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心のアラーム

『「心の力」の鍛え方』(大野裕著 岩崎学術出版社)を読みました。  副題は「精神科医が武道から学んだ人生のコツ」です。  著者は慶應義塾大学医学部在学中に体育会空手部に所属していたそうです。

「心の不調が持つ大切な意味」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①精神的な不調というと、自分には関係ないと考える人が少なくありません。  精神的に弱い人間や甘えの強い人間がそのような状態になると考えている人もいます。  しかし、必ずしもそうした人ばかりではなく、自分はストレスに強いと考えている人も、些細なきっかけで精神的な不調を体験することがあります。

②人間というのは精密機械以上に繊細な存在です。  私は「心の当たり所が悪い」と表現していますが、苦手なストレスに出会うと、それが些細なものでも精神的なバランスが大きく崩れることがあります。  ですから、多くの人が精神的な不調を体験することになるのです。  (中略)

③このように昔から精神的な不調を体験する人がいて、今でも多くの人が不調を体験しているということは大きな問題です。  しかし、その一方で、それだけ多くの人が精神的な不調を体験するということは、不調それ自体に大切な意味があるからです。

④それは、心のアラーム(警報器)として自分を守る役割です。  精神的な不調を体験するのは、困った問題、つまり自分にとって苦手なストレスが存在しているときです。  

⑤逆の見方をすると、ストレスを感じて精神的な不調を体験するときには、困った問題がどこかに存在している可能性があります。  そのことを知らせるという意味で、精神的な不調は、私たちの心のアラームの役割を果たしているのです。

⑥そのアラームが鳴っているときに、「自分は簡単に弱音を吐くような人間ではない」と考えたり、「ストレスに負けないで、もっと頑張らないと」と考えたりするのは、せっかく鳴っているアラームを切ってしまうことになります。  その結果、ますます問題が大きくなって、取り返しがつかなくなってしまうことにもなりかねません。

⑦そうした事態を避けるためには、アラームが鳴っているときに立ち止まる勇気を持つことです。  そのようにして、問題にきちんと向き合うのです。  そうすれば、自分のなかに隠れている想像以上の力を生かすこともできるようになります。

⑧そのことを伝えるために多くの武道書が書かれています。  そして、現代でも武道の鍛錬をすることでそうした心の力を身につけられるようになります。』

昨年出版した『武道気功』という本の中で、私自身が過去に体験した精神的な不調について書きました。  

「風邪は万病の元」といいますが、風邪は体からのアラームとして自分を守る役割を持っていると思います。

同様に、精神的な不調は、私たちの心のアラームの役割を持っているんですね。

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ポジティブシンキングは絶対か?

『アスリートのメンタルは強いのか?』(荒井弘和編 晶文社)を読みました。  「ポジティブシンキングは絶対か?」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①スポーツの現場では、コーチによって、ポジティブシンキング(積極的思考法)が推奨されることがあります。  ポジティブシンキングを一言でいえば、前向きな思考ということになるでしょうか。  (中略)

②わが国のアスリートを対象とした研究では(有冨公教・外山美樹、2017)、あらゆるアスリートにおいてポジティブシンキングが万能ではないと示されています。  不安な気持ちになっているのに、それを押し殺そうとして、無理矢理ポジティブになろうとすることは、機能的とはいえません。

③それでは、ポジティブシンキングではない思考法には、どのようなものがあるのでしょうか。  その代表例として、最悪の結果を予想して課題に対して不安な気持ちになるものの、その不安をモチベーションに変えて目標達成につなげるという「防衛的悲観主義」という思考法があります。

④外山(2019)の解説を参照すると、「あんなことが起きるかもしれない、こんなことが起きるかもしれない」と、予想される最悪の事態を鮮明に思い浮かべることによって、対策を練り、用意周到に準備することで、「何が起きても大丈夫」と思え、積極的な態度で本番を迎えることができるのです。

⑤ポジティブシンキングと対比させて表現するならば、物事を悪い方に考えることで成功する思考法、もしくは、ネガティブシンキングの価値を活かす方法といえます。  ノレム・J・K(2012)の言葉を援用すれば、防衛的悲観主義のアスリートは、「ネガティブでありながらうまくやっている」というよりも、「ネガティブだからこそうまくやっている」のです。  (中略)

⑥防衛的悲観主義は、アスリートの強さとは何なのか、私たちに教えてくれます。  強さ=強気やポジティブではないのです。  本当の意味での強さとは、鋼のような強さではなく、何があっても決してあきらめない、しなやかで柔軟な強さなのだと、トップのアスリートたちが教えてくれているように感じています。  (中略)

⑦弱さも含めて、等身大の自分を認められる人が、本当に強い人なのではないでしょうか。』

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集中・執念・我慢

1.明けましておめでとうございます。  今年もよろしくお願いいたします。  

リオ五輪柔道73kg級金メダリスト・大野将平選手のインタビュー記事を、ネットで読みました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①――柔道を始めたのは?

「7歳と言っているんですけど、もっと小さい時に柔道着を着てる写真がある。  初めての大会が銀メダルで悔しかった。  いちいち負けて泣いてましたね」

②――泣くイメージは全くないですね。

「感情がなくなったんですかね。  今は勝っても負けても泣かなくなった(笑い)。  半べそをかくのは、良い稽古ができなかった時。  寝るまで引きずるタイプ。  柔道だけは悔しい熱量を持続できますね」

③――負けることは?

「悪いことじゃないと思えるようになった。  最近は1年半くらい負けてない。  18年4月に海老沼匡先輩に負けた時は楽な気持ちに。  寝込むこともなかった。  マッサージして治療して、スッとすぐに飲みにいきました(笑い)」

④――中高時代に名門の講道学舎で実力を磨いた?

「虎の穴で過ごしました。  ここでは言えないことしかない。  テレビなら“ピー”という音を入れないと。  入れば勝手に強くなると思ったら…人生を間違えた(笑い)」

⑤――お兄さんの存在は大きかった?

「中高大と一緒の環境。  兄はチャンピオンで僕は名前ではなく“大野の弟”という呼ばれ方だった。  自分の名前をとどろかせたいという野心はありました。  優しい兄なのでのんきに応援してくれてます」

⑥――中高時代はそんなに厳しかった?

「シドニー五輪金メダリストの瀧本誠先輩と稽古したのはメチャクチャ覚えています。  僕は中学1年。  入門初日の1本目にやって絞め落とされました」

⑦――えっ?失神?

「笑いながらスッと落とされた。  絞め技が上手な人は苦しくないんですよ。  フワッと気持ちがいい感覚ですね(笑い)」

⑧――世界王者クラスと稽古できたのは財産ですか?

「五輪王者と中高生が普通は稽古をすることはない。  それは恵まれていた。  先輩の技術を取り入れた僕は歴代王者のミックス。  そりゃ強くなりますよ」

⑨――食事は楽しみだった?

「レギュラーだと寮の食事に加えて肉やお寿司があったりしました。  僕は体も小さかったんでうれしくなかった。  『日本昔ばなし』みたいなラーメン丼を2つ合体させたご飯を出される。  あれっ?  嫌な話しかしてないですね(笑い)」

⑩――天理大では「正しく組んで正しく投げる」ということを突き詰めた?

「シンプルに子供たちが格好良いとか、大野のようになりたいと思う柔道をやっていきたい。  全盛期の先輩と勝負することはできないですけど今の大野が柔道の歴史上最強と言われるまでになりたい。  そうなるためにも東京五輪の連覇が必要ですね」

⑪――“木村の前に木村なし、木村の後に木村なし”と言われた木村政彦先生のような存在?

「間違いない。  それくらいになりたいですね。  中量級でもダイナミックな柔道ができることを証明したい」

⑫――リオ五輪の後、柔道と少し距離を置いて大学院で競技を研究。  その時間は大切なものでしたか?

「机に向かった時間は何物にも代え難い。  セカンドキャリアで指導者としての選択肢も増えた。  1年間休んでもトップクラスに戻れることも示せた。  修士論文は自分の技を研究しただけですけど感覚的にやってきたことを理論的に組み立てられるようになった」

⑬――最大の武器は大外刈りと内股?

「大外刈りは初めての得意技。  恩師に中学3年生の時から脇を持つこととセットで、自分より大きな相手は押して、後ろに下がれば大外刈りをしろと言われた。  得意技がなかったんですけど毎日打ち込みを1000本。  内股は兄の得意技。  なんとなく指導してもらって形になった。  その二本柱で勝っているのかなと思います」

⑭――今は奈良県天理市を拠点に生活。  どんなところですか?

「柔道をやるには最高の環境。  休みもあまりないんですけど、時間ができたら近くの健康ランドにひたすら行ってます」

⑮――サウナでリフレッシュするんですか?

「水風呂に入りにいく感覚です。  体重調整もあるので。  それでおいしいものを食べる。  焼き肉屋のマスターや大将が顔を覚えていてくれておいしい肉を出してくれる。  これが楽しみ。  あとは家。  自分の匂いに仕上がった部屋が一番落ち着く。  アロマのデュフューザーとかも入れてるんで(笑い)」

⑯――試合の時は独特の緊張感がある?

「試合前はそんなにピリピリしていない。  試合中は怖いオーラを出しているようですけどね。  天理大の監督に叩き込まれた“集中・執念・我慢”という言葉。  呪文のように言われていたので自分も言うようになった。  勝負ごとに大事な3つと思ってます」

⑰――音楽は聴いたりしますか?

「意外と聴かずに周りの雑音を聞いている。  話しかけてほしくない時は音なしでイヤホンを耳に入れている。  あれは効きます。  誰も話しかけてこないですね(笑い)」

⑱――今年の目標を漢字で表すと?

「“覚悟”です。  ケツメイシに『覚悟はいいか』って歌があるんです。  メンバーの大蔵さんと親交がありまして、僕を思い描いて歌詞を書いてくれた。  19年の世界選手権で勝った後に会場で流したんです」

⑲――東京五輪には覚悟を持ってということですね。

「♪ここまで辛抱してよく耐えた あと一歩を力に変えた 負けかけたけど鬼になれた――という3番の歌詞が僕のことを歌ってくれている。  覚悟があれば何でもできると思っているので頑張ります」』

どの回答も参考になります。  特に⑯の“集中・執念・我慢”はいいですね。  私もパクって(笑)、チーム城西のマインドセット(心理状態)にさせてもらいます。


2.今日は午前中から、NFLのアメリカン・カンファレンス(AFC)プレーオフ1回戦を観ていました。  私が応援するニューイングランド・ペイトリオッツはテネシー・タイタンズに13対20で負けました。

城西同様、ペイトリオッツも2020年シーズンに向けてチーム再構築ですね。

2020年が皆さんにとって素晴らしい一年となりますよう、お祈り申し上げます。  



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