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褒め方の重要性

1.11月15日のブログのタイトルは『つねに褒めること』でした。  似たような内容の記事が12月13日の日経新聞・夕刊に載っていました。  

書き手は京都女子大学教授の正木大貴さんで、タイトルは『「僕すごい?」どこまで満たす・・・「条件付きの承認」には注意』です。  番号を付けて紹介します。

『①承認欲求は人間なら誰しもが持っている自然な欲求で、小学校低学年の子どもが持っていることは健康的だともいえる。  子どもの場合は、まず身近な親に認めてもらうことで「自分という存在を受け入れてもらえる」 「自分は誰かから認められる大切な存在なんだ」と安心感や自己肯定感を育んでいく。

②親としては逐一、子どもの「すごい?」 「えらい?」に応えるのは大変かもしれないが、小学生のうちは存分に褒めて、認めてあげよう。  ただ、親の反応が「条件付きの承認」になってしまうのはよくない。

③条件付きの承認とは、例えば「試合に勝ったからえらい」 「テストで100点を取ったからえらい」と、認める対象を限定してしまうことだ。  どんな結果であれ「頑張ったあなたが素晴らしいんだよ」と、ありのままのわが子を受け入れ、認めるようにする。

④さらに注意が必要なのは、親が条件付きの承認をすることで、子どもを望む方向へ誘導しようとしてしまう場合。  子どものやる気や頑張りを引き出そうとするあまり、「宿題をしなければ(100点を取らなければ)えらいとは言えないよ」といった具合に、巧みに子どもを誘導しようとすることはよくない。  子どもがその条件を満たせない場合、「自分には価値がない」と自信をなくし、自分の存在の基盤となる自己肯定感が育めなくなる。

⑤こうした誘導の背景には、親自身が「もっと人から認められたい」と思っているケースもある。  仕事や家庭で満たされない思いを、「勉強ができるわが子はすごい」などと、子どもを通じて晴らそうとしていないだろうか。

⑥条件付きの承認は、コミュニケーションにおいてもトラブルを起こすことが予想される。  子どもは「認められるためには他人よりも優れていなければならない」 「周りの期待通りに振る舞わなければならない」と思い始める。  そうすると友達を過度にライバル視してしまったり、親にも友達にも本心を明かせない、といった孤独感を抱えたりすることになってしまう。

⑦ちなみに、子どもの承認欲求を満たすために、無理をしてまで褒める必要はない。  例えば子どもが本を読んでいたら、「本を読んでいるんだね」というだけでよく、「本を読んでいてえらいね」と、プラスアルファの要素まで足す必要はない。  「本を読んでいるんだね」だけでも、子どもは親が自分に注目してくれていると分かるし安心する。

⑧小さな頃から承認欲求を満たしてあげて、子どもが自己肯定感を育めれば「ありのままの自分でいいんだ」と他人の目を気にすることも少なくなる。  反対に十分に承認欲求が満たされないまま育つと、常に他人の評価が気になり、SNS(交流サイト)でいうところの「いいね」をもらえないと自分を保てない。

⑨一昔前はいつも子どもを抱っこしていると「抱っこぐせが付く」といわれていた。  しかし、今は十分に抱っこし、甘えさせることで子どもは安心し、親から巣立っていこうとすることが、発達心理学でも明らかになっている。

⑩一方、小学校高学年以上になると、子どもは親だけではなく、友達など親以外の人からの承認も求めるようになる。  ただし、期待通りに認められることのほうが少ないかもしれない。  そんなときでも、親が「そのままのあなたを受け入れるよ」という姿勢を崩さずにいると、子どもは自信を失わずに済む。

⑪子どもは成長するにつれ、学校や友人関係がうまくいかないなど、家庭の外で傷つく機会も増えてくる。  公認心理師としてカウンセリングをする中で、スマートフォンなどが普及したがために、常に誰かとつながっていなければならないといった状況の中で、心身のバランスを崩す思春期の子どもたちが増えていると感じる。

⑫子どもが今後、どんな困難に直面しようと、親は常にわが子を認め続け、最後の砦(とりで)でいてあげてほしい、と切に願う。』


2.同じ紙面に、陸上100メートルの日本記録保持者・山縣亮太さんのインタビュー記事も載っていました。  タイトルは『父の「おまえが一番」で自信』です。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『――中学、高校で選手として頭角を現します。当時はどんな状況でしたか。

①「両親は、とにかく褒めてくれました。  自分の中から自信をつくっていくのが苦手で、褒められて救われたことも多々ありました」

②「記憶に残っているのが高3のときの国民体育大会(国体)の試合です。  直前の全国高校総体(インターハイ)で3位に敗れ、すごく不安になっていました。  そんなとき、父が2人きりの車の中で『やっぱりおまえの走りが一番だと思うわ』と声をかけてくれました」

③「自分も心のどこかで思っていたことを言葉にしてくれ、自信になりました。  スタートラインに立つと緊張して精神的に不安定になりがちですが、自分を保たせてくれたのが父親の一言でした。  その結果、国体の少年男子A100メートルという部門で優勝できました」』

以前、NHKで山縣選手のドキュメンタリー番組を見たことがあります。  未熟児で生まれ、インキュベーターの中に入っている山縣選手の映像が妙に印象的でした。

11月15日のブログで紹介した内容もそうですが、褒め方一つでその子の人生が大きく変わってくる可能性がありますね。

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つねに褒めること

1.10月24日のブログで『チンプ・パラドックス』(スティーブ・ピーターズ著 海と月社)を紹介しました。  ブログから一部抜粋・紹介します。

『①(本書では脳内の)前頭葉、辺縁系、頭頂葉をそれぞれ〈人間〉、〈チンパンジー〉、〈コンピュータ〉と名づける。  この三つの領域は協調してはたらくこともあるが、たびたび対立して主導権を握ろうとする。  その争いでは〈チンパンジー〉(辺縁系)が勝つことが多い。

②あなたの〈コンピュータ〉には、ふたつの機能がある。

・情報、信念、価値観の源になる。
・プログラムされた思考と態度によって無意識に考え、行動できる。

③〈コンピュータ〉の動作速度は〈チンパンジー〉の約四倍、〈人間〉の二十倍と考えられる。  したがって〈コンピュータ〉が正常に機能すれば、〈チンパンジー〉や〈人間〉が思考を終えるまえに、驚くべき速さで正確に命令を実行できる。』

2.今回は本書の「4章 心の〈コンピュータ〉を理解するために」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『(1)〈コンピュータ〉の構成は?

・〈自動運転〉=建設的で役に立つ信念や態度。
・〈グレムリン〉=役に立たないか破壊的な信念や態度だが、取り除くことができる。
・〈ゴブリン〉=同じく役に立たないか破壊的な信念や態度。  こちらは、しっかりと根を張っていて、取り除くことはきわめて困難。
・〈人生の石板〉=人生のよりどころとなる価値観や信念が刻まれている。  

(2)〈ゴブリン〉と〈グレムリン〉

①〈ゴブリン〉と〈グレムリン〉は〈コンピュータ〉に蓄えられた役に立たない破壊的な行動、信念、自動プログラムだ。  

②〈ゴブリン〉は、たいてい幼い時期(8歳まで)に〈コンピュータ〉に入力される。

③〈ゴブリン〉は程度の差こそあれ、〈コンピュータ〉としっかり結びつき、削除するのがとてもむずかしい。

④〈グレムリン〉は〈コンピュータ〉との結びつきがそれほど強くないので、見つければ取り除くことができる。

(3)〈ゴブリン〉の例

①〈ゴブリン〉でもっとも一般的なのは、「冷蔵庫の扉シンドローム」だ。  これは多くの欧米人に影響を与えている。

②小学校への登校初日、子どもがワクワクしていると、先生が「お父さんとお母さんの絵を描きましょう」と言う。  子どもは描いた絵をもって家に帰り、親に見せる。

③シナリオ1・・・親は「とっても上手ね。  あなたは頭がいい。  自慢の子よ。  みんなに教えてあげなくちゃ」と言い、冷蔵庫の扉にその絵を貼って、わが子の賢さを周囲に知らせる。  するとその子は、人生をともに歩む大きな〈ゴブリン〉を持つことになる!

④シナリオ2・・・親はその子に「ちょっと待って」と言い、絵を横に置くと、わが子を抱きしめる。  「あなたは自慢の子よ。  あなたのような賢い子がいてくれてうれしい。  どれだけうれしいか、みんなに教えてあげなくちゃ」。  そう言ってから、ふたりで絵について話し、親は絵とわが子を褒め、上手に描けているから冷蔵庫の扉に貼ったらどうかと提案する。

⑤シナリオ1では、親は子どもの賢さを褒め、わが子がなしとげたことで胸を張る。  言い換えれば、その子の価値は絵のうまさで決まると暗に示している。  そして、 みんなに見せたいから絵を冷蔵庫の扉に貼ろうと続ける。  

⑥したがって、子どもに伝わるメッセージは、「あなたの価値は人生で達成したことによって決まる。  他人から高く評価されるのは、何かをなしとげるからだ」となる。

⑦一方、シナリオ2で子どもに伝わるメッセージは、「あなたはありのままですばらしい。  愛され、尊敬されるのはあなた自身がすばらしいからであって、何かをなしとげたからではない」だ。

⑧親はさらに、立派なことをするのはすばらしいけれど、自分の価値と混同してはいけない、と続ける。  もちろん、子どもが全力を尽くして何かをしたときには、でき具合がどうであれ、つねに褒めることが望ましい。

⑨ふたつのシナリオは、理解しやすいように極端な見方をとっているが、ふだんから私たちは、自分が何をして、他人がどう思うかということをあまりにも気にしすぎていることに気づいてほしい。  

⑩試験を受けるとき、多くの学生は試験の結果を心配し、怖れる。  (中略)  もしも誰からも悪く見られないとわかっていれば、私たちはまず怖がらない。  不合格になったあとの対処もさほど苦にならず、自己評価が試験結果に左右されることもなくなる。  冷蔵庫の扉の〈ゴブリン〉など怖くなくなる!』

今週末19日の土曜日は「2022国際親善空手道選手権大会」です。  城西支部からも多くの少年部選手が出場します。

応援のご父兄には、(3)⑧にあるように「子どもが全力を尽くして試合をしたときには、勝ち負けはどうであれ、つねに褒めること」をお願いしたいと思います。

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教育とネガティブ・ケイパビリティ

今回も前回に引き続き、作家・精神科医の帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日新聞出版)からです。  「第9章 教育とネガティブ・ケイパビリティ」に面白い記述があったので、抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①つい最近、「タイム」誌に興味深い論考が載りました。  親は普通で、生まれた子供がすべてそれぞれの道で成功をおさめている、九家族を調査した結果の報告です。

②全員が二人か三人きょうだいですが、全く違う分野で傑出した仕事をしているのです。  例えば三人姉妹の場合、長女は大学の疫学教授、次女はユーチューブのCEO、三女は遺伝子検査会社のCEOです。

③一男二女の場合、長女はヤフーの大幹部、長男は検事、次女は保険局長といった具合です。  かと思えば、長男がペンシルヴェニア大副学長、次男はシカゴ市長、三男がハリウッド映画製作会社協会の事務局長という三兄弟もいます。  しかし、両親は普通の人々で、親の七光の要素は皆無です。


2.この九家族の教育から共通点を引き出すと、次の六つの要素が見えてきました。

①第一は、ほとんどが他国からの移民でした。  移住者はそれだけで、本国人に比べてすべての面でハンディキャップを負います。  (中略)  しかしこのハンディが、子どもたちに負けてなるものかという向上心と忍耐強さを与えていました。

②第二に、両親は子供の小さい頃、教育熱心でした。  0歳から5歳までの学校教育以前の早い時期に、子供たちにさまざまなことを学ばせていました。  つまり学ぶ心を、就学以前に植えつけていたのです。

③第三は、親が社会活動家であり、世の中をよりよく変えていくための運動をしていました。  子供は親の行動を通して、社会の不合理を学びとり、それを変革していく姿勢を学んでいたのです。  いわばこうして自分を取り巻く世界の理解を深めたのです。

④第四は、家庭の中が決して平穏ではなく、両親の言い争い、きょうだい喧嘩と無縁ではなかった点です。  とはいっても両親の争いは決して暴力沙汰ではなく、社会の見方の違いからの意見の突き合わせのようなものです。  不登校や万引、喫煙、殴り合いの喧嘩も、子供たちは十代の頃経験しています。  移民の子としていじめられた子供もいますが、これが却ってなにくそという精神力を培っていました。

⑤第五は、子供時代に人の死を何度も見て、生きていることの貴重さを学んでいる点です。  人の死を知ることは、自分の人生の限界を知ることに直結します。  だからこそ、生きているうちに自らのやりたいことを成し遂げる馬力も、生まれてくるでしょう。

⑥最後の六つ目は、丁寧な幼児教育のあとの、放任主義です。  すべての子供が、何をしても許されたと言います。  すべてを自分自身の責任に任せられると、逆に子供は野放図なことはできません。  「お前たちは、他人のゴールには絶対辿り着けない。  お前がテープを切れるのはお前のゴールだけだ。」と言われたのです。


3.①この六つのどれ一つとっても、いわゆる教育ママやパパのやり方とは正反対です。  親が敷いたレールに子供を乗せ、猛スピードで後ろから押していく方法とは好対照です。

②そしてそこに、私たちはネガティブ・ケイパビリティの力を見ることができます。』

目からうろこの内容でした。  特に、2.④の「家庭の中が決して平穏ではなく」というのは、一般的な教育環境として相応しくないと思っていました。

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