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取り越し苦労

対談集『身体の言い分』(内田樹 池上六朗著 毎日文庫)を読みました。  「取り越し苦労は傲慢である」の項の内田さんの発言から、抜粋し、番号を付けて紹介します。  内田さんは哲学者・武道家(合気道)です。

『①「取り越し苦労をしてはいけない」というのは、言葉では簡単ですけれど、実はすごく難しいし、重要なことだと思うんです。

②ぼくの師匠の師匠に当たる中村天風先生の教えに「七戒」というのがあって、それは「怒るな、恐れるな、悲しむな、憎むな、妬むな、悪口を言うな(言われても言い返すな)、取り越し苦労をするな」というんです。  (中略)

③でも、ある程度年をとってくるとだんだんわかってくるわけですよ。  取り越し苦労って、かなり危険なものだということが。 これは、怒りや嫉妬と同じくらい人間の心身を蝕む有害なものなんです。

④取り越し苦労って、要するに、時間を先取りすることだから。  時間を先取りして、まあこんな程度のことが起こるのであろう、とある程度の未来予測をして、さらにその未来予測の中のネガティブなファクターだけを拾い出してゆくことが取り越し苦労ですからね。

⑤未来というのは何が起こるかわからないから未来なのに、それをわかったつもりになって、その上、起こるか起こらないかわからないことのうちのマイナス要素だけを確実に起こることだと思い込んで苦しむわけですから。

⑥たしかにそういうふうに見る人にはそういうふうに見えるかもしれないけれど、違う見方をする人には違うふうに見える。

⑦こっちに、来月のうちの会社の売り上げはどうなるんだろうと取り越し苦労をしている人がいて、こっちに来月彗星が衝突して地球がなくなったらどうしようと取り越し苦労をしている人がいる。  彗星の衝突に怯えている人から見たら、来月の売り上げなんかどうだっていいじゃないかということになりますよね。  (中略)

⑧だから、取り越し苦労をする人って、「取り越し苦労自慢」みたいなのをすることになる。  「彗星」の人のほうが「売り上げ」の人より威張れるわけですよ。  オレの心配ごとのほうがずっとすごいぞ、と。

⑨取り越し苦労をしている人って、傲慢な人間だと思うんです。  何が起こるか自分はわかっていると思っているという点でまず傲慢だし、お気軽にすごしているほかの人間に比べて、自分のほうがずっと濃密で重厚な人生を送っていると思っている点でも。』

自戒のために取り上げました(笑)

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第36回ウェイト制大会・2019国際親善大会

1.4月20・21日は「武蔵野の森 総合スポーツプラザ」で第36回ウェイト制大会が行われました。  出場選手について、結果と感想を書いてみます。

①奥寺勇輝(軽量級)・・・第4位。  昨年からウェイトトレーニングにも取り組み、体重・体格ともにアップしてきました。  それなりにパワーも付いてきましたが、全般的に軽さが感じられます。  接近戦での突きの攻防が出来るようになると、自然と腰も落ち、重さが出てくるのかも知れません。  素材的には素晴らしいものを持っていますが、それを開花させられるかどうかは、奥寺自身の今後の精進にかかっています。

②平沢拓己(軽量級)・・・2回戦で山西練選手に判定負け。  今春、大学に進学し、城西の稽古に参加しています。  素晴らしい空手センスを持っています。 特に1回戦で見せたクイックの突きはタイミングが秀逸でした。  道場稽古およびウェイトトレーニングによって練習量を積めば、大きな大会で活躍することも可能です。

③加賀健弘(中量級)・・・優勝。  実力はありながら、中々優勝に手が届きませんでしたが、やっと結果を出すことができました。  突き・蹴りの威力が増したこと、捌き・足掛けが上手くなったこと、などが目につきました。  今年の世界大会も含め、無差別の大会での優勝が、加賀の次の目標になると思います。

④吉田篤司(中量級)・・・3回戦でブラデスラブ・カミドゥリン選手に判定負け。  昨年と比較すると、技・パワーともに格段の進歩が見られました。  今後は、吉田自身の特性・個性を生かした組手を研究することが大事です。  真面目に取り組んでいるようなので、試合経験を積めば、上位入賞も見えてきます。  

⑤楠幹太(中量級)・・・3回戦で海老原聖人選手に判定負け。  経験は浅いのですが、空手センスは光るものを持っています。  来年のウェイト制や全日本大会に向けて、技・パワー・スタミナともに向上していけば、結果は付いてくるはずです。  本人の自覚に期待します。

⑥亘和孝(中量級)・・・第3位。  準決勝で清水祐貴選手に延長戦判定負け。  昨年のウェイト制大会後のブログで「普段の稽古では足払いも器用にこなしていましたが、試合では出せませんでした。」と書きましたが、今回はその成果が出ました。  年齢的には、加賀とともに次代のチーム城西のリーダーになるのですから、今よりもさらに高い意識で、稽古・日常生活に取り組むことが必要でしょう。

⑦佐藤拓海(中量級)・・・3回戦で清水祐貴選手に判定負け。  チーム城西の若手の中では、一番真面目に稽古に取り組んでいるという印象です。  試合経験を積む中で、体が柔らかいという特性を生かした「自分に合った組手」を研究していけば、面白い選手になると思います。  

⑧中川拓人(中量級)・・・1回戦で貴堂実選手に判定負け。  昨年のウェイト制大会後のブログで「突きと下段廻し蹴りだけでなく組手の幅をもう少し広げることが望まれます。」と書きましたが、あまり向上が見られませんでした。  突きと下段は良いものを持っています。  他の技で攻撃を散らせれば、その突きと下段がもっと活きてきます。  毎日課題を持って稽古量を積む中で、徐々に組手の幅を広げていく必要があります。    

⑨橋本拓人(軽重量級)・・・1回戦でイバン・アクセネシコ選手に判定負け。  稽古に真面目に取り組んでいます。  腰が強く、上段も蹴れるという特性を持っています。  今後は捌き・足掛けなどの技術習得に取り組み、中川同様、組手の幅を広げていく必要があります。  

⑩竹岡拓哉(軽重量級)・・・第4位。  準々決勝で相手選手の顔面殴打でドクターストップとなりました。  勝ち上がれば、準決勝の相手は昨年勝っているアンドレイ・チルコフ選手だっただけに残念でした。  それまでの試合を見ると、突き・蹴りの威力が昨年よりアップしているように感じました。  また、1回戦で見せた突きの連打は、体全体を上手に使っていて、見栄えがしました。

⑪吉村基(重量級)・・・1回戦で、アンソニー・トッカ―選手に、判定負け。  昨年から取り組み始めたウェイトトレーニングによって突き・蹴りの威力がアップしてきました。  また、道場稽古を見ると、足掛けも上手にこなします。  実力は確実に上がってきているので、今後は、副審に旗を挙げてもらえるような戦い方を、試合経験を積む中で身に付けていってもらいたいと思います。    


2.同時開催の2019国際親善大会の入賞者については各セコンドがコメントすると思います。


3.1月6日のブログで書きましたが、私が理想とする城西のチームカルチャーは

「①どこよりも創意工夫する

②どこよりも練習する

③どこよりも楽しんでやる」

です。

また、次の試合に向けて、頑張りましょう。

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神経活動の適応

『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』(庵野拓将著 KADOKAWA)を読みました。  

1.「右手を鍛えれば左手も〝教育〟される」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①筋肉の収縮は、脳の神経から伝わる指令によって起こります。  現代の脳科学では神経活動を高め、運動に適応させていくことが筋力アップに繋がると示唆しています。

②例えば、神経活動にアプローチすることで、筋肥大に関係なく簡単に筋力を強くする方法があります。  「右手」に重めのダンベルを持ち、アームカールを疲労困憊になるまで行ってみましょう。  実は、これだけで「左手」の筋力は10%アップします。  

③何とも奇妙な話ですが、ここにも科学的なエビデンス(根拠)があるのです。  (中略)  2018年にはイタリア・サッサリ大学のマンカらが、31の研究成果(785名)をもとに解析したメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること)により、「片側のトレーニングは、反対側の筋力を11.9%(腕9.4%、脚16.4%)増強させる」と報告しています。』


2.1.に続く「イメージトレーニングだけで筋力が上がる」の項からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①神経活動にアプローチすることで簡単に筋力を強くする方法は、もう1つあります。  それは「自分がトレーニングしている姿をイメージする」こと。  実は、これだけで筋力は10%ほど増強されます。  これは、最新の脳科学において筋肉と神経活動の関係を検証したエビデンスが示されています。

②2017年、フランス・ブルゴーニュ大学のGrospretreらは、同様のイメージトレーニングを7日間連続で行った結果、被験者の下腿三頭筋の筋力が9.46%増強したと報告しています。  また、終了後、被験者の脊髄の神経活動が増加することを神経生理学的評価によって明らかにしています。

③同じく2017年、同大学のルフィーノらは、イメージトレーニングによる筋力増強のメカニズムを検証した過去の研究報告をレビューし、脊髄とともに大脳皮質の運動野の神経活動が増加することを示唆しています。

④このように、筋肉の大きさが変わらなくても、神経活動を変化させることにより、筋力を増強することができるのです。  しかし、紹介した2つの方法(片側のトレーニングとイメージトレーニング)による筋力増強は、一時的な神経活動の変化がもたらすものにすぎません。  翌日には元の筋力に戻ってしまいます。  これでは真の筋力増強には繋がりません。

⑤そこで重要になるのが「神経活動の適応」です。  (中略)  新しい運動に取り組むと、最初はうまくできなかったものが、繰り返し練習するうちに次第に上達していきます。  つまり「体が覚える」ということです。  これは、新たに得た様々な情報を伝達するうちにシナプス(神経細胞間の接合部)が組み替わり、神経のネットワークが変化することに起因しています。

⑥このようなネットワークの再構築を「神経活動の適応」と言い、脳科学では運動が上達するメカニズムとして活用されています。  そして、筋力増強の効果を長期的に得るためには、筋肥大とともに、筋力を強く発揮できるように神経活動を変化させ、適応させることがポイントになるのです。』

ちょっと専門的になりますが、私が極真空手と併せて修行してきた意拳の稽古方法の1つである「試力」の効果も、「神経活動の適応」によるものかも知れません。

早いもので、来週末は国際親善大会と全日本ウェイト制大会ですね。  

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軍事の日本史

1.『軍事の日本史』(本郷和人著 朝日新書)を読みました。  第1章「戦いとは何か」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①この章の締めくくりとして、ぜひ僕がご紹介したいデータがあります。  

②『〈玉砕〉の軍隊、〈生還〉の軍隊・・・日米兵士が見た太平洋戦争』(河野仁著 講談社選書メチエ 2001年)という本です。  これによると「玉砕する軍隊」と「生還しない軍隊」があるそうです。  日本の軍隊は玉砕する軍隊で、アメリカ軍は玉砕しないというのがその結論です。

③第二次世界大戦時のアメリカ軍兵士の戦闘行動に関する興味深いデータがあります。  それによると、敵と戦っているまさにそのとき、「撃て!」という上官の命令で鉄砲を撃とうとしても実際打てた人は四人に一人しかいなかったというのです。  自分の小銃を発砲した割合(発砲率)はせいぜい「20から25%」だった。

④この本の中で著者は、不用意に発砲することで逆に自分の居場所を敵に知られるリスクについて言及しています。  そうしたことは確かにあったことでしょう。  あるいは、キリスト教を信仰している人が多かったなど別の理由があるのかもしれない。  本当のところは分かりません。  ただ、人の命を奪うのは、アメリカ人にとってそれは大変なことだったというのです。

⑤別のアメリカの学術書にも、南北戦争のとき50%もの兵隊は敵の命すら奪うことはできずに、「撃て!」と命令されてもわざと的を外したという驚くべきリポートがなされているのを読んだことがあります。  それが人間の本質であるならば、当然、人間性を重視し、人間性に立脚した軍事というものが考えられてよいはずです。  だから国際法では捕虜の保護規定を設けているのです。』 


2.上の②で紹介されている『〈玉砕〉の軍隊、〈生還〉の軍隊・・・日米兵士が見た太平洋戦争』の講談社学術文庫版(2013年)も読みました。  序章「戦争と死」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「戦闘意欲」の問題を最初に取り上げたのは、米陸軍の戦史研究者S・L・A・マーシャル大佐である。  

②かれは古典的業績となった『戦火の兵士』の中で、第二次世界大戦における欧州戦線および太平洋戦線での米軍兵士の戦闘行動を実際に前線に行って観察したり、作戦終了後に戦闘に参加した兵士を面接調査した結果、「米陸軍部隊兵士の交戦中の発砲率は最大限25%である」との観察結果を公表し、当時の米軍内部で大きな波紋を巻き起こした。

③これをうけて、朝鮮戦争までに米陸軍は兵士の訓練方法を改善し、1950年の朝鮮戦争時には歩兵部隊の夜間防御と昼間攻撃のいずれにおいても発砲率は55%を超えた。

④このマーシャルの研究によって明らかとなったのは「人間としての兵士」の問題である。  (中略)

⑤歩兵中隊長が「撃て」の号令をかければ「自動的に」その命令に服従して兵士たちは小銃を撃つ、というのは「神話」に過ぎない、ということを改めてわれわれに教えてくれたのである。』


3.31年目に入った「平成」が終わり、5月から「令和」が始まります。  テレビや新聞では様々な分野の「平成の歴史」が取り上げられています。

色々な面からの評価もあるでしょうが、少なくとも、日本が戦争することのない30年間を過ごせたことは幸せでした。
 

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