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深呼吸

前回は『大リーグのメンタルトレーニング 第2版』(ケン・ラビザ/トム・ヘンソン著 ベースボールマガジン社)のなかの「ボディーランゲージ」に関する記述を紹介しました。  今回も同書からです。

1.同書では「深呼吸」に関する記述が多く出てきます。  「マイク・トラウト選手の打席でのプレー前のルーティン」の項を番号を付けて紹介します。  トラウト選手はMLBのロサンゼルス・エンゼルス所属で大谷翔平選手の同僚です。   オールスターゲーム選出11回・MVP3回の実績を残しているMLBを代表する選手の一人です。

『①バッティングにおいては、私はゆっくりと打席に向かい、バットとバッティンググローブを持ってルーティンをし、気持ちを準備して深呼吸をします。  深呼吸をすることは、ケン (ラビザ博士) が最初に私に言ったことの一つでした。

②しかしそれで終わりではありません。   私にとって重要なことは、打席に戻る前に深呼吸を終えるということです。

③私はバッティンググローブをして深呼吸をすると、 本当に力が湧いてきます。  一度深呼吸を終えれば、 準備ができた状態で打席に戻ります。  自分の準備が終わらないうちは、ピッチャーに投げ始めてほしくないので、私の準備ができた時に打席に入るのです。

④私の態度は、「打ってやる、ここは俺の縄張りだ、 俺の打席だ」 というものです。  もし、私が素晴らしいシンカーを投げるピッチャーと対戦し手を出せなかったら、私は打席を外し、 何回か深呼吸をし、 ルーティン (準備) を終えます。   そして「ボールをよく見ろ」と自分自身に言い聞かせます。

⑤私は前のプレーを思い出し、何が問題であったかを考えます。   深呼吸をした後、打席に入った時にはすべては過去のこととなり、 私は未来、次のプレーへと向かいます。   私はこのように考えます : 3回打ち取られたが、1回は打った。

⑥私は、ポジティブになることを心がけました。   ライナーを捕られてアウトになったり、いい当たりをアウトにされたりするのは、ネガティティブな結果です。  しかし、「オーライ、次は打つよ」と前向きな気持ちになります。

⑦良いスイングをしたようなポジティブな気持ちで、もう一度素晴らしいバッティングをする準備をし、真ん中の球を打ったり、 ホームランを打つなどのポジティブな気持ちを持ちます。』


2.続く「プレーの前に質の高い呼吸をする」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『もしできるならば各プレーの前に、意味のある、明確で、きれいな、意義深い呼吸をします。  ゆっくりと安定した呼吸は、ヘッズアップアプローチの重要な点です。   

深呼吸は:

①前のプレーから気持ちを切り替えることに役立ちます。

②自分がコントロールできているかどうかを確認できます。

③自分をコントロールするのに役立ちます。

④緊張を緩めるのに役立ちます。

⑤意識的な思考から無意識の勝負に移行する手助けをします。

⑥バッティングのリズムを確立するのに役立ちます。』


3.「ヘッズアップ守備」の項にも関連する記述があったので抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①そのうちの1回以上で、 質の高い呼吸であるダブルブレス (2回の深呼吸) ルーティンを実践するのも良いでしょう。   プレッシャーがかかっている時はダブルプレス (2回の深呼吸)のルーティンを使い、 それ以外の時は、 シングルプレス (1回の深呼吸)のルーティンを使うのがいいかもしれません。

②深呼吸というスキルは、 ヘッズアップベースボールの中ではMVPです。』


4.続く「注意」の項も抜粋し、番号を付けて紹介します。

『① 呼吸を完了させましょう。   他のことをするのと同じように、深呼吸の動作を行うことができます。

②呼吸に注意を向けてください。   入ってくる空気を感じていますか?   出ていく空気を感じていますか?

③あなたのルーティンに進む前に呼吸を終了させます。  選手は、困難な状況な時で息を短く切ってしまいます。   呼吸を急げば、 彼らは緊張して、急いでいる感覚になってしまいます(時には息を止めてしまうこともありますそれはさらに緊張を生み出します)。

④呼吸をすることで、 リズム、 テンポ、 努力のレベルを維持することができます。  もし、プレー前に深呼吸をしたかどうかを100%確認していない場合は、 自分をコントロールできていないということになりますし、 1球1球に対して、プレーしていない可能性が高いということになります。』

空手の試合でも、試合前の緊張感をやわらげたり、自分が不利な状況での焦りを緩和するなど、深呼吸(腹式呼吸)は必須です。  






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ボディーランゲージ

1.8月26・27日は京都で極真祭でした。  

競(せ)っている決勝戦で弱気になって、判定負けした選手がいたので、終了後に次のような話をしました。

『競っている試合では、どちらに勝ちが転ぶかわからない。  心の中で弱気になりがちなのは分かるが、それを態度に表すと、相手選手にそれが伝わり、同じように苦しかった相手を勢いづかせてしまう。  

当然、審判からも見えているので判定にも影響する。  

大きな大会で、決勝戦まですべて楽勝ということはありえない。  「苦しくても、態度に表さない、ポーカーフェイスでいる」ことができないと優勝するのは難しい。』


2.最近読んだ『大リーグのメンタルトレーニング 第2版』(ケン・ラビザ/トム・ヘンソン著 ベースボールマガジン社)の「ヘッズアップピッチング」の項に関連する記述があったので抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①大きくなりましょう!   胸を張り、上を向きましょう。   足幅を広げて、背筋を伸ばしましょう。   地面に足を踏みしめ、エネルギーを広げましょう。

②自信を持って身体を動かせば、身体は心に「準備はできている、 私はできる」と伝えます。

③肩を落としているということは、相手や自分のチームに、 自分が困っているというメッセージを送っていることになります。

④バッターはサメのようなもので、マウンド上での悪いボディーランゲージは、水中の血のようなものです・・・彼らは積極的に食べに来るでしょう。』


3.同じ項に、ニューヨーク・ヤンキースのゲリット・コール投手のコメントが載っていたので、番号を付けて紹介します。

『①ネガティブなものを一掃して、はっきりと考えることができるようにしなければなりません。   アドレナリンが出ていようが、それを計画的に利用して自分に有利になるようにしなければなりません。

②バッターはサメと同じで、血の匂いを嗅ぎ分けることができます。   だからこそ、ピッチャーの悪いボディーランゲージによって彼らに自信を与えないことが重要なのです。   何があっても常に自分の方が優位であることをアピールしなければなりません。』

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戦略とひらめき

極真空手の試合において、「対戦相手に対してどう戦うか」という戦略を立てることは大切です。  戦略について医師の帯津良一先生が『太極拳養生法』(春秋社)の中で書かれています。  「五 太極拳のひらめき」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『1.①もう30年以上も前のことだが、指揮者の小沢征爾さんが、アメリカの大きな音楽関係の賞を得たことがある。  そのことを伝える新聞記事のなかに小沢さんの受賞の弁ともいうべき談話が載っていた。  「私には的中の予感があった」と述べているのだ。

② 「的中の予感」!   この一言がわが胸にぐさりと突き刺さったのである。  記憶に間違いがなければ、この賞も、芥川賞やアカデミー賞のように、まず数人の候補者がノミネートされる。  そのノミネートされた段階で、小沢さんには、この賞はかならず俺のところに来るという予感(ひらめき)があったというのである。

③的中の予感!   いい言葉だ。  別にしらべたわけではないが、ノーベル賞の受賞者もいずれかの時点で、この的中の予感に襲われるのではないだろうか。  ノーベル賞なんて、私にとっては縁無きもの。  誰が受賞しようと羨ましいこともないが、この的中の予感だけは羨しいことしきりといったところである。

④しかし、この的中の予感も、ある日、突然虚空からやって来るものではないだろう。  まずはノミネートされなければならない。  自らの仕事ぶりが認められなければ始まらないのである。  その上に、日々攻めの養生を果たしている者の心のなかにこそ、的中の予感は芽生えるのである。  

⑤つまり、ある種の覚悟をもって生きることによって、その予感を生み出す土壌が限りなく豊饒になっていくのではないだろうか。  (中略)

2.①ひらめきが予感を生み、 予感がさらなるひらめきを生むのではないだろうか。  ひらめき (閃き)といえば、なんといってもクラウゼヴィッツだ。  カルル・フォン・クラウゼヴィッツ(1780~1831)。   ナポレオンと戦ったプロイセンの軍略家。  その著『戦争論』は軍事理論の古典として、いまでも 「岩波文庫」の一角を占めている。

②そのクラウゼヴィッツが、多くの戦術を統合して“戦略”に止揚することの重要性を説きながら、戦略とは〝ひらめき" であるという。  じつに重みのある言葉ではないか。  そしてそのひらめきも、私たちが思っているような、ある種の感覚としてのひらめきではなく、むしろステップを踏んで起こる思考に近いものだという。

③そのステップは五段階から成る。
一、歴史上の先例にならう。
二、平常心に立ち返る。
三、戦場ないしは戦局を一瞥する。
四、ひらめく。
五、不屈の意志で遂行する。

④つまり、どういうことかというと、
一、まずは似たような局面で勝利をおさめた先例を洗い出し、整理をして、いつでも範として採り上げられるように心のなかの引出しに納める。  
二、納めたら、先例についてのとつおいつの思案をすみやかに捨て、平常心に立ち返る。   この切替えはそう簡単ではないが、まずは場数を踏むことである。  
三、そして、戦局を一瞥する。  この一瞥こそ戦略の最重要案件、キーポイントである。   一瞥によって大局をつかむのである。  大局観と言い換えてもよいだろう。   細部を熟視したり、全体を観るにしても分析的思考が伴っていては大局を観ることはできない。  大局を観ることができなければひらめきは生まれては来ない。  ひらめきがなければ戦略にならないのであるから、一瞥がいかに大事か、身に沁みて分かるというものである。』

上記2.③の五段階を極真空手の試合についてアレンジすると以下のようになると思います。

一、事前に対戦相手の過去の映像を見て研究する。
二、試合当日は平常心に立ち返る。
三、試合当日の対戦相手の勝ち上がり方や自分自身のコンディションなどを一瞥する。
四、ひらめく。
五、不屈の意志で遂行する。

四、のひらめきについては、試合の前のひらめきと、試合中のひらめきのの二通りが考えられます。  試合中にひらめいた場合には、速やかに戦略・戦術の変更が必要になります。



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