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2011.03.29 Tue
素顔の安岡正篤
『素顔の安岡正篤 わが祖父との想い出の日々』(安岡定子著 PHP研究所刊)を読みました。 陽明学者・思想家の安岡正篤(やすおかまさひろ 1898年2月13日~1983年12月13日)先生は昭和天皇による終戦の玉音放送に加筆し原稿を完成させたことや、「平成」の元号の発案者として有名です。 安岡先生の著書『運命を開く』からの引用部分を抜粋し、番号を付けて紹介します。
『1.日露戦争の頃、桂太郎首相の秘書官であった中島久万吉翁の話に、当時、なにしろ皆、昂奮して何かと激論が多かった際に、桂さんや小村寿太郎(外務大臣)さんが抱き合って泣いている光景をよく見かけることがあった。 いま国事を憂えて抱き合って泣く政治家がいましょうか。
2.築地の料亭「瓢家」の女将の話。 ここの女将がなかなかの女傑でありまして、この女将が老病で重態になったということを聞いて、高橋是清さんが見舞いに行った。 すると病床の老女将、むくむくと寝床から起き上がって、
「①私はまだ若いお酌の時代で、何だか分からなかったけれども、ある晩、総理大臣をはじめ偉い方々が奥の部屋にお集まりになって、用事があったら手を叩くから、そのときは酒を持ってこいと言われて、お手が鳴ると恐る恐る銚子を運んだものです。
②そこへ貴方がおいでになって、何だか非常に真剣な、私たちでさえハラハラするような空気で、長い時間秘密のお話がありました。 やっとまたお手が鳴ったので、お銚子を持って行ったところ、皆さんが貴方に、『(アメリカ・イギリスに行って日露戦争の軍費を調達する役目を)よく引き受けてくれた』と、泣いてお礼を言っておられた。
③何も分からなかったが、自分もその光景に非常に感動しました。 しかし、その時分に比べて、近頃の政治家たちは、ありゃ一体なんですか。 こんな政治で日本の国はもつのでしょうか。 私ゃ気がかりで仕方がない」
3.①こういう、国家とか、民族とか、世の中の為ということに、純潔熱烈な感情・気概が、市井の人々にも豊かにあったのが明治のよいところです。
②近来、教育ある人々は、一般に、人間の大事な機能をもっぱら知性・知能として、頭が良いということを一番の誇りに考えてきました。 そして情緒とか気概というようなものを割合に軽視しました。
③ところが、最近やっと心ある学者たちも、〈むしろ人間に大事なものは情緒である〉ということを証明するようになってきました。 〈頭が良いということより、情緒が良いということが大事である。 むしろ、優れた情緒の持ち主であってこそ本当に頭も良い〉ということを説くようになりました。』
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2011.03.22 Tue
逆境のジャパン
3月16日水曜日の朝日新聞の『ザ・コラム』はニューヨーク支局長の山中季広さんが書かれていました。 タイトルは『逆境のジャパン 立ち向かう姿に賛嘆のまなざし』です。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『1.①各国取材陣が驚きの視線で報じているのが、甚大な被害を受けながら日本の人々が少しも節度を失わないことだ。 すすんで食べ物を分け合う被災者の姿に感じ入り、怒号もけんかも起きない避難場所の静けさに心動かされているのだ。
②そのひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のニコラス・クリストフ元東京支局長は「罹災(りさい)しても日本社会は整然として秩序に乱れがない。 日本人の忍耐力と回復力は尊い」と書いた。 本人に思いを尋ねてみた。
③「阪神大震災で会った被災者が実に立派だったからです。 繁華街で店という店のガラスが割れ、商品が手の届く先に見えているのに、誰も盗もうとしない。 救援物資を待つ列が長くても奪い合いすら起きない。 感心しました」
④なるほど天災の直後には多くの国で略奪や強奪が起きている。 昨年の中米ハイチ地震では住民がスーパーからどやどや勝手に商品を持ち出した。 ハリケーン・カトリーナに襲われた米ルイジアナ州では6年前、群衆が店のドアを蹴破り、液晶テレビやDVD、バスケットボール練習台まで盗み出した。
⑤こういった開き直ったような略奪は日本ではまず起きない。 今回の地震でも実際には盗みの被害が出ているが、群衆によるものではない。 海外の感覚からすると、暴徒を見ない日本の被災地の静穏さはそれだけで賞賛に値する。
2.①もうひとつ海外メディアが注目している現象がある。 日本では被災地であからさまな便乗値上げが横行しないことだ。
②「日本以外ではまず考えられないことです」と話すのは、マイケル・サンデル米ハーバード大学教授。 日本でも有名になった哲学講義「白熱教室」で、フロリダ州の被災地で実際に起きたあくどい便乗値上げをクラス討議の題材に取り上げてきた。
③ハリケーン被災者の窮状に業者がつけこみ、ホテルの宿泊料はたちまち4倍になり、発電機の価格は8倍に跳ね上がり、倒木処理費が200万円に高騰した。 ほんの7年前のことだ。 「日本では、いくら街が廃墟になっても、人々は自制心をゆるめず、わが街のために結束している。 被災後の市民のふるまいには胸を打たれました」
3.①百年に一度とも千年に一度とも論じられる地震の破壊力を目の当たりにして、各国が、これまで世界一と信じた日本の震災対策の限界を悟った。 日本ですら津波を予知予防できない現実におびえ、安全を誇った原子力発電所からあがる白煙に身震いした。
②それでもなお海外の人々は、日本の被災者たちの沈着で節度ある態度に讃嘆を惜しまない。
③苦境にあっても天を恨まず、運命に耐え、助け合う。 日本の市民社会に対する世界の信頼は少しも揺らいでいない。』
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2011.03.14 Mon
東日本大震災
この度の東日本大震災(3月11日午後2時46分 マグニチュード9.0)におきまして、被害にあわれた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。 また犠牲になられた方々には深く哀悼の意を表します。
1.本日の朝日新聞に中国メディアの記事が紹介されています。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①第一財経日報・・・「日本の民衆の『落ち着き』が強い印象を与えている」
②新京報・・・「日本人はなぜこんなに冷静なのか」・・・2008年の四川大地震では一部で混乱も伝えられており、市民も驚きをもって報道に注目しているようだ。
③環球時報(普段は日本に厳しい論調が多い国際情報誌)・・・「(東京では)数百人が広場に避難したが、男性は女性を助け、ゴミ一つ落ちていなかった」
④中国中央テレビ・・・「外国人にも配慮する日本に、とても感動します(被災地に中国語の案内があることを指摘し)」』
2.日経新聞でも海外メディアの記事を紹介しています。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①インディペンデント・オン・サンデー(イギリス)・・・「日本国旗の上に日本語で『がんばれ、日本。 がんばれ、東北。』と書いた巨大なメッセージを掲載」・・・英公共放送BBCテレビの朝のニュースで、キャスターがカメラの前に掲げて紹介した。
②ウォール・ストリート・ジャーナル(アメリカ)・・・12日付けで「不屈の日本」という社説を載せた。・・・「大自然からの打撃に遭っても生き延びる備えを、日本人がどれほどきちんとしているか指摘せずにはいられない(日本の防災システムや建物の耐震設計を賞賛して)」・・・「誤解してはいけない。 日本の産業力は今も偉大だ(大地震で被害が出たハイチや中国と比べて力説)」
③ノーバヤ・ガゼータ電子版(ロシア)・・・「我々はあなた方と共にある」と題する特集を組んだ。・・・この中でタス通信のゴロブニン東京支局長は「(日本にとって)第2次世界大戦直後に匹敵する困難」と指摘しつつ「日本には最悪の事態に立ち向かう人の連帯がある」と強調した。
④ネーション(パキスタンの英字紙)・・・社説で「日本の防災意識の高さと規律正しさで救いがあった」と指摘。・・・「日本は第2次大戦の荒廃から見事に復興した。 また新たな奇跡を起こしてくれるだろう」と結んだ。
⑤ビジネス・ライン(インドの経済紙)・・・栃木県のホンダの拠点を訪れていた印タイヤ大手幹部の目撃談として、被災地の粛々とした対応への驚きを伝えた「日本以外で(この地震が)起きていたらこれだけの対応は見られないだろう」』・・・ヴィカス・スワルプ駐大阪総領事は他の新聞への寄稿で阪神大震災後の復興を紹介し「日本人はこの悲劇から立ち直る」と断言した』
被災地の皆さまが一日も早く普段の生活に戻れますよう祈っております。
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2011.03.08 Tue
梅棹忠夫先生『文章は誰が読んでもわかるように書く』
『梅棹忠夫 語る』(語り手・梅棹忠夫 聞き手・小山修三 日本経済新聞出版社刊)を読みました。
1.ウィキペディアの梅棹先生の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①梅棹 忠夫(うめさお ただお、1920年6月13日 ― 2010年7月3日)は、日本の生態学者、民族学者。 国立民族学博物館名誉教授、京都大学名誉教授。
②日本における文化人類学のパイオニアであり、梅棹文明学とも称されるユニークな文明論を展開し、多方面に多くの影響を与えている人物。 京大では今西錦司門下の一人。 生態学が出発点であったが、動物社会学を経て民族学(文化人類学)、比較文明論に研究の中心を移す。
③フィールドワークや京大人文研での経験から著した『知的生産の技術』(岩波新書 1969年)は長くベストセラーとなり、同書で紹介された情報カードは、「京大式カード」という名で商品化された。
④1986年に原因不明の失明をした(恐らくモンゴル訪問時に特殊な菌に侵された)。 それ以降の著述は口述筆記で行われている。』
2.『梅棹忠夫 語る』の第二章『文章は誰が読んでもわかるように書く』から抜粋し、番号を付けて紹介します。
『小山:今度は文章の話しです。 まず文章も、人が読めるように書けというのがひとつ(笑)。 以前、ぼくは文章をきびしく直された。 複文はイカンと。 そもそも複文って何ですか?
梅棹:文章の中に文章が入っている。 二重構造になっている。 複文というのはわかりにくい。 短文の連続で書かんと。
小山:だけど、むずかしい文章を書いたら、かっこいいじゃないですか(笑)。
梅棹:それがいかん。 それが一番だめなこと。 「かっこええ」と言うけれど、科学はかっこうではできない。 われわれの仕事は芸術と基本的にちがう。 芸術的にすぐれているフリをしたらいかん。
小山:そういえば、専門的なことを書いていて、わからなくなると、むずかしい漢字や言葉を使ってごまかしてしまう(笑)。
梅棹:そう、ごまかしや。 一番いかんのは、美的にかざることやな。 それで何かいいものができたみたいに思う。
小山:ムダな形容詞が多くなるんですかね?
梅棹:とにかく、文章で一番大事なことは、わかるということ。 自分もわからないくせに、そのわからない言葉を使う。 それはかざってるからや。』
学生時代に上の1.③『知的生産の技術』を読んで感銘を受け、市販されていた「京大式カード」を買ったことを思い出しました。
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