FC2ブログ

| PAGE-SELECT | NEXT

学習棄却

『失敗の本質』(野中郁次郎他著 中公文庫)を読みました。  『三章 失敗の教訓』の中の「組織学習」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①組織は学習しながら進化していく。  つまり、組織はその成果を通じて既存の知識の強化、修正あるいは新知識の獲得を行っていく。  組織学習とは、組織の行為とその結果との間の因果関係についての知識を、強化あるいは変化させる組織内部のプロセスである、と定義される。

②しかしながら、組織は、個人の頭脳に匹敵する頭脳を持たないし、またそれ自体で学習行動を起こすこともできない。  学習するのは、あくまで一人一人の組織の成員である。  したがって組織学習は、組織の成員一人一人によって行われる学習が互いに共有され、評価され、統合されるプロセスを経て初めて起こるのである。  (中略)

③さて、日本軍は既存の知識を強化させるという面ではまことによく学習したといえる。  

④(陸軍)・・・実際、帝国陸軍の白兵銃剣主義の成果はけっして悪いものではなかった。  満州事変、日中戦争などで対決した近代的陸軍とはいえない中国軍に対しては、個々の戦闘では十分に機能したのである。  (中略)  満州・中国から香港、シンガポールへと続いた白兵銃剣主義の成功は、火力に頼らずにやれたという自信とあいまって、ますます強化されたのは、当然のことであった。  (中略)

⑤(海軍)・・・成果という点からいえば、帝国海軍は自らの手による航空攻撃(真珠湾攻撃)で米戦艦を倒し、大艦巨砲主義から転換できるはずであった。  (中略)  真珠湾攻撃後の連合艦隊では、航空優先の策は具体化されなかったし、その後も戦艦部隊中心の志向がいぜんとして根強かった。

⑥いずれにせよ、帝国陸海軍は戦略、資源、組織特性、成果の一貫性を通じて、それぞれの戦略原型を強化したという点では、徹底した組織学習を行ったといえるだろう。

⑦しかしながら、組織学習には、組織の行為と成果との間にギャップがあった場合には、既存の知識を疑い、新たな知識を獲得する側面があることを忘れてはならない。  その場合の基本は、組織として既存の知識を捨てる学習棄却、つまり自己否定的学習ができるかどうかということなのである。

⑧(陸軍)・・・そういう点では、帝国陸海軍は、ガダルカナル戦以降火力重視の必要性を認めながらも銃剣突撃主義による白兵戦術から脱却できなかった。

⑨(海軍)・・・また、帝国海軍もミッドウェーの敗戦以降空母の増強を図ったが、大艦巨砲主義を具現化した戦艦「大和」・「武蔵」の46センチ砲の威力が必ず発揮されるときが来ると、最後まで信じていたのである。』

極真空手の全日本大会は、今年で52回目を迎えます。  その間、技術は常に進歩し続けてきました。  特に、4年前の第48回大会以降、ルール改定が行われたこともあって、試合技術が猛スピードで進化しています。

その中で重要なのは、⑦にある「学習棄却」だと思います。  今までの技術のうち欠点が見え始めたものは、改良・修正・破棄・交換しなければなりません。  そこで最も大切なことは、チーム城西のモットーである「創意工夫」です。

TOP↑

強い人ほどスタイルを持たない

1.『運を加速させる習慣』(矢澤亜希子著 日本実業出版)を読みました。  矢澤さんは、世界中で3億人を超える競技人口がいるといわれるバックギャモン(チェス、ドミノ、トランプと並ぶ世界4大ゲームのひとつ)の世界チャンピオンです。  「強い人ほどスタイルを持たない」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①(前略)  質問のなかには、少し返答が難しいものもあります。  「あなたのプレースタイルは何ですか?」とか「他のプレーヤーの特徴は?」という質問も、そのひとつです。  なぜ返答が難しいかというと、強いプレーヤーほど、プレースタイルに特徴がなくなるからです。  (中略)

②対峙する相手とまったく同じ条件のもとに勝敗を争うとき、プレーに何らかのスタイル(特徴)ができるということは、どこかが崩れていることを意味します。  フラットな状態を崩すことによってしか、スタイルを作ることはできないからです。

③たとえば、野球では守備側におおよその定位置が決まっているものですが、一部の強打者に対しては例外的な守備陣形を敷くことがあります。  これがここで言うスタイルです。  将棋でも「受け将棋」や「攻め将棋」といった表現がありますが、それもスタイルを表わすと考えていいでしょう。

④いずれにせよ、スタイルができるということは、長所とともに、その裏返しとしての短所も生まれるということです。

⑤したがって、強い人ほどスタイルを作りません。  どんなスタイルにも自在に対応できるからこそ、状況に応じて自分の隙を最小限に抑えながら相手の隙を突く。

⑥将棋における最強の陣形は、まだ1手も指していない対局開始時の布陣だといわれます。  柔道や剣道で最も危険なのは、攻撃しようとする動作に移った一瞬です。  勝因と敗因は、まさに表裏の関係にあるわけです。』


2.本書の「勝利の方程式は作らない」の項からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①バックギャモンでは、トッププレーヤーほどプレースタイルに偏りがないというのは、自分のスタイルを作らないゆえです。  そうすることで、どんな局面にも対応できるようになります。  しかし、そういった技術を持ち合わせていないプレーヤーは、自分のスタイルを持って勝負をしていきます。

②トッププレーヤーになるためには、スタイルを少しずつ増やす必要があるのです。  自分のスタイルという武器が多ければ多いほど、局面、局面でさまざまな武器を出し入れすることができます。

③自分のスタイルというのは、一種の個性です。  個性が確立するすると考え方や言動に一本の筋が通って、その人の強みになる。  しかし、強みとは、常に弱点に転換するおそれを含んでいるものです。  (中略)

④スタイルを持たない人は、どうにもつかみどころがありません。  でも、そのつかみどころのなさが強さなのです。  どういう局面にも柔軟に対応できるから、特定の「勝ちパターン」を作らないというわけです。  (中略)

⑤実際、バックギャモンの定跡も少しづつ変わっていて、10年前の定跡のなかには、すでに定跡と認識されなくなっているものもあります。  かっての正解に、ほころびが生じたわけです。  そうした変化に対応できるのは、ニュートラルで、融通無碍(すうづうむげ)で、特徴のない、いわば「水」のようなプレーヤーなのです。』


3.4月5日のTBS『情熱大陸』で、リオデジャネイロ五輪・女子レスリング63㎏級・金メダリストの川井梨沙子選手も、最大の武器・高速タックルへの入り方について、次のように言われていました。

『(相手の両肩を押さえている左右の手のひらで)相手の体重を感じるのは結構得意なんで、「来たな」と思ったら、はたいたりとか。  これっていう決まりがあるわけでもなくて、相手のその時次第で、何をやるかが変わる。』

TOP↑

ピーカーブースタイル

今回も『真相』(マイク・タイソン著 ダイヤモンド社)を取り上げます。

前回のブログで、『カス(ダマト)の教える「ピーカーブー(のぞき見)スタイル」』と書きました。  それについて、「独特の練習スタイル」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①ジムでの(トレーナーの)カスダマトは独特の変則的なテクニックを教えていた。  彼の教えるスタイルを笑うやつもいたが、それはちゃんと理解していなかったからだ。

②その戦法は防御に適した「ピーカーブー(Peek-a-Boo・・・のぞき見)スタイル」と呼ばれていた。  顔の前を両手でがっちりガードする。  亀になったみたいに。  両手、両肘を体といっしょに動かし、前進しながら相手のパンチをブロックして、カウンターを取る。

③カスの攻撃は固い防御から始まった。  ボクサーにとっては打たれないことが何より大事と考えていた。  パンチをかわす(スリップ)ことを学ぶため、カスはスリップバッグを使った。  砂を詰めた麻袋に縄を巻きつけたものだ。  頭を動かし上体を傾けて、バッグをかわさなくちゃならない。  かなりうまくやれるようになった。  (中略)

④ボクサーが相手の右をもらってしまうのは、動きが止まって手の位置が下がっているからだと、カスは言う。  そこで体を上下に動かすだけじゃなく、Uの字を描くように動かすウィービングを教え込んだ。  たえずこの動きをやらされた。

⑤左・右、右・左と体を振りながら前に出る。  パンチを打つにあたっては、ふたつのパンチの音がひとつに聞こえるようになったときに最大の効果を発揮するというのが、カスの持論だった。  その音に近づくほど、連打がKOにつながる可能性が高くなる。

⑥カスは防御に重きを置いたが、ディフェンシブなスタイルが退屈なことも知っていた。  「プロボクシングはエンターテインメントなんだ。  成功するには試合に勝つだけでなく、観る人がわくわくするような勝ち方をしなければならない。  悪意を持ってパンチをたたき込め」と、いつもカスは言っていた。

⑦俺には、相手が打つか逃げるしかなくなるような、攻撃的なカウンターパンチャーになってほしいと望んだ。

⑧カスはいつも相手の心理を巧みに操ろうとした。  パンチをかわし続ければ、相手は焦って自信を失う。  そして最後に撃沈する。

⑨パンチをかわして、カウンターを打て。  動くと同時に打て。  圧力をかけろ。  短いパンチは長いパンチより強い、とカスは信じていた。

⑩強いパンチは体に関係なく、気持ちから生まれるものと考えていた。  気持ちをコントロールしろ。』

③の「打たれないことが何より大事」、⑥の「ディフェンシブなスタイルは退屈」と「観る人がわくわくするような勝ち方をしなければならない」は、私の持論でもあります。 

TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT