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2017年12月 | ARCHIVE-SELECT | 2018年02月

運・鈍・根

昨年7月に亡くなられた渡部昇一先生の著書はこのブログで何冊も取り上げています。  今回は『思考の方法』(海竜社)から、「不器用さは、成功と失敗の分かれ道ではない」の項を、番号を付けて紹介します。

『①会社でも学校でも、何かと器用に立ち回る人というのはいる。  社内で大規模な異動があると小耳に挟めば、首尾よく行きたい部署の上司に取り入る、マスコミ関係に就職したければ、マスコミ業界に通じている教授のゼミに入ってコネクションづくりに励む、などである。

②こうやって書いてみると、まるで彼らがずる賢いようだが、私はそういうやり方を非難しているわけではない。  自分の中で目指すものがあり、それに向かって努力しているのだから、それはそれで、成功するための一つの立派な方法だと思う。

③ただ、ふとわが身を振り返ってみると、私はそういう器用さはまったく持ち合わせていなかったとつくづく思う。  そして、器用か不器用かは、成功するかどうかにそれほど深く関係していいないと感じるのだ。

④よく、成功の秘訣は「運・鈍・根」にあるといわれる。  「運」は運がよいこと、「鈍」は軽々しく動かないこと、「根」は根気よくやること、だが、私の場合は「鈍」が強かったのではないかと思う。  と言うより、動こうにも動けなかったと言ったほうが正しい。

⑤山形は鶴岡の田舎からポンと東京へ出てきたわけだから、世間的なことはまるで知らなかった。  アメリカ留学ができなかったときも悔しいのは悔しいのだが、器用に立ち回ることができないから、「まあ、このまま頑張って勉強を続けるかな」ということぐらいしか考えつかなかった。

⑥おそらく器用な人ならば、ここでいろいろと動き回るのだろう。  教授にかけ合ってほかに留学の道を探るかもしれないし、研究者という道にさっさと見切りをつけ、大企業就職を目指すようになるかもしれない。  そういうことをした人を私はたくさん見てきたが、うまくいった例は稀のようである。

⑦しかし、結果として私は、「鈍」と構えていたことにより、アメリカ留学に勝る(ドイツとイギリスへの)留学の機会を得ることができた。  器用に動き回っていたらどうなっていたかなど、今さらわかるべくもないが、少なくとも、器用に立ち回らなくてもチャンスを掴むことができたことは事実だ。

⑧このように、頭がよく、悧巧に動き回れる人だけが成功するわけではないとは、私の経験からくる実感なのである。』

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芸を盗むセンス

1.『バカ論』(ビートたけし著 新潮新書)を読みました。  「芸を盗むセンス」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ただ一つだけ、芸を盗むのは大事なことだと言える。  それも「こいつ上手いな」という奴から盗むこと。

②落語なんか特にそうで、他人の噺や所作を芸の栄養として取り入れて、それで得た力を使って、違う新しいものを生み出す・・・この一連のサイクルは、マニュアル化されたものではないから、教えられるものじゃないけど。

③他の芸人の芸を見て、「俺もあの技をやってみよう」と盗む。  それを「盗みました」とは死んでも言わないけど、盗まれた方からすると、「あれ、あいつおいらのやり方を盗んだな」ってすぐわかる。  運動選手がドーピングで捕まるようなもので、ひとつ間違えると「盗作」とか言われちゃうから、その案配は難しい。

③でも、芸に特許があるわけじゃない。周りに「あいつは勉強したんだな」と思わせれば勝ち。  盗んでただ同じような芸をするのではなく、それを自分のものにして、いかにオリジナルを超えていくか。  超えちゃったら、その時点でもうそいつの芸だから。

④だから何を盗むか、というのは、芸人として問われるべき大事なセンス。  あまり大真面目に語りたくないけど、これだけは確かに言える。  自分が盗むべきものは何か、何を上手いこと取り入れるか・・・。  とりあえずはそれだけを考えておけばいい。  

⑤芸を盗むセンスがなければ、もうどうしようもない。  すぐに辞めて、中野で飲んでいたほうがいい。  そのセンスがない奴は、変な顔をするだけとか、脱いだり奇抜な恰好したりだとか、ただの見世物、フリークみたいなお笑いしかできない。  結局それは、「笑わせている」んじゃなくて、「笑われている」だけ。

⑥それでたまたま結果が出たとしても、たいていは長続きしない。  「一発屋芸人」とか言われるのは、大体そういう奴ら。  それはそれで凄いことだけど。』

空手でも、上手な人の技を盗んで、真似をすることが、上達への一番の近道です。  「学ぶ」の語源は「真似ぶ」ですから。


2.今日はNFLのカンファレンス・チャンピオンシップが行なわれました。  AFCではニューイングランド・ペイトリオッツが、NFCではフィラデルフィア・イーグルスが、それぞれチャンピオンになりました。  第52回スーパーボウルは2月5日(日本時間)です。  私が応援するペイトリオッツの2連覇(6回目の優勝)がかかっています。

午後から、東京も4年ぶりの大雪になりそうです。  皆さん、足元には注意して、くれぐれもケガのないようにして下さい。

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体が脳をコントロールする状態までやる

明けましておめでとうございます。  今年もよろしくお願いします。

新年早々、帯状疱疹にかかりました。  過去にわき腹に出たことがあるのですが、今回は右腰です。  発疹がお尻に出て座ると痛いのに加え、排尿障害が起きました。  ですから、ソファーに横になってテレビを観て過ごしています。

1月3日はアメリカンフットボールの日本選手権ライスボウルを観ました。  2連覇を狙う社会人王者の富士通が、27年ぶりに学生王者となってライスボウルに出場する日大を37対9で下しました。

日大と言えば、かつて篠竹幹夫という名監督が44年間の在任期間中17度の学生王座に導く、名チームでした。  ライスボウルでも、前回出場した1991年に3連覇を達成しています。  日大チーム(愛称はフェニックス)に関する新聞記事から抜粋して紹介します。

(1)ライスボウル前の新聞記事より
①2017年12月29日・朝日新聞・・・ライスボウル3連覇達成時の主将・佐々木康元さん(48)の談話

『僕らのときは篠竹幹夫監督がいて、現在の内田正人監督がコーチ。  練習は午後3時から10時、11時まで。  合宿所でも監督が一緒。  笑うのも忘れるほどの緊張の日々でした。  

主将になってからは3連覇のプレッシャーが重かった。  秋のリーグ戦に入っても苦しい試合が続き、食事ものどを通らない。  90キロあった体重は77キロに減った。  実戦形式の練習を繰り返して、体が脳をコントロールする状態までやりました。

ライスボウルに勝つと、篠竹監督が「男になったな」と言ってくれた。  もう、ボロ泣きです。』

②2018年1月3日・朝日新聞

『チームとして昨年1月から、練習前に計2500ヤードものダッシュを敢行。  試合形式の練習は2万5千プレーに。

常勝時代の猛練習が復活し、約20人の退部者も出たが、熱き山崎主将のもと、昨季のリーグ4位からライスボウル出場まではい上がった。』

③2018年1月3日・日経新聞

『大一番にも気負いはない。  「勝っているのは練習量くらい」という内田監督は、ハードな練習の上に築いてきた今季のチーム力をそのままぶつけるつもりだ。』


(2)ライスボウル後の新聞記事より

2018年1月4日・朝日新聞

『昨年1月9日、内田監督が復帰して最初の全体練習は7時間に及んだ。  1時間ぶっ通しのダッシュに、この時期では異例の実戦形式の練習。  常勝時代の猛練習が復活した。  汗にまみれ、はいつくばって、日大フェニックスは復活した。

この日、攻守の先発22人中9人が1、2年生。  1年生のWR林裕嗣は「あと3回ここへ来て、勝ち取ってみせます」。  赤い目で宣言した。』

創意工夫の重要性を強調するため、以前から選手指導において、「(体だけでなく)脳みそにも汗をかけ」と言ってきました。  最近は改定ルールにおける技術習得のため、反復練習の必要性を感じています。  つまり、道場稽古で分かって出来たとしても、全日本大会等の本番において無意識に出せないものは、まだ「技(わざ)」とは言えないからです。

(1)①の日大・佐々木元主将の「実戦形式の練習を繰り返して、体が脳をコントロールする状態までやりました。」という言葉に感銘を受けました。  


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