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2011年03月 | ARCHIVE-SELECT | 2011年05月

宮本常一『父の訓戒十ヵ条』

『超実践的「文章教室」』(福田和也著 ワニブックス新書)を読みました。  「『民族学の旅』宮本常一」の項から抜粋・紹介します。  宮本常一(1907年8月1日~1981年1月30日)は、日本を代表する民俗学者の一人です。

『この本は、山口県の貧しい農家に生まれた宮本が、いかにして民俗学の道を進んでいくかをつづった自伝ですが、至るところに「学び方」のヒントが見られます。  (中略)  この作品のなかで印象に残り、また役に立つのは、若き宮本が故郷を出るとき親父から授けられた十ヵ条の訓戒ではないでしょうか。

①汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何がうえられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。  (中略)  そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。

②村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上がって見よ、そして方向を知り、目立つものを見よ。  (中略)  高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。

③金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。  その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

④時間のゆとりがあったらできるだけ歩いて見ることだ。  いろいろのことを教えられる。

⑤金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。  しかし使うのがむずかしい。  それだけは忘れぬように。

⑥私はおまえを思うように勉強させてやることができない。  だからおまえには何にも注文しない。  すきなようにやってくれ。  しかし身体は大切にせよ。  三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。  しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。

⑦ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻って来い、親はいつでも待っている。

⑧これからさきは子が親に孝行する時代ではない。  親が子に孝行する時代だ。  そうしないと世の中はよくならぬ。

⑨自分でよいと思ったことはやって見よ、それで失敗したからと言って親は責めはしない。

⑩人の見のこしたものを見るようにせよ。  その中にいつも大事なものがあるはずだ。  あせることはない。  自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。』

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三角形の救命スポット

伊勢ー白山 道さんの4月17日付けブログのタイトルは『三角形の救命スポット』でした。  内容はアメリカン・レスキュー・チーム・インターナショナル(ARTI)隊長ダグラス・コップ氏の談話です。  抜粋して紹介します。

『「私は、これまでに60カ国で875軒の倒壊した建物にもぐり込み救命活動した経験があります。  すべての大きな被災地の現場で目撃した結果、地震の際の最も安全な地帯は、三角に空く隙間だという事です。」

1)一般的に机などの下にもぐるという意識をお持ちの方が多いですが、建物が倒壊した時には「机や車の中に入った場合」、ほとんどがつぶされて死んでいます。  大きな家具、タンスやベッド、ソファー等の「横の方が安全」です。

2)猫や犬は本能で警戒時には、丸くうずくまります。  人間も同じように、家具の横で、できるだけ小さく丸くうずまると良いです。

3)地震の場合には、木造が最も助かる確率が高い。  木は地震に揺れて柔軟性があり、上から落ちて来ても重量が他の資材に比べると軽い。  レンガもまだ助かる可能性があるが、コンクリートの建物が倒壊した場合、下敷きになったら、ほとんど助かるケースがない。

4)寝ている間に地震が起きた際には、丸くなって「ベッドの横に移動する事」。  ホテルも地震時には、ベッドの横にうずくまる事を掲示しておくと、利用客が助かる率が高くなるので掲示する事をお薦めします。

5)地震時に窓やドアから逃げる時間がないと思ったら、ソファーなど家具の横に丸くなってうずくまる。

6)ドアを開け、ドア枠の下に立って様子をうかがう人が多いが、これは大変危険な場所です。  ドア枠は構造上弱い場所で倒壊すると上からつぶされます。  横に倒壊すると二つに体が裁断される事になります。

7)階段利用は絶対ダメです。  階段は建物とずれて揺れます。  階段と建物の壁が何度もぶつかり合うような形になりますので、大抵の場合、階段は倒壊しています。  地震時に階段を利用しようとして、段がくずれ体を裁断されているケースを多く見ています。  建物が倒壊していなくても、地震後に階段を利用するのは、とても危険です。  くずれる寸前の状態になっている場合が多い。

(伊勢ー白山 道さんの話・・・私も階段の認識を改めましたが、海外では、階段に鉄筋を入れずに、コンクリートだけのケースがあるかも知れません。  これは脆いです。  日本の建築基準で1990年~以降のコンクリート階段は、内部に鉄筋が多く安全だと思います。  コンクリートが割れても、鉄筋で崩れないと考えます。  要は、地震が収まってから移動すれば良いです。  その時に階段の状況を見ましょう。 )

8)できるだけ、建物の外枠の壁に近い家具の横に行きましょう。  建物の内側であればある程、倒壊後の脱出ルートを失います。

9)車の中にいた場合は、ほとんど助かるケースがありません。  サンフランシスコで起きた大地震の際、ニミッツ・フリーウェイ(橋)を車で走っていた人たちは、ほとんど車の中にいて、全員死んでいます。  もしも、車を降りて車の横にいたなら、生存率はもっと高かった事でしょう。  車の中にいると、上からものが落ちて来た時に完全につぶされます。  横にいると三角に隙間ができて、助かる率があがります。

10)新聞社の倒壊現場で気がつきましたが、紙が積み上がっている場所は、くずれていませんでした。  会社にいる際は、家具でなければ、書類などがたくさん積み上がっている場所の横も良いという事です。

「三角の救命スポット」(Triangle of Life)と名づけていますが、この三角地帯にいる事で100%の確率で救命が可能であると思っています。

(伊勢ー白山 道さんの話・・・机の真下よりも、固くて「背が低い家具」の横が良いのは勉強になりました。  このような事を「知っている」だけでも助かります。  とっさの時は、なにげない初動作が運命を分けます。  三角形の空間を意識して生活をしていれば大丈夫です。)』

伊勢ー白山 道さんのブログには写真や図も載っていました。  興味のある方はアクセスしてみて下さい。

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羽生善治永世名人『ブレイクスルー』

将棋の羽生善治永世名人が書かれた『大局観』(角川ONEテーマ21)を読みました。  『目標設定のキーワードは「ブレイクスルー」』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.モチベーションを上げて結果を出すための方法として、目標を設定するやり方がある。  企業で言えばノルマのようなもので、共通のゴールを作り、方向性を合わせて前進するというやり方だ。

2.だが、この中には微妙でデリケートな問題がいくつも含まれている。

①目標を作ることによって、逆に義務感や強制されているという気持ちが強くなってしまい、やる気が落ちてしまうケース。

②本来ならば、もっと多くのこと、難しいこともできるのに、目標が設定されたことによって、限定されたところに安住してしまうケース。

③「駄目かな」と思いながら続けてみたら、意外と簡単にできてしまって、本人も驚いてしまうケース。

④目標はクリアできなかったものの、そのプロセスで多くの事を学んで、気がついてみたら実力を上げていたケース。

3.このように、目標の作り方によってまったく異なった展開が予想されるわけで、その線引きが目標の意味や価値を決めると言っても過言ではない。  では何を基準にして目標を設定すれば良いのか。

4.私は、そのキーワードは「ブレイクスルー」だと思っている。  個人であれ、団体であれ、まだ届いていない領域をめざすこと。  もう少し頑張れば今までと異なる景色が見える〝次なるステージ〟を目標とすること。  これがブレイクスルーだ。

5.国家におけるブレイクスルーの典型的な例が、1960年代初頭にジョン・F・ケネディ・アメリカ大統領(当時)が計画した「人類初の月面着陸」(アポロ計画)ではないだろうか。  その百年前にそんな目標を作ったとしても単なる絵空事で誰も興味を示したり、共感したりしなかっただろう。  あのタイミングで目標を設定したからこそ、多くの人々が夢や希望を感じ、その目標に向かって猛烈な努力をしたのではないか。』

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佐藤信夫コーチ『コーチ道』

3月14日から16まで日経新聞・夕刊にフィギュアスケートの佐藤信夫コーチが取り上げられていました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①選手として全日本選手権10連覇、1966年に引退後、就職した。  だが、札幌五輪開催を6年後に控え、日本代表コーチに推される。  その後、会社を辞め、コーチ業に専念する。  性格同様、「嘘がなく、現実的な取り組み方をする」(娘で、94年世界選手権金メダルの佐藤有香)手法は着実に選手を生み出し続けた。

②松村充、小川勝、さらに夫妻(妻は元五輪代表選手の大川久美子)でクラスを持つようになり、有香と小塚崇彦をゼロから育てた。  2人を頼りにやって来たのは村主章枝、中野友加里、安藤美姫、荒川静香。  そして「あれだけ頼まれたら(断れない)」と今季から見るのが世界女王の浅田真央。  フィギュア史を彩る選手ばかりだ。


2.①コーチ道に秘策はない。  強いて言えば、絶えざる自己否定か。  「指導者は一貫性がないといけないといわれるけど、僕は自分のしてきたことを否定していいと思っている」。  例えば、スケートを走らせるため、かっては姿勢をピシッとすることが求められた。  だが、トーラー・クランストン(76年インスブルック五輪男子銅メダル)の登場以降、体幹部を曲げて踊って見せる滑りが、良しとされるようになった。

②昨日の主流が明日の傍流になることの連続。  「もう自分の時代は終わりかなって思ったりもするけど。  幸い、選手時代から(海外選手の)模倣で始まっているから、新しいものを取り入れることに抵抗はない」


3.①なぜ、スケートは滑るのか?  「すべてはそこから始まる。  その原点から1つのルートで(技まで)つながらなければ、どこかで技術が間違っているのでしょう」

②途中から指導を仰ぎにきた選手にも、その技術をおろそかにはさせない。  浅田真央もしかり。  「世界女王に2度もなった人(浅田)に変なこと言うと問題が起きるから、頭の中で整理して、どこから料理しようかとは考えますよ」。  やっぱり、指導は原点のスケーティング技術からだった。

③もちろん、すぐに変化は出ないし、うまくいかない時期もある。  その点、妻の久美子も(娘の)有香も、佐藤の最大のすごさにあげる「辛抱強さ」がものをいう。  とにかく観察し続ける。

④コーチの中には少しいじるだけで、選手に劇的な変化を起こす人がいる。  対照的に、階段を一段目から上がらせる佐藤には「確実に上手にするが、時間がかかる。  待てない人もいる」という声がある。

⑤だが佐藤は「僕は不器用だから。  でも選手はいつかは壁にぶつかる。  その原因を解きほぐすには振り出しに戻らないといけない。  だったら振り出しから始めた方が早いねって言うんだ」。  浅田がやってきて半年。  浅田にとっても「こうだから、こういうことするんだ」と新発見だらけだったという。


4.「不思議なことに」競技生活、コーチ人生で一度も順位を考えたことがない。  「自分が弱いからかな。  でも、3割打者でも大打者でしょう。  10回試合して3回ニコニコできればって考えている」』

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