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強くなりすぎれば必ず折れる

前回は『栗山ノート2』を紹介しましたが、今回は『栗山ノート』(栗山英樹著 光文社)です。  「強くなりすぎれば必ず折れる」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。  

『①「強くなりすぎれば必ず折れる」  中国の武経七書(ぶけいしちしょ)のひとつ、『六韜(りくとう)』にある言葉です。

②「強さ」は「脆(もろ)さ」と背中合わせです。  たとえば、ガラスはある一定の強度を持っていますが、それを超える力が加わると割れてしまう。  他方、スポンジやゴムは強度こそ低いものの、押しつぶされても形を取り戻す。

③気持ちを張り詰めてばかりいると、どこかで折れてしまうものです。  そして、折れたあとの再生はとても難しい。  

④組織に当てはめて考えれば、過度の緊張状態が解けたあとのリバウンドは激しい。  「強くなりすぎれば必ず折れる」という言葉は、「折れる前に緩めておくべきだ」ということかもしれません。  (中略)

⑤(日本ハム・ファイターズの監督時代、2019年シーズン5月の)8試合負けなしの間も、「このまま不敗で行くぞ」といったことは選手に言いませんでした。  気持ちの揺れ幅をできるだけ少なくすることが、安定した戦いにつながるからです。

⑥8試合負けなしは評価できますが、負けた翌日の試合に勝ったことが、実はチームにとって大切なことでした。  不敗記録が途切れても、選手たちの緊張の糸が途切れなかったからです。

⑦緊張状態が続いても自分は関係ない、力を発揮できる、というタイプもいるでしょう。   重圧をものともしない逞しさを評価しつつも、私は「弱さ」に着目します。

⑧弱いからこそできることは、実はたくさんあります。  弱いからこそ、人に優しくなれる。  人の痛みが分かる。   強くなるための努力を怠らない。

⑨強いもの、硬いものは、弱いもの、柔らかいものをつねに上回るか。  決してそんなことはないでしょう。   しゃなかさが強さを、柔らかさが硬さを凌駕することもあります。

⑩心の持ち方にしても、「強さ」は必ずしもオールマイティーではないでしょう。  私自身の経験に照らしてみれば、心が強いと自覚している人が窮地に陥ると、焦りの感情にとらわれる気がします。  強いはずの自分が弱気になっていることを、うまく消化しきれないのでしょう。

⑪自分は強くないと思っている人は違います。  「もともと強くないのだから、気持ちが揺れるのは当たり前だ。  それが普通だ」といった割り切りができる。 

⑫自分の弱さを認めている人のほうが、実はドッシリとした態度で事に当たることができる。  本当に心が強い人は、絶対に強くは見せません。  真の強さと「強がり」の境界線を引くことができる。』

台風などの災害時に、一見強そうに見える松の木が倒れ、弱そうに見える柳の木が何事もなかったように立っている、ということがあります。  本当の強さとは柔らかさ、ある意味の弱さなのかも知れません。

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勇気

NHK・Eテレの『100分de名著』を毎週観ています。  今月取り上げられているのは古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが書いた『ニコマコス倫理学』です。  第3回のテーマは『「徳」と「悪徳」』でした。  今月の『NHKテキスト』(山本芳久著 NHK出版)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①人間の性格や人柄は習慣の積み重ねから生じてくるというのがアリストテレスの見解でした。  どのような人柄を形成すれば全体として幸福な人生を送ることができるかを考察する学問が「倫理学」であり、その中心にあるのが「徳」というものなのです。  徳のなかでも極めて重要なのが「賢慮」「勇気」「節制」「正義」の四つです。  (中略)

②アリストテレスによれば、徳というものは、生まれながらに備わっているものではありません。  というのも、生まれながらに備わっている性質というものは、固定的な在り方をしているものであり、習慣づけることによって変化させていくことができないからです。  (中略)

③アリストテレスは、徳に関する話として、「正しいことを行うことによって、われわれは正しい人になり、節制あることを行うことによって節制ある人になり、また勇気あることを行うことによって、勇気ある人になる」と述べています。  (中略)

④アリストテレスは、「徳」を身につけることは、様々な「技術」を身につけることと同じだと述べているのです。  (中略)

⑤勇気についても同様です。  戦場において勇敢な行動をすることに困難を感じ、常に逃げ出してしまうような人が、あるとき踏みとどまって戦うことができた。  すると、「これまで勇気を奮って戦うことはとても困難なことだと思っていたが、そうでもなかった」と気がつく。

⑥むしろそれまでは、いくら逃げても敵が迫ってくるような気がしてずっと怖かった。  でも堂々と立ち向かってみると、敵のほうが逃げていって怖くなかった。  「なんだ、こっちのほうが楽じゃないか」。  このようにして、勇敢な選択肢を素早く選び取ることができるようになり、その在り方に喜びを感じるようにもなる。

⑦このように、技術と徳は、身につける仕方についても、また身につけたときに素早さや喜びがともなうという点においても、大いに共通点があるとアリストテレスは述べています。  (中略)

⑧②で「徳は生まれつき備わっているものではない」という話をしました。  だからと言って私たちは自らの性格を自由自在に築き上げていくことができるかというと、必ずしもそうではありません。

⑨なぜならば、私たちが「自分の性格を何とかしたい」などと思い始めたときには、すでに相当な習慣づけがされているからです。  もっと勇敢になりたいと思う人は、つい尻込みすることが身についてしまっているからこそそう思うわけですよね。

⑩つまり、私たちはニュートラルな状態から出発できるわけではなく、気づいたときには「徳」と「悪徳」の組み合わせによる、ある種の傾向を身につけているわけです。

⑪アリストテレスが言ってるのは、その身につけてしまったものを引き受けたうえで、「いま、ここ」でどのように振る舞うかが大事だということです。

⑫それによって、少しづつではあるけれど決定的な仕方で、自らの人生に方向づけを与え直していく。  より現実的に、それぞれの人が直面している状況のなかで何ができるかを考えさせてくれる、柔軟性の高い捉え方だと言えます。』

「自分の今の在り方に気づくこと」→「気づいたら、なるべく早めに習慣化すること」が大事なんですね。

「勇気」を身につけるには、極真空手は最適です。  稽古・審査会・試合を通じて、「勇気ある自分」が習慣化されるからです。

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結果を出す

1.2019年1月9日のブログで、『最強のポジティブチーム』(ジョン・ゴードン著 日経BP社)を取り上げました。 抜粋して、再度紹介します。

『①2001年からバージニア大学の男子テニス部の監督を務めたブライアン・ボーランドによると、準々決勝や準決勝に何度も勝ち進み、決勝まで残ったことも数回あった。  それにもかかわらず、優勝はできなかった。  ところが2013年にすべて変わり、その後は5回の全国大会のうち実に4回優勝している。

②私はブライアンに何があったのかと尋ねた。  「私が変わり、私たちが変わった。   それまでの私はただ厳しく、結果ばかりを気にしていた。  選手たちもそれを感じ取っていた。  でも2013年にカルチャーを中心に据えて、それまでの結果重視の方針からカルチャーやプロセスを大切にするようになった。  つまり、それまでは優勝したいと考えている個人の集まりだったが、偉大なチームになろうと考えるようになったんだ」  (中略)

③木になる果実にばかり気を取られているチームが多すぎる。  彼らが意識しているのは、結果、数字、株価、テストの点数、利益、そして勝敗だ。  果実ばかりに目が行って、根っこの部分のカルチャー、人、人間関係、プロセスを見ていない。』


2.4月5日の日経新聞夕刊に、武野顕吾さんの『自己変革の伴走者』という連載が載っていました。  武野さんは臨床心理学を日本のスポーツ分野に応用したパイオニアだそうです。  『「結果を出す」 「普段通り」といったアプローチには懐疑的だ。』という項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①どんな分野の一流の方でも、ここぞというときにうまくいかない、もうひとつ殻を破れない、という悩みを抱えている場合があります。  アピールしなければ、結果を残さなければ。  周囲の評価に気をとられてしまうと、目の前の勝負に集中できなくなり、自分の能力が発揮できなくなってしまいます。

②結果は大事です。  ただ逆説的ですが、結果を出すためには、結果を出すという意識を一旦脇に置くことが重要です。  結果という狭い針の穴に自分という糸をうまく通そうとすると、縮こまってしまいます。  気付いたら通っていた、というのが本当に勝負に集中していた時の心理状態です。  スポーツ中継でも聞かれる「結果を出す」というフレーズが、かえって我々の心を縛ることもあるのです。

③僕は「緊張しないように」というアドバイスより、目の前の勝負に没頭できるかを重要視します。  「普段通り」 「練習通り」も同じです。    世界一を決める舞台と普段の練習とでは、緊張状態が違って当たり前です。』


3.①極真空手において「結果を出す」、つまり「全日本チャンピオンになる」 「世界チャンピオンになる」、という高い志を持つことはもちろん大切です。  また、その結果を出せるような稽古の仕方を研究することも必要です。 でも、私はまず「楽しんで稽古する」、その先に「結果が付いてくる」のだと思っています。

②1.で紹介したブログの最後に、以下のように書きました。

『私が理想とするチーム城西のカルチャーは次の通りです。

「どこよりも創意工夫する、どこよりも練習する、どこよりもそれらを楽しんでやる」

そして、本書に書いてあるように、「カルチャーに命を吹き込み、カルチャーをつくっていくのはチーム全員の使命」です。

今年もチーム城西一丸となって稽古していきましょう。』


4.孔子も『論語』の中で

「これを知る者はこれを好む者に如かず(知識がある人も、好きでやっている人にはかなわない)。   これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(好きでやっている人も、楽しんでやっている人にはかなわない)。」

と言っています。

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