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勇気

NHK・Eテレの『100分de名著』を毎週観ています。  今月取り上げられているのは古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが書いた『ニコマコス倫理学』です。  第3回のテーマは『「徳」と「悪徳」』でした。  今月の『NHKテキスト』(山本芳久著 NHK出版)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①人間の性格や人柄は習慣の積み重ねから生じてくるというのがアリストテレスの見解でした。  どのような人柄を形成すれば全体として幸福な人生を送ることができるかを考察する学問が「倫理学」であり、その中心にあるのが「徳」というものなのです。  徳のなかでも極めて重要なのが「賢慮」「勇気」「節制」「正義」の四つです。  (中略)

②アリストテレスによれば、徳というものは、生まれながらに備わっているものではありません。  というのも、生まれながらに備わっている性質というものは、固定的な在り方をしているものであり、習慣づけることによって変化させていくことができないからです。  (中略)

③アリストテレスは、徳に関する話として、「正しいことを行うことによって、われわれは正しい人になり、節制あることを行うことによって節制ある人になり、また勇気あることを行うことによって、勇気ある人になる」と述べています。  (中略)

④アリストテレスは、「徳」を身につけることは、様々な「技術」を身につけることと同じだと述べているのです。  (中略)

⑤勇気についても同様です。  戦場において勇敢な行動をすることに困難を感じ、常に逃げ出してしまうような人が、あるとき踏みとどまって戦うことができた。  すると、「これまで勇気を奮って戦うことはとても困難なことだと思っていたが、そうでもなかった」と気がつく。

⑥むしろそれまでは、いくら逃げても敵が迫ってくるような気がしてずっと怖かった。  でも堂々と立ち向かってみると、敵のほうが逃げていって怖くなかった。  「なんだ、こっちのほうが楽じゃないか」。  このようにして、勇敢な選択肢を素早く選び取ることができるようになり、その在り方に喜びを感じるようにもなる。

⑦このように、技術と徳は、身につける仕方についても、また身につけたときに素早さや喜びがともなうという点においても、大いに共通点があるとアリストテレスは述べています。  (中略)

⑧②で「徳は生まれつき備わっているものではない」という話をしました。  だからと言って私たちは自らの性格を自由自在に築き上げていくことができるかというと、必ずしもそうではありません。

⑨なぜならば、私たちが「自分の性格を何とかしたい」などと思い始めたときには、すでに相当な習慣づけがされているからです。  もっと勇敢になりたいと思う人は、つい尻込みすることが身についてしまっているからこそそう思うわけですよね。

⑩つまり、私たちはニュートラルな状態から出発できるわけではなく、気づいたときには「徳」と「悪徳」の組み合わせによる、ある種の傾向を身につけているわけです。

⑪アリストテレスが言ってるのは、その身につけてしまったものを引き受けたうえで、「いま、ここ」でどのように振る舞うかが大事だということです。

⑫それによって、少しづつではあるけれど決定的な仕方で、自らの人生に方向づけを与え直していく。  より現実的に、それぞれの人が直面している状況のなかで何ができるかを考えさせてくれる、柔軟性の高い捉え方だと言えます。』

「自分の今の在り方に気づくこと」→「気づいたら、なるべく早めに習慣化すること」が大事なんですね。

「勇気」を身につけるには、極真空手は最適です。  稽古・審査会・試合を通じて、「勇気ある自分」が習慣化されるからです。

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結果を出す

1.2019年1月9日のブログで、『最強のポジティブチーム』(ジョン・ゴードン著 日経BP社)を取り上げました。 抜粋して、再度紹介します。

『①2001年からバージニア大学の男子テニス部の監督を務めたブライアン・ボーランドによると、準々決勝や準決勝に何度も勝ち進み、決勝まで残ったことも数回あった。  それにもかかわらず、優勝はできなかった。  ところが2013年にすべて変わり、その後は5回の全国大会のうち実に4回優勝している。

②私はブライアンに何があったのかと尋ねた。  「私が変わり、私たちが変わった。   それまでの私はただ厳しく、結果ばかりを気にしていた。  選手たちもそれを感じ取っていた。  でも2013年にカルチャーを中心に据えて、それまでの結果重視の方針からカルチャーやプロセスを大切にするようになった。  つまり、それまでは優勝したいと考えている個人の集まりだったが、偉大なチームになろうと考えるようになったんだ」  (中略)

③木になる果実にばかり気を取られているチームが多すぎる。  彼らが意識しているのは、結果、数字、株価、テストの点数、利益、そして勝敗だ。  果実ばかりに目が行って、根っこの部分のカルチャー、人、人間関係、プロセスを見ていない。』


2.4月5日の日経新聞夕刊に、武野顕吾さんの『自己変革の伴走者』という連載が載っていました。  武野さんは臨床心理学を日本のスポーツ分野に応用したパイオニアだそうです。  『「結果を出す」 「普段通り」といったアプローチには懐疑的だ。』という項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①どんな分野の一流の方でも、ここぞというときにうまくいかない、もうひとつ殻を破れない、という悩みを抱えている場合があります。  アピールしなければ、結果を残さなければ。  周囲の評価に気をとられてしまうと、目の前の勝負に集中できなくなり、自分の能力が発揮できなくなってしまいます。

②結果は大事です。  ただ逆説的ですが、結果を出すためには、結果を出すという意識を一旦脇に置くことが重要です。  結果という狭い針の穴に自分という糸をうまく通そうとすると、縮こまってしまいます。  気付いたら通っていた、というのが本当に勝負に集中していた時の心理状態です。  スポーツ中継でも聞かれる「結果を出す」というフレーズが、かえって我々の心を縛ることもあるのです。

③僕は「緊張しないように」というアドバイスより、目の前の勝負に没頭できるかを重要視します。  「普段通り」 「練習通り」も同じです。    世界一を決める舞台と普段の練習とでは、緊張状態が違って当たり前です。』


3.①極真空手において「結果を出す」、つまり「全日本チャンピオンになる」 「世界チャンピオンになる」、という高い志を持つことはもちろん大切です。  また、その結果を出せるような稽古の仕方を研究することも必要です。 でも、私はまず「楽しんで稽古する」、その先に「結果が付いてくる」のだと思っています。

②1.で紹介したブログの最後に、以下のように書きました。

『私が理想とするチーム城西のカルチャーは次の通りです。

「どこよりも創意工夫する、どこよりも練習する、どこよりもそれらを楽しんでやる」

そして、本書に書いてあるように、「カルチャーに命を吹き込み、カルチャーをつくっていくのはチーム全員の使命」です。

今年もチーム城西一丸となって稽古していきましょう。』


4.孔子も『論語』の中で

「これを知る者はこれを好む者に如かず(知識がある人も、好きでやっている人にはかなわない)。   これを好む者はこれを楽しむ者に如かず(好きでやっている人も、楽しんでやっている人にはかなわない)。」

と言っています。

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平時の指揮官 有事の指揮官

1.「東大安田講堂事件(1969年)」 「連合赤軍あさま山荘事件(1972年)」で警備幕僚長として危機管理にたずさわった佐々淳行さんが書かれた『平時の指揮官 有事の指揮官』(文春文庫)を読みました。  『「動揺」を表に出してはならぬ』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①1967年に始まった第二次日米安保条約改定阻止闘争の大波は、1970年の同条約改定の日まで990日間続き、警視庁機動隊員延べ1万2千人が重軽傷を負い、大動乱の時代となった。  (中略)

②なにか大きな事件、事故が起きると、部下は全員指揮官の顔を見つめる。  そんなとき、指揮官は自分の表情に恐れ、不安、躊躇、狼狽など、内心の動揺を表さないよう、自分の気持ちをコントロールしなくてはいけない。

③ある夜、警備第一課長室にあって全般指揮にあたっていたとき、アメリカ大使館に対する過激派のゲリラ攻撃が突発し、傍受していた警備無線の通話がかなり錯綜し、興奮状態に陥った。  当時の警備第一課は大課制で、大部屋には200人近い課員がひしめいていた。 

④「顔を見せたほうがいいな」  私はとっさにそう考え、個室を出て隣接の大部屋に入ってゆき、真ん中の警備実施管理官席に座った。  電話のベルは室内のいたるところで鳴り響き、皆は大音声を張りあげて怒鳴り合い、大部屋は興奮の渦だった。

⑤不思議なことに私が大部屋に入ってゆくと、私に気づいた課員の誰彼が「あっ、課長が来たぞ」と叫び、私が真ん中のデスクに、大勢の課員たちのほうを向いてドッカリと腰をおろした途端に、喧騒の渦は、荒れ狂う海に油を撒いたかのように、スウッと鎮まって静かになったのである。 

⑥みんな私を見つめている。  別に私に解決の妙案があるわけではない。  ただ指揮官である私のしたことは、平気な顔をして入っていって、ド真ん中の席に座ってみせただけのことである。

⑦騒いでも起きてしまったことはしょうがない。  どうってことない。  事態の進展を見ながら、ベストと思う手を打っていく以外どうしようもない。  そういう開き直った冷静さが私の心にあり、それが実に素直に、課員全体に伝わっただけのことであった。  (中略) 

⑧顔の表情の統制は、現場指揮官が身につけるべき大切な技能なのである。』

⑧の「顔の表情の統制」は、極真の選手が身につけるべき大切な技能でもあります。  試合の優勢・劣勢を問わず、淡々と組手を続けることが大切です。  ポーカーフェイスを保ち続ければ、上がったり下がったりしがちな感情の波を鎮めることが可能になります。


2.以下は、久しぶりに本郷孔洋先生のメルマガからの引用です。

子・・・「父ちゃん、酔っ払うってどういうことなの?」
 
父・・・「ここにグラスが二つあるだろろう。  これが四つに見え出したら、酔っ払ったってことだ。」
 
子・・・「父ちゃん、そこにグラスは一つしかないよ」                    (ジョーク集より)

城西の指導員の皆さん、アルコールの飲み過ぎには気を付けましょう 笑

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