せた。  その考えは今も変わらないよ。』

もしかすると、「しびれました」って死語かも(笑)



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