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勝利より大切なもの

6月6日付け朝日新聞デジタルの連載「勝利至上主義を考える」のタイトルは『「僕を投げたくない?」   現役五輪王者が訴える勝利より大切なもの』でした。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①柔道男子73キロ級で五輪2連覇を遂げた大野将平(30、旭化成)は焦燥感を抱えている。

②「それだけでは何も変わらない」  全日本柔道連盟が「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」として、小学生の個人戦の全国大会を廃止したことを受けて、そう感じた。  「10年後じゃない。  いま、スピード感を持って何かをやらなければいけない」  柔道人口減少にどうすれば歯止めがかけられるのか。  競技の普及は「強くなった人間の責任」とまで言う柔道家は、旧態依然とした業界の変化を訴える。

③大野は小学生の時、「めちゃくちゃ弱かった」そうだ。  今回廃止された全国大会ではないが、毎年5月に開催される団体戦の全国少年柔道大会には小4の時から出場。  女子に投げられていたという。

④兄の後を追って中学入学と同時に山口県から上京。  柔道私塾「講道学舎」入門時は、同級生の中でも実力は下から数えた方が早かった。

⑤指導者には恵まれた。  「基本に忠実な指導をしてもらった。  変な風にいじられなかった」。  講道学舎の恩師、持田治也氏は試合の勝ち負けよりも、小さい選手が大きな選手に立ち向かっていく、挑戦する姿勢を大事にした。  「全然、勝利至上主義ではなかったですね」

⑥中学まで背負い投げなどを得意としていたが、投げ切る自信を持てず、指導などでポイントを取る柔道をしていた。  持田氏に「お前の柔道はかっこわるい。  相手の脇を持って大外刈りをやれ」と勧められたのは中3の終わり。  その助言が、世界の頂点を上り詰めた大野の柔道の原点となった。

⑦だからだろう。  「小中高までは成績にこだわる必要はないし、負けていい」と強調する。  高校の時に同世代で強かった選手は、現役トップにほぼいなくなった。

⑧「小さい時から王者で居続けられる人は本当に一握りしかいない。  勝ち負けよりも、いい柔道をしていた方が将来化ける。  勝負にこだわるのは大学くらいからでいい」

⑨大野が考える「いい柔道」とは。  「しっかりと2本(の両手)で組み、投げ合う柔道」。  その柔道を大舞台で表現するために、抜きんでた稽古の量と質で圧倒的な力を蓄えてきた。

⑩「日の丸を背負って戦う以上、勝つことは使命。  緻密(ちみつ)さにこだわることも必要です。  でも、変わったルールを追いかけるのではなく、変わらない柔道の本質に力を入れるべきだと思う」

⑪日本代表の合宿では、日々変化していくルールや潮流にどう対応するべきかに時間を割いた。  ただ国際大会で勝つために必要な細かな技術は、大野にとってはあくまで枝葉に過ぎない。  子どもの頃から「いい柔道」に迫るための基礎を培ってきたことがリオ、東京での連覇につながった。

⑫「すぐ目先で成果や結果を出したいとなると、小手先の技術に走ってしまう。  そうすると、互いの強みを消し合う引き算の柔道になる」

⑬リオ以降、実力者の大野に対して、国内外の多くの選手が真っ正面から組み合うことを避けようとする。  「僕は最近ずっと、鬼ごっこをやっている感覚なんです。  誰も正面から衝突してこないで、逃げる相手をずっと追いかけている。  そんな柔道はつまらないし、子どもたちがやろうとも思わない」  (中略)

⑭「僕の柔道を見て、子どもだけでなく色々な人が柔道をやりたくなったとか、人を投げてみたくなったとか。  そういう風になればいい」

⑮大野はこれまでも柔道教室などに参加してきたが、今は柔道をやったことのない人も楽しめるような取り組みを充実させたいと考えている。  「僕のことを投げてみたくないですか?   内股で宙に浮いてみたくないですか?   そういう体験をしたい方って結構いると思うんです。  そういう機会を考えたい」  (中略)

⑯「勝つためにやるべきことと、強くなるためにやるべきこと。  その二つを知っている自分だから、伝えられることがある」  (中略)

⑰「今の子どもたちには本質を追いかけてほしいし、正統派の柔道に憧れてほしい」。  今の一番のモチベーションは子どもたちに「大野将平のような柔道をしたい」と言われることなのだという。』

上の③で『大野は小学生の時、「めちゃくちゃ弱かった」そうだ。』と書かれていますが、現在の城西のトップ選手で小学生の時から強かった選手は少ないような気がします。  やはり、あきらめずに長く空手を続ける中で、勝ったり負けたりして徐々に強くなるものです。

来週の日曜日は内部試合です。  出場する以上、勝利を目指すことは大切だと思います。 でも、たとえ負けたとしても将来のもっと大きな勝利につながっている、ということは忘れるべきではありません。

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意拳学

1976年から、立禅を中心とした意拳を朝の日課にしています。  一昨年は『武道気功 私の「立禅」修行』(道義出版)という本を出しました。  私が指導する選手稽古も、まず意拳から始まります。

今回は、私が若いころご指導いただいた澤井健一先生の兄弟弟子である韓星橋先生が書かれた『意拳学』(スキージャーナル)という本から抜粋し、番号を付けて紹介します。  本書では立禅のことを站樁(たんとう)と書かれていますが、理解しやすいように「立禅」に統一しました。

『意拳の練習過程は、求力・試力・発力の三段階に分かれる。  (中略)

1.求力
①求力は、鍛錬を通して自分が拳術の力を獲得することである。  この拳術の力は、人体各部に本来備わった力で、拳術の技撃の目的に基づいて熟練運用しなければならない。  (中略)

②意拳では、立禅の方法を通して拳術力を求める目的に達する。

2.試力
①試力は立禅の基礎の上、点、線、面、体の直線を通して、各立禅間での空間の移行・転換を完成し、全空間において意に伴って渾円力(空間のどの方向上にも随時意のままに身体を運用できる能力のこと)を使用するという目的を達成するのである。

②試力の鍛錬を経過した後、我々はすでに空間において意のままに各種の動作ができるようになり、全身の均整協調を失うことがない。  この種の状態を「得力」と呼ぶ。

3.発力
①技撃において単に自分の姿勢が均整のみでは足りず、自身の力を相手の体に作用させなければならない。  (中略)

②発力練習を通して、どのように自分の整力を相手の体に作用させるかを習得しなければならない。』

少し難解ですが、意拳の稽古体系を理解する上で大変参考になります。

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怪物級の練習をしよう

毎日、テレビで北京オリンピックを観ています。  オリンピック独特の緊張感に飲み込まれ実力を出し切れない選手も多い中で、男子フィギュアスケートで銀メダルを獲得した鍵山優真選手の安定感はひときわ光っていました。  

2月11日付け読売新聞オンラインに記事が載っています。  タイトルは『父は言った「怪物級の練習をしよう」…18歳・鍵山優真、ジャンプ安定し会心の「銀」』です。  番号を付けて紹介します。

『①昨季から急成長を続ける期待の新星、18歳の鍵山が、一気に主役に躍り出た。  「とてもうれしい。  全ての努力が詰まった銀メダル」。  若々しく堂々と、誇らしげな笑顔だった。

②冒頭の4回転サルコーは、出来栄え点(GOE)4・43点を稼ぐ完成度。  続く4回転ループは着氷が乱れるなどしたものの、ここから持ち味の安定感が生きた。  3本目の4回転トウループ以降の全てのジャンプでGOEはプラス評価。  やりきったような表情で演技を終え、得点を見ると、父の正和コーチとハイタッチで喜びを分かち合った。

③2019年の全日本選手権で初の表彰台となる3位に入った直後のこと。  五輪2大会の出場経験を持つ父から、羽生、宇野を引き合いに出して言われたことがある。  「あの2人は怪物級だ。  どうすれば倒せるか、わかるか?」。  鍵山は当時、ジュニア選手。  言葉に詰まると、父は続けた。  「怪物級の練習をしよう」

④五輪を見据え、20年にシニアに本格転向した。  海外の振付師に未明からリモート指導を受け、早朝練習は3時間。  そのまま電車で高校へ。  リンクへ戻り、夜は1時間半の練習を2回こなした。  長い日は、実に1日8時間。  練習スケジュールを他の選手に見せると、「これ、リンクの営業時間?」と勘違いされるほどだ。  「ちょっとやそっとじゃ崩れないジャンプの安定感を手に入れられた」という。

⑤昨季の世界選手権は日本勢最高の2位と大健闘。  でも、次第にわいてきたのは、「2人を五輪で超えたい」という思いだった。  それを五輪初出場にして成し遂げた。  「羽生選手や宇野選手みたいに、演技(表現)やステップ、色んな部分が評価される選手になりたい」と鍵山。  気持ちが良いほどの快進撃だった。』

上記④にあるように、現役の高校生が学校に通いながら、『長い日は、実に1日8時間』練習したそうです。  「学校や仕事で時間がない」は言い訳になりませんね。  世界を取るには、それくらいの覚悟が必要です。

大きな試合の極限状態の中での安定度は、練習の量を重ねることでしか手に入りません。  わかりやすく言えば、「練習をこれだけやったんだから負けるはずがない」と思えるまで準備したかどうかだと思います。




 

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