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山下泰裕さんの勝負哲学

1.8月10日、NHKの『レジェンドの目撃者』は特別編として、柔道ロス五輪金メダリストの山下泰裕さんを取り上げていました。  番組の中で山下さんが話していた勝負哲学を、番号を付けて紹介します。

『①(私の勝負哲学は)勝負に“絶対”はない。  お前が思っているほど相手は弱くないぞ。  お前が思っているほど相手は強くないぞ。

②最後の最後まで決して安心するな。  最後の最後まで決して諦めるな。  最後まで勝負は分からない。』


2. 1.②について、山下さんは「勝負というものがいかに過酷で厳しいか、そして、予想外のことが起きうるか。  絶対王者と言われた方が敗れて涙を流すとか、そういう姿をいくつも見ていますから。」と話されていました。

山下さんは、全日本選手権9連覇、引退から逆算して203連勝(引き分け含む)、また対外国人選手には生涯無敗(116勝無敗3引き分け)という大記録を打ち立てた、取りこぼしのない盤石の王者でした。


3.肉離れを起こした絶体絶命の状況の中で山下さんが優勝したロス五輪も大変感動的でした。  1984年8月なので、私はリアルタイムで観ていますが、知らない方のためにWikipediaで検索・抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①2回戦で西ドイツのアルトゥール・シュナーベルと対戦した際、軸足の右ふくらはぎに肉離れを起こしてしまった。  山下は左に組むため、右足・軸足の肉離れで大変に不利な状況に立たされた。  2回戦は送り襟絞めで勝利を収め、試合後控え室に引き返すまでの間、山下は肉離れを決して悟られまいと平然に振舞って普通に歩いたつもりが、誰にもわかってしまうほど明らかに足を引きずっていた。

②山下は一旦は落ち込むが、次の試合時刻が迫ってくる中開き直り、“足を引きずってもいいから相手を見据えて胸を張っていけ”と自身に言い聞かせ準決勝に臨む。  準決勝の相手はフランスのデル・コロンボだった。  過去の対戦から組みし易い相手と山下は考えていたが、開始30秒で大外刈りによる効果を取られてしまう。  直後は動揺したものの直ぐに我に返り、激しく自身を鼓舞、守りに入ったコロンボを大内刈りと横四方固めの合わせ技で逆転した。

③エジプトのモハメド・ラシュワンとの決勝戦前、山下の頭には『金メダルを取り表彰台の中央で観客に満面の笑みで応える山下』と『タオルを被って号泣してうつむく山下』の両方のイメージが交互に浮かんだ。  師匠の佐藤は「投げられても一本取られなければいい、寝技に持ち込んで勝つ方法もある」と冷静にアドバイスする。

④一方山下も、同じ控え室で気合を入れて調整をしている試合直前のラシュワンに対し、意図してにっこり微笑みかけた。  目が合い、笑顔で応じたラシュワンの緊張が解けた様を見て、山下は勝機を感じていた。

⑤ラシュワンのコーチは「初めの一分間は我慢して攻めないように」とラシュワンに指示したが、ラシュワンはそのアドバイスを忘れたかのように強気で攻め始める。  冷静な山下はラシュワンの攻めに無意識に反応、ラシュワンが体勢を崩した瞬間を捉えて押さえ込みに持っていき、横四方固め。  全て一本勝ちでの金メダル獲得である。』


4.27・28日のセミコン・型・西日本大会、9月10日の東日本大会と試合が続きます。

チーム城西の選手には1.の山下泰裕さんの勝負哲学の中から

『お前が思っているほど相手は強くないぞ。  最後の最後まで決して諦めるな。  最後まで勝負は分からない。』

ということを伝えたいと思います。


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大野翔平選手

1.7月26日、東京五輪・柔道男子73キロ級で大野将兵選手が2連覇を果たしました。  試合直前24日の日経新聞に大野選手の特集が載っていました。  タイトルは『大野、勝つための「悲観」・・・隙埋める練習徹底』です。  番号を付けて紹介します。

『①金メダルに輝いた2016年リオデジャネイロ五輪から5年、大野将平(29)は毎日「負ける姿」を想像して稽古と向き合ってきた。

②ポジティブ思考こそ成功の条件とされる時代に、大野は安易にくみしない。  どうすれば勝てるのか、ではなく、どうすれば負けるのか。  練習パートナーに執拗に隙や苦手を突かせ、「心が折れそうで、苦しい瞬間の方が多い」稽古は爽快感とはほど遠い。  しかし、大野はそれを「防衛的悲観」と呼んで「勝ち続けるために必要なこと」と受け入れる。

③五輪会場の日本武道館で行われた2019年世界選手権は圧倒的な強さだった。  それでも周囲の楽観を「連覇は簡単ではない」と打ち消してきた。

④忘れ得ぬ試合がある。  連覇濃厚といわれた14年世界選手権。  4回戦、韓国選手の出足払いに沈んだ。  柔道では時として起こりうる、タイミングがかち合った偶発性の高い決着ともいえたが、大野の見方は違う。  「負けを想像せず、どうやって勝ってやろうと欲や色気があった。  慢心が自分を負けに導いた」

⑤相手も必死という勝負の本分を忘れ、自分本位に陥った果てと自らを責め、「負のイメトレ」が日課になった。  代表監督の井上康生はリオの本番間際の姿を振り返る。  「自分に嫌な形を想定して、隙を埋める練習を徹底していた」。  誰しも気持ちを盛り上げたいと思う時期に、気の重くなる作業に目を向け、生き馬の目を抜くトーナメントを勝ち上がった。  14年のこの時以来、世界選手権、五輪の二大大会で敗戦を知らない。

⑥負ける要素を潰していきながら、その柔道は守りに傾くどころか、さらに攻撃性を増している。  「組み手が8割」とまでいわれ、多くの時間が組み手の取り合い、探り合いに割かれるようになった現代柔道で、大野はその間が惜しいとばかり、無頓着に袖と襟を取りにいく。

⑦1カ月後に世界選手権を勝つ安昌林(韓国)と相まみえた18年アジア大会。  けんか四つでの引き手争いが続くと、延長で突如左組みにスイッチして「持ってこいよ」と誘った。  相四つでがっちり組み合う形になった延長7分、内股で仕留めた。  相手の土俵に入り込んででも肉を切らせて骨を断つ。  難敵になればなるほど、そんな勝利が増えていく。

⑧昨年2月以来、実戦から離れ、男女14階級で唯一前哨戦を経ずに五輪に出る。  しかし、大野はどこ吹く風だ。  「コンディションどうこうでなく、そもそも悪いという心づもりで臨むんで」。  調子や流れ、相性といったあらゆる要素を超越した存在として五輪を制する、とでもいいたげに。  「圧倒的な柔道」を誓ったリオから「絶対的な強さ」を追い求めてきた柔道が、輪郭を帯びている。

⑨東京五輪を2度目の集大成であり通過点と捉える大野は「勝ち続けることで自分しか見られない境地が見られるんじゃないかと思っている」という。  五輪の頂点を極めても王道を選ばず、いばらの道を歩んできた異能の柔道家。  26日、日本武道館で連覇を果たしたとき、眼前に広がる景色は果たしてどんなものになるのだろう。』


2.全日本柔道選手権9連覇・引退するまで203連勝・対外国人選手には生涯無敗(116勝無敗3引き分け)という大記録を残した山下泰裕先生は、「相手選手の国で自分がアウェイで、相手が絶好調で自分が絶不調でも、一本勝ちできるような柔道家になりたい」と、かって言われたそうです。

大野選手には山下先生に通じるものを感じます。

試合翌日27日の日経新聞の記事からも紹介します。

『この5年間を見守ってきた井上監督は言い切る。  「これまでに見てきた中で最強の柔道家だ」。  労苦が報われる、最高の褒め言葉だろう。』

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諦めた者が負け、諦めさせた者が勝ち残る

8月10日のブログで『落合博満 バッティングの理屈』(落合博満著 ダイヤモンド社)を取り上げました。  今回は同じく落合さんが書かれた『決断=実行』(ダイヤモンド社)です。

1.『「負けたくない」というプライドがもたらした優勝』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①私には現役時代の経験も含めて、プロ野球人としての信念がある。  長いペナントレースでは、勝つこともあれば負けることもある。  その勝負事を最後に左右するものは何かと問われれば、「諦めた者が負け、諦めさせた者が勝ち残る」ということだと思っている。

②だからこそ、長い戦いの中で他のチームに「中日には勝てないよ」と思わせれば、私の勝ちになる。  反対に、他球団に何ゲーム離されようが、マジックナンバーが出ようが、自分たちが諦めた時点で勝負は決着してしまうのだ。  (中略)

③このように、連覇を達成できた要因はいくつかあると思うのだが、私が考える一番の理由は、監督と選手の信頼関係とか、監督を男にしようとする選手の意地といった浪花節的なものではない。  本当に練習を積んできた選手が、自分たちほど練習をしていない選手には負けたくないというプライドだったのだと感じている。

④私が指揮した8年間、中日が春季キャンプで消化する練習量が、12球団で圧倒的に多かったことはご存じの方も多いだろう。  それに加えて、ペナントレース中には一日の休日も与えなかった。』


2.『自分の技術を向上させるためには』の項からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①私はベンチに座りながら、(阪急の)加藤秀司さんの打席を食い入るように見つめていた。  左打ちと右打ちという違いこそあれ、ボールのとらえ方、運び方など学ぶべき要素が多かったと思う。  こうした観察は、3度の三冠王を手にし、ベテランになってからも続けていた。  (中略)

②では、最近はどうなのだろう。  例えば、先輩のバットスイングを参考にしたければ、目で見るだけでなく、録画してスローやコマ送りで再生したり、ここというポイントで静止画にしたりすることもできる。  私たちの時代とは比べものにならないくらい技術向上のヒントになる資料は溢れているのに、それを生かしている若手はどれくらいいるのか。

③なぜ、そんなことをボヤくのかといえば、働き盛りの選手の観察眼、あるいは技術を考える際の感性が今ひとつ磨かれていないと感じるからだ。  そうなった理由のひとつに、練習の効率化が挙げられる。  (中略)

④たとえば、キャンプの練習では初めのランニングこそ全員で走るものの、キャッチボールになれば投手と野手は分かれ、あとは投内連係など投手を含めた守備練習しか全員が揃う場面はないのではないか。  それは投手も野手も効率的に練習できるメリットがある反面、投手が野手の練習を見る、野手が投手の練習を見るという機会を大幅に減らしているというデメリットもある。

⑤体を動かして技術を磨くのが練習なら、先輩やレギュラーの動きをしっかり観察し、自分が採り入れるべきものはないかと考えるのも大切な練習だ。  その時間があまりに少ないと、他の選手の練習から学ぶという感性が養われない。』

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