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MVPアーロン・ジャッジのコーチ

1.今年の大リーグのアメリカン・リーグのシーズンMVPにはリーグ新記録の62本塁打を放ったニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が選ばれました。  11月16日付け朝日新聞デジタルに『大谷翔平とMVP争うジャッジが覚醒した裏側 新記録を支えたコーチ』という記事が出ていました。   番号を付けて紹介します。  

『彼の打撃を支えた一人、個人コーチのリチャード・シェンクさんに飛躍の背景などについて聞いた。

①――ジャッジとの出会いは。

「彼の代理人であるデービッド・マトランガ氏が現役時代、自分に教わりに来ていた。  ジャッジが打撃で困っていた2016年11月、一緒にやってみないかと連絡をもらったんだ」

「最初は1日2回の練習を1週間ぐらいやった。  これだけのレベルの選手を教えるのは初めてだから、とても緊張したよ」

「彼が経験したことのないメニューをいくつか与えて、飽きさせないようにした。  彼はすごく注意深くて、一生懸命取り組んでいたのを覚えている」

②――指導するきっかけは。

「私はミズーリ州セントルイス近郊で飲食店を経営している。  ビリヤードテーブルが17台ある店で、始めて34年になる」

「息子が2人いてね。  高校や大学で野球をしていた。  でもうまく打てなかったので、私がインターネットを使ってスイングを勉強することにしたんだ」

「色々なサイトで研究したけど、しっくりこなかった。  そこで、当時大活躍していたバリー・ボンズ(主にジャイアンツ)をまねすることにした。  完全再現。  地下室にこもって、映像を止めながら何度も何度もボールを打ったよ」

③――難しそうですが、大リーグ歴代最多762本塁打のボンズ氏を選んだ理由は。

「間違いなく最高の打者だったし、自分と同じ左打ちだったから。  彼が打席で何をしているのか、動きを分解して研究した」

「そうしたらある理論に気づいてね。  今までにない力がスイングについた。  それを息子2人に教えたら、プロには届かなかったけど、成功と呼べる野球人生を送れたんだ」

④――今ではジャッジが理論を取り入れた。

「そう。  気に入ってくれたみたいで、2017年1月にまた1週間ほど一緒に練習して、3月には春季キャンプにも数日呼ばれた」

「シーズン開幕後は、打撃の修正が必要になると連絡がきた。  ニューヨークやデトロイト、シアトル……。  会いに行って施設を貸し切りにして練習した」

⑤――そして契約した。

「実は具体的な契約書というのはなくて、今もない(笑)。  でもこうやって関係が6年ほど続いている」

⑥――打撃で最も重視しているポイントは。

「一つ目の基本が始動するポイントだ。  ボンズを見ていると、彼はバットを捕手の方向にまず倒す。  すごく興味を持って試し続けてみると、遠心力によって足が回転し、自然とボールに向かう形になった」

「二つ目の基本が重心だ。  打席内で軸足(捕手よりの足)から投手に近い足へ体重移動するイメージがあるかもしれないが、打つ瞬間はまだ重心は軸足に乗ってないといけない」

「ジャッジは練習するうちにどんどん上達したよ」

⑦――今季、62本塁打を打つと思いましたか。

「一緒に練習した最初の年、彼は年間52本塁打を放って新人王をとった。  驚きはない。  でも、当時は打撃フォームが全く安定していなくて、安定すればもっと打てると信じていた。  正直、今季の打ち方を見てもまだ上達できるとみている」

⑧――今季は例年と違う調整だったとも聞いた。

「過去の5年間は、彼の調子が落ちてきたら呼ばれた。  10日間とか2週間ついて修正した」

「でも、今年は最初からスケジュールを割り当て、定期的に修正するようにした。  1年間調子が落ちないことを祈りながら。  そうしたらとてもいいシーズンを過ごした。  体の使い方やスイングがもっと理解できてきたと思う」

⑨――今季、苦しんだとみえた時期はあったか。

「シーズン中盤かな。  相手が警戒してストライクを投げず、四球は仕方がないと割り切ってボール球中心に攻めてきた」

「でも比較的ずっとよかった。  あるときは自分が直すところがないほど調子がよくて、行く必要あるかなと携帯でメッセージを送ったら 『来てくれ。  スケジュール通りやろう』 って言われた」

「新記録を達成してすごく誇らしかったし、うれしかったよ」

⑩――ジャッジは身長2メートルの選手です。  体が小さくても打てますか。

「私はバットスピードを上げるのではなく、ボールをとらえるまでの速さ、加速する方法を教えている。  誰でもそれなりに備わっているものだ。  毎回本塁打でなくとも、二塁打とかは打てるようになるはずだ」

「それにボンズの打ち方が理解できるようになるうちに、すごい打者、プホルス(カージナルス)やイチロー(主にマリナーズ)、大谷との共通点が見つかった。  構え方や打ち方は違っても、ボールをとらえる方法が共通していたんだ」

「日本の野手も大リーグで本塁打を量産できる。  私は王貞治さんの一本足打法の本を読んだし、軸足で打つように教えるのは一緒だ。  あとはバットをどう操るか。  そこを手助けすればきっと上達すると思う」

⑪――ジャッジの活躍で、反響は。

「おかげさまで、本当に毎日が忙しくなった。  電話が鳴りっぱなしだよ」』


2.この記事には、次のような組手技術の工夫・習得のヒントが隠されています。

㋑映像を見て研究する(上記②)

㋺動きをまねするモデルを決めたら、完全再現する(上記②)

㋩映像を止めながら、何度も何度も繰り返すうちに、何かの理論に気づく(上記③)


3.一番驚いたのは、野球は素人の飲食店経営者が、自分の子どものために創意工夫し、その理論がプロのスーパースターを指導するまでになったことです。

この記事を読んで、今のチーム城西の指導陣と選手自身双方の創意工夫に対する、熱意と努力が、まだまだ足りないなと感じました。

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油を塗った球

3月13日のブログで『澤井健一の遺産 太気拳で挑む』(高木康嗣著 福昌堂)を紹介しました。  今回も澤井先生のお弟子さんが書かれた『太気拳の教え』(岩間統正著 ゴマブックス)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①闘いの場においては、自分がいて相手がいるわけですから、二人の間には空間、いわゆる「間合い」というものが存在します。  それは一定の体積を持ったものではなく、いままさに相手が打とうとする瞬間に、自分が後ろに下がるべきか、それより早く一気に攻め込んでいくかという舞台になる、「一瞬の空間」です。

②その間合いをどう操作するかを、私は「打気」と呼んでいますが、闘いの場においては、これが重要な要素になってきます。

③このとき、太気拳では自分の身体を「油を塗った球(たま)」にすると表現しています。  相手がこちらを捕まえようとしても、打とうとしても、つるりと滑って捕まえられないようにする動きです。  これができれば、打撃戦になっても、相手はこちらの体を捕まえることができません。

④たとえば、自分が負ける場合のパターンをいくつか想定してみましょう。  (中略)  そうした状態を避けるためには、相手の攻撃を手で払ったり、受け流したり、足でブロックしたり、ステップバックして受けたり、間合いを詰めて攻撃力をそいだりする方法があります。

⑤太気拳では、「自分の体の中心に、直接相手の力を届かせないようにする」ことをたいせつにしています。  そのために「這い(摩擦歩)」という特殊な練習方法を用いて、つねに一番有利な位置取りをするためのフットワークと、それに伴って柔軟に回転する体の使い方を学びます。

⑥相手の攻撃をがっちりと食い止めるのは格好よく見えますが、それでは自分の体で相手の力を受けてしまうことになります。  相手の攻撃によって自分にかかる圧力を、自分の中心から、手、膝、腰を連動してそらし、自分の中心に圧力がかからないようにすることが要点です。』

上記③の「自分の身体を油を塗った球にする」ということでは、かっての名選手・堺貞夫選手を思い出します。  身長157cm、体重60kgの小兵ですが、対戦した城西メンバーのほとんどが敗れ、勝ったのは大賀雅裕(第1回ウェイト制大会軽量級チャンピオン)だけでした。

大型選手の少ないチーム城西において、「自分の身体を油を塗った球にする」というのは、技術面における最大のテーマだと思います。


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精度の高い動きと激しさ

(パント)マイムアーティストのJIDAIさんが書かれた『「動き」の天才になる!』(BABジャパン)を読みました。  

1.「激しく動けるように」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①体の情報量、神経回路の精度・密度を上げ、精度の高い動きができるようになることは大切なのですけれど、この項のタイトルにある「激しさ」にはちょっと結びつかないですよね?  激しさというのは、勢いやパワー、スピードも含めて、ただ思い切りといった動きを想定しています。  (中略)

②ですから、精度の高い動きと激しさという相反するようなことを克服しないと、スポーツや踊り、格闘技など実践的な場面では困るでしょうし、踊りなど身体表現でも、楽器演奏でもときに重要な要素ですよね?  (中略)

③体の精度を上げる練習はどうしても静かでゆっくりな動作になりがちです。  その限られた枠(動作)の中では、良い動きを実現できても、パワーやスピードを上げたとき、ついこれまでの身体の使い方・神経回路に戻ってしまうのです。

④これはどういうことかといいますと、静かでゆっくりな動作では頭、脳を働かせられるんですね。  逆から見ますと、脳を使うことでこれまでの神経回路を使わないようにして、新しい神経回路を作ろうとしているわけです。

⑤これである程度、回路の変更ができたとしても、それはゆっくりな動作のときの回路なんです。  パワーやスピードのある動作では、それとは異なる神経回路を作る必要があるのです。

⑥前者のような考えながら行う動作は大脳の領域ですが、後者のパワーやスピードは小脳の領域になるようです。  それは、いわゆる脳からの指令が薄くて済む状態なんです。

⑦つまるところ、癖や習慣は小脳の領域の問題であるため、そこを書き換えないと、いざというときには結局、今まで通りという残念な身体の使い方になってしまうわけです。』


2.続く「繊細さと荒っぽさの併存」の項からも紹介します。

『①そこで、私が大事にしていることの一つに、「静かでゆっくりな動作の練習時に、これは実はスピードがあって力強い動きをしているんだ、という意識を持つこと」があります。  これは、ある意味「スピードがあって力強い動きを、スローモーションで練習する」ともいえます。

②これは何かに似ていませんか?  そう!  何だか太極拳みたいですよね。  この意味で、太極拳は相当に高度な練習体系だと思っています。

③(今度は)この意識の持ち方での練習が、ただのイメージ・妄想になってしまわないように、先ほどのスローモーションとは逆に、じっさいに速く、スピードを上げて動き、そのときに、どれだけゆっくりな動きとして感じられるか?を大事にするのです。

④動きが速いからといって意識や感覚が雑になってはいけないということです。  むしろ、より繊細にシビアにという気持ちが必要だったりするのです。』

②で「太極拳」と書かれていますが、同じ中国拳法の「意拳」の練習体系もまったく一緒です。

また極真空手においても、新しい技術を習得する場合には、まず「ゆっくりと、正確に」が大切です。  その先には、試合で使える「スピードがあって力強い動きを、正確に」があることはいうまでもありません。

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