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マイケル・ジョーダンの「舌出し」

1.『近くて遠いこの身体』(平尾剛著 ミシマ社)を読みました。  『無の境地=「ゾーン」にいたったら』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①スポーツの世界では、重圧がかかる場面でも高いパフォーマンスを発揮できる理想的な心身の状態を指して「ゾーン」という。  極度に集中力が高まった心身の状態を意味し、試合の流れを左右するような大事な場面でいかんなく能力を発揮するには、「ゾーン」に入る必要があるとされている。  (中略)

②「ゾーン」、つまり無心の境地にあるときには口元は必ず緩む。  (中略)  このときの身体実感は「適度な緊張感を保ちつつのリラックス」である。  だから口元は緩む。  (中略)

③プレー中に口元が緩んでいるアスリートは意外にもたくさんいる。  舌を出しながらプレーする選手はたくさんいて、有名なのは、NBA元バスケットボール選手のマイケル・ジョーダン。  写真でも映像でも、彼はぺろりと舌を出しながらプレーをしている。

④ボールを保持せず味方に指示を出している場面では眉間に皺を寄せた険しい表情も見られるが、いざプレーしている場面ではそんなことはない。  少しおどけた顔で舌を出すのがほとんどである。

⑤これは歯を食いしばっていないということに他ならない。  つまり力んでいない。  身体のどこにも力みがない状態でなければ、情況の変化に応じた最適な動き方ができるはずもないのである。  (中略)

⑥だが、「ゾーン」がどのような状態かがわかったところで、そこに至ることができるかどうかはまた別問題である。  これがまた相当な難題であることは論を俟(ま)たない。  (中略)  目指すは「ゾーン」に自由に出入りできる身体。  少なくとも歯を食いしばらないようにだけは努めることにするか。』


2.マイケル・ジョーダンの「舌出し」について、スポーツライターの青島健太さんが、日経ビジネスのサイト(2017年12月25日)で書かれていました。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①私が「舌」を出す選手に注目して、その効用を考えていたのは90年代のことだ。  NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンがいつも「舌」を出してプレーしていたからだ。  彼の代名詞「トリプルアクセル(空中で3回のフェイクを入れる)」からダンクシュートを決める時にも、空中で大きく口を開け「舌」を出しながらゴールのリングにボールを叩き込んでいた。

②彼に会った時に「なぜ舌を出すのか」と聞いたことがあるが、彼のおじいさんに「舌を出すとよいプレーができる」と子供の頃に教わったからだと言っていた。

③それは舌を出すと奥歯を踏ん張らないので、上体の力が抜けてリラックスした状態でプレーできるからだろう。  バスケットボールは視野を広くして、瞬時に臨機応変に動く必要がある。  華麗なドリブルからパスを出すのか、自分でカットインするのか、いずれにしても求められるのは柔軟な対応力だ。  それが舌を出すことで助長される!?』

私の知る限りでも、NFLカンザスシティ・チーフスの天才クォーターバック、パトリック・マホームズがパスを投げる際によく舌を出しています。

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すべては東伏見にあり

『早稲田ラグビー 最強のプロセス』(相良南海夫著 講談社)を読みました。  以下は著者紹介からの抜粋です。

『2018年、早大の監督に就任。  翌年度、第56回大学選手権で優勝。  11年間、学生日本一から遠ざかっていたチームをわずか2年で復活させる。』

本書から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.すべては上井草にあり

①現役の時、宿澤広朗さんにOB懇親会の席で「すべては(早大ラグビー部のグラウンドがあった)東伏見にあり」と教えてもらった。  私はいまでもその言葉を大切にしている。  (中略)  当時、日本代表の監督だった宿澤さんは壇上であいさつされた。  

②「すべては東伏見にあり」の真意はこうだ。  「日々、突き詰めて練習をしているのか。  詰めは甘くないか。  東伏見で練習した以上のものは試合で出せない。  すべてはここで創り出される」

③その数時間前の早明戦は12-16で敗れた。  負けた悔しさもあって、私は素直に宿澤さんの言葉を受け入れられなかった。  しかし、、続く大学選手権の準決勝で大東文化に12-22と敗れ、自分の大学生としてのラグビーが終わってから、その言葉を認めざるを得なくなった。  「突き詰めてやったのか」と問われると、「はい」と素直に言えない。  いまも後悔が残っている。  (中略)

④宿澤さんが言うように、東伏見で練習した以上のものは出せない。  すべてはここで創り出される。  いまは「すべては(グラウンドがある)上井草にあり」。  承継と創造が溶け合った日々を学生たちと過ごせるならば、それは幸せなことに違いない。


2.「緊張」

①(2020年1月1日)早明決戦。  初の新国立。  舞台は整った。  (中略)

②(上井草)グラウンドの入り口には「緊張」、ウェイトルームなどが入るプレハブ前には「明治」と墨痕鮮やかな2枚の大書が掲げられた。  「選手権優勝」ではなく、「明治」と書かれたのが、私たちのライバルに対する気持ちを物語っていた。

③私の現役時代も「緊張」は早慶戦や早明戦前になると寮の玄関などに貼り出された。  大一番に向け、みなピリピリしだす。  特定の試合にかける、張り詰めた糸に部内がくるまれる。

④「緊張」は早稲田にとって特別な言葉ではない。  「試合を想定して集中しろ」という意味だと私は理解している。  練習は試合のための準備であるから、そのために日ごろから集中しておく。  まさに、宿澤さんたちが私たちの現役時代に教えてくれた「すべては東伏見にあり」である。

⑤ただ、やはり視界に入る効果は大きい。  普段にも増して身が引き締まる。

⑥いまの学生は尋ねてくる。  「『緊張』を貼りますか、どうしますか」  私は答える。  「貼りたければ貼る。  形式的ならやめる」

⑦そういう気持ちになっていないのに貼っても無意味だ。  伝統は守らないといけないが、わからないままやっても意味がない。  今回は学生たちが自分たちで用意をした。』

「すべては東伏見にあり」、いい言葉です。  チーム城西だと、「すべては道場にあり」ですね。

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セコンドの指示

1.モハメド・アリやシュガー・レイ・レナードを育てた、名トレーナーのアンジェロ・ダンディーが書いた『勝つことを知った男』(ベースボール・マガジン社)を読みました。  「名トレーナーへの道しるべ」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①(元世界フェザー級王者)ウィリー・ペップを鍛えたビル・ゴーアがまた素晴らしかった。  その手ぎわの敏速で確かなこと!  

②彼は一番上のロープの上からよりかかるようにして、各ラウンドごとにウィリーをできるだけ新鮮でこざっぱりと見せるようにようにする。  ビルは試合中のボクサーの外見も心理的に重大な影響があると信じている。

③俺も同意見だ。  白熱したラウンドが終わっても生き生きしていれば、相手のファイターの勇気をくじくし、ジャッジにあたえる印象も違おうというもんだ。』


2.「やったぜ!  デュバスはジュニア・ミドルのチャンプだ」の項からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①率直に言って、俺はかなりうまく応用心理学をボクサーたちにもちいたとおもう。  疲れたボクサーにはアスピリンの半かけらをやって、こんなことを言う。  「これは元気の出る丸薬だぞ。  もうこれからは疲れることはないぜ」  効いたねぇ!

②それから決して口にしない言葉は、「おまえ負けてるぞ」なんてことだ。  不利な場合は逆に、「あっちはだいぶ参っているぞ」と言ってやって、それからおだて、自信をつけさせる。  どやしつけ、ののしり、その他、奮起させることがあれば何でもやる。

③あるボクサーにはどうすればいいか別な指示をする。  また他のには違ったアプローチを用いる。

④モハメド・アリには、どうしたらいいかなんて事は言わない。  「種」をまくんだ。  そうしてあたかも彼自身がそれを思いついたかのように思い込ませるんだ。』


3.「起死回生の特効薬」の項に、1981年9月16日に行われた、シュガー・レイ・レナード(WBC王者)対トーマス・ハーンズ(WBA王者)の世界ウェルター級・統一王座決定戦のもようが書かれています。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①12ラウンドが終わるとレイはスツールにどさっと腰をおとし、疲労の色を濃くしていった。  気落ちするラウンドだった。  勝利が俺たちの手からすべり落ちるような気がした。  きっぱりさせるにはノックアウトしかない。  (中略)

②「いまやらなければダメなんだぞ、レイ!  おまえはみんな台無しにしちまっている。  聞いてるのか?  倒してしまうんだッ。  このラウンドでやるんだッ」  

③トップ・ギヤに戻してやらなければならない。  きっとハーンズを倒せる。  第13ラウンドのゴングが鳴った。

④レイに活気がみなぎった。  いまや完全にファイティング・マシーンとなっていた。  右の長打でハーンズをつかまえた。  ハーンズは危機におちいった。  レイは奴を追う。  パンチの応酬でハーンズはロープに首をつっこんで倒れたが、レフリーはダウンを取らず、かろうじてハーンズはこのラウンドを何とか持ちこたえた。  俺にはレイが奴めを見事に打ち砕いたことが分った。

⑤(14ラウンドの)ゴングが鳴るとレイは飛んでいってハーンズにパンチをあびせ始めた。  エネルギーが彼を突き進ませ、試合の始めよりも強く生き生きしてきた。  リング上の37度の熱さもなんのその、まさに獲物をしとめようとする感覚と、勝利は手中にありという確信から生まれる威力はすごかった。

⑥レイはハーンズにパンチを雨あられと浴びせて窮地に追い込んだ。  ハーンズはロープによりかかったまま棒立ちになった。  しかし、果敢にも試合を投げようとはしない。  ついにレフリーが分けて入って、勇敢なハーンズをレイの強打から救った。  闘いは終わった(14ラウンド・TKO勝ち)。』  

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