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マラプロピズム

マラプロピズム(malapropism)という言葉があります。  英和辞典には「言葉のこっけいな誤用」と出ています。  日経新聞夕刊の連載「あすへの話題」で、翻訳家の松岡和子さんが1月29日と2月5日の2週にわたり、マラプロピズムについて書かれていました。
それを読んで以来、会話の中の言い間違いに注意が向くようになりました。  先日も川島智太郎との会話の中で、「(銀座の)コリドール街」とか「(南米の)イグナスの滝」と言うので、「それはコリドー街だろ」や「イグアスだから」と、ついツッコミを入れてしまいました(笑)
松岡さんの連載から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①うららかな小春日和。  記憶に残る窓外の空は、一片の雲もない蒼穹(そうきゅう)だった。  乗っていたのは埼京線。  広い河川敷を見下ろすように立つ新築マンションが目に入った。  上階の壁面にかかる白地の横断幕には大きな文字で黒々と「場当たり生活!」。  「え!? なに、意表を突くにも程がある」とびっくり。

②いま一度目を凝らすと「陽当たり生活!」。  「そりゃそうよね」とひとりで苦笑した。  自分の潜在意識のいったい何が「陽当たり」を「場当たり」と読ませたのか。  (中略)

③シェイクスピアには『ロミオとジュリエット』の乳母をはじめ、これの名人が大勢出てくる。  面白いのは、彼らも自分と同列の相手としゃべっているときは言い間違いをしないこと。  自分より身分や教養が上の者と話をする段になると、緊張したり、いいところを見せようと身の丈に合わない言葉遣いをする。  これがマラプロピズムを生む心理的背景だと思われる。  (中略)

④マラプロピズム(おかしな言い間違い)成立には条件がある。  まず、それを聞いた観客に、間違いのない「正しい」言い廻(まわ)しを即座に思い浮かばせなくてはならない。  次に、言い間違いが「正しい」言葉の反対語になったり、文脈上見当はずれになったりする「おかしさ」が生まれねばならない。

⑤ある人のふとしたひと言がそのためのノウハウを教えてくれた。  彼は自著について熱く語っていた。  前後の流れは忘れたが、思いの熱さに口が追いつかなかったのか、「へびこつらう」と言ったのだ。  むろん「媚(こ)びへつらう」の言い間違い。  それを聞いた途端、蛇の骨がくにゃくにゃと何かにすり寄っている様が見えた。  「これだっ!」、正しい言い回し1文字を入れ替えればいいのだ。

⑥以来、私は、日本語マラプロピズムをメモるようになった。  「悲喜もごもご」とか「ばっくざらん」とか。

⑦慶應大学の井出新教授のゼミに呼ばれてシェイクスピア劇の翻訳について話したとき、このノウハウにも触れた。  質疑の時間に1人の学生さんが、「僕にもそういうのあるんですけど、ネタ帳に加えてください」 「あら、教えて」 「てもちぶたさん」。  素晴らしい!  手持ち無沙汰でぼんやりしていて、ふと手を見ると小さなブタさんを持っていた! という「絵」が浮かぶではないか。』

以前、阿曽師範代が地主さんと打ち合わせをしているとき、同席したある社長が「くさくのにく」と言ったそうです。  「苦肉の策」の言い間違いです。  

「苦作の肉」って(笑)

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