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達人

リオ五輪が終わりました。  寝不足になりがちでしたが、終わってみると若干「五輪ロス」気味です。  

ところで、馬術競技の障害飛越個人で、58歳のニック・スケルトン選手(英国)が馬術史上最年長の金メダルに輝きました。  1988年のソウル五輪に初出場し、7度目の五輪で初めて個人の金メダルを獲得しました(団体では12年ロンドン五輪で金)。

極真でも、今年の第33回ウェイト制大会・軽量級で40歳の福井裕樹選手が準優勝しましたが、一般的には20代の入賞者が多いようです。  武道を志すものとして、年を取れば取るほど強くなることが理想ですが、現実的にはそう簡単ではありません。

しかし、武道の歴史を見ると、晩年において驚異的な強さを見せた、いわゆる「達人」と呼ばれる人が何人かいました。  いくつかの例を紹介します。

①白井亨・・・勝海舟(1823年生まれ)は、40歳年長の白井亨(1783年生まれ)に手ほどきを受けたことがあったそうです。  勝はその白井亨について、こんなふうに言っています。

「あの人の剣法は、大袈裟にいうなら、一種の神通力とでもいうのか、その白刃をひっさげて武の場に立つと、凛然、神然、犯すことの到底できぬ神気というか、そういうものが刀尖よりほとばしり、本当に不可思議の感じに打たれた。  私どもは、とても、その真正面には立てないほどであった」(『精選日本剣客事典』杉田幸三著 光文社文庫)

②寺田五右衛門・・・その白井亨も、29歳の時、38歳年長の寺田五右衛門(1745年生まれ)と立ち会いました。

「木刀を手にして相対した白井は、まずまっすぐに進み、寺田の身体、肺、肝を狙った。  しかし、寺田はゆったりとしてこれに対応ぜず、木刀を頭上に構えて白井の全身をその気で包んだ。  すると、白井の全身は縮み上がり、手足の場所も分からぬようになり、全身に汗を流し、夢のなかにいるような感覚になっていった。」(『神技の系譜』甲野善紀著 日貿出版社)

③王郷斎・・・柔道5段の澤井健一先生(1931年生まれ・太気拳創始者)が32歳の時、27歳年長の王郷斎先生(1886年生まれ・意拳創始者)の両手首をつかんだら、瞬間的に4~5メートル飛ばされ、壁にぶつけられたそうです。  

縁あって澤井先生に当時の城西支部・代田橋道場で何度か稽古を付けていただきました。  稽古後、私の自宅で食事の際、たびたび王郷斎先生の話を、内弟子だった大西靖人とともに聞かせていただいたことを思い出します。

一度、沢井先生が私の娘に大きな動物のぬいぐるみを持ってこられたことがありました。  まだ小さかった娘が、迫力のある澤井先生を見て、突然泣き出してしまったのにはまいりました(笑)

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2016極真祭

8月20・21日は京都で2016極真祭でした。  入賞した選手についてのコメントを書いてみます。

(1)20日・型

①福永悠萊(型10歳男女混合・第3位)・・・キレがある中にも、足腰が安定していました。  最近、昨年から友好団体となった全日本空手道連盟の型を目にすることが多いのですが、極真の選手に比べ、型の中での足腰の安定感が優れているように思います。  この一因として、極真の型は上段への蹴りが多いことはあると思います。  しかし、「実戦を前提とした」型という観点からは、足腰の安定というのは最重要だと思います。  足腰がふらついたままでは実戦で戦うことは不可能だからです。その点で悠萊の型には安定感を感じました。  

今回は型試合に13人の選手が出場しましたが、悠萊も含めて5人の選手が(6位までの選手が試技を行なう)決勝に進出しました。  支部全体で型の実力がついてきたように思います。

(2)20日・組手

①岡部慎太郎(13・14歳男子+55㎏級・第3位)・・・突き・蹴り共にバランスが取れています。  また、1回戦・2回戦では延長戦までのギリギリのしのぎ合いでも強い所を見せました。  大きな大会では、選手間の実力にさほど差はありません。  だとすると、我慢すべき局面で、しのぎ合いに強い選手が勝ち上がり、途中であきらめてしまう選手は中々勝つことができないことになります。 優勝者・準優勝者ともに1学年上の選手だったので、来年は優勝する可能性が高いと思います。  今後の精進に期待します。

②徳久無限(35~39歳男子-75㎏級・第3位)・・・受け返しや突きの技術が目立ちました。  下高井戸道場の土曜日の一般部の指導をしている徳久のブログを読んでいますが、技術的な考察にいつも感心しています。  それが今回の試合にも、それがよく表れていました。  簡単に言えば、「組手というものがよく分かっている」戦いぶりでした。  以前、夜の選手稽古で一緒に走ったことがありますが、スタミナもすごかったことを思い出します。  今後は、城西壮年部の技術向上に尽力して欲しいです。

(3)21日・組手

①諸岡幸乃(6歳女子・準優勝)・・・今回は7面の試合コートで、試合コートが本部席から遠かったので、決勝戦の細かい内容が分かりませんでしたが、準決勝はいつも通り、上の蹴りを交えた力強い戦いだったように見えました。  皆が優勝するために試合に臨みますが、常に勝てるとは限りません。  しかし、負けた試合からも多くのことが学べます。  次回の優勝に向けて、今回の映像などを見て反省・研究し、稽古に励んでもらいたいと思います。

②小野そら(8歳女子・優勝)・・・突きを中心とした安定した戦いでした。 決勝戦の相手は側転のようなトリッキーな蹴りを多発する選手でしたが、落ち着いて自分のペースで戦っていました。  今まで見たことがない戦い方をする選手と初めて当たると、自分のペースを乱されることもありますが、よく相手を見て、焦ることなく戦っていました。  次の機会にも優勝できるよう、今後も練習を積んでもらいたいと思います。

③中水流梨央(9歳女子・第3位)・・・ここのところ、負け知らずでしたが、準決勝では梨央の上段への蹴りがうまく封じられてしまいました。  チャンピオンというのは周りの選手から常に研究されるものです。  上段への蹴りを封じるために接近してくる相手に対して今後はどう戦うのか、いつも考え続け、研究することが大切です。  相手がどんな対策を練ってこようが、それに打ち勝っていけるのが真のチャンピオンです。  ヘッドギアが相手に接触して戦っているとして、「頭を着けての攻撃」で注意2を取られましたが、その修正も必要です。

④福永悠萊(10歳女子・第3位)・・・4月の国際親善大会に続く入賞です。  大分安定した力を付けてきました。  ただ、中水流梨央と同様に、ヘッドギアが相手に接触して戦っているとして、「頭を着けての攻撃」で注意2を取られました。  相手に押し込まれまいとすると、どうしても頭を前傾しがちですが、修正しなければなりません。  ルールが改定されて、注意3で減点1になり、技有りと同等ですから、その時点でほとんど負けが決まってしまいます。また、今回、型・組手ともに入賞しました。  城西にとっては初めてのことです。  これからも城西少年部の手本となって欲しいと思います。

選手・セコンド・付き添い・ご家族の皆さん、お疲れ様でした。  今後は城西カップ等もありますが、次の大きな大会は11月の第48回全日本大会です。  チーム城西の先生たちが、道場生の皆さんに「試合とはこう戦うんだ」というところを見せてくれると思います。

ショーヘイ、タケオカ、カガ、コイノスケ、ファブ、クワセ、たのむよ~(笑)

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いまそこにいる君は

今年も、菊澤院長を通じて北方謙三先生から、新刊を私宛のサイン入りで頂きました。  書名は『いまそこにいる君は』(新潮社)です。  『出るものを出しきればよかった』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①犬と一緒に、ただ歩いてた。  いつもの風景である。  不意に、下腹がぎゅっという感じになった。  大きい方を、催してきたのである。  その方面は、私はきわめて規則正しく、トイレを捜し回るなどという経験は、まったくない。

②それでも、催してきたのである。  そんなはずはないと自分に言い聞かせたが、出るものは出ようとする。  ちょっと、汗をかいた。  散歩の行程は、あと十五、六分残っている。

③一度、立ち止まった私は、奥歯を噛みしめてまた歩きはじめた。  いつもの風景が、違うものに見えてくる。  前方に眼を据え、いつもに増して速く歩いた。

④家の門の前に立った時は、ほっとしたよ。  私はトイレに飛び込み、盛大に排出した。  ふう、と私はほんとうに声を出して、腰をあげた。

⑤なんだかセンサーのようなものがついていて、立ち上がると自動的に水が流れる。  妙にやかましい音をたてて、水が流れた。  ふっと便器に眼をやると、黒い塊が流れる水の中で躍っている。

⑥最初に私が感じたのは、自分はこんなものを出してしまったのか、という驚きだった。  なにかが、違うと言っている。  眼を凝らし、私は叫び声をあげた。

⑦流水の中で躍っていたのは、スマホである。

⑧とっさに、私はそれを掴み出し、水道水で洗い、水を拭きとった。  それから、電源を入れた。  大丈夫であった。

⑨トイレに携帯を落とした、などという話を聞いて、馬鹿なことをするものだ、と私は思ったものだ。  自分でやるなど、想像したことはなかった。

⑩私は散歩に出て、スマホをジーンズの尻ポケットに入れていた。  窮迫した帰り方で、靴も脱ぎ散らかしていた。  尻ポケットにスマホなど、思い及びしなかったのだ。』

笑いのツボが、私と同じ方には受けると思うんですが、大丈夫かな~(笑)

後日談も、面白いです。  興味ある方は是非買って読んで下さい。

17日間のオリンピックが始まりました。  初日から金1つ、銅4つで、上々の滑り出しです。  でも、オリンピックやワールドカップの期間中は、どうしても寝不足になりますね。

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