2022.10.08 Sat
尋常でない練習量の意義
富士登山競走や日本山岳耐久レースをはじめ数々の山岳レースで優勝しているプロトレイルランナーの鏑木毅さんが書かれている、日経新聞・夕刊・毎週金曜日の連載『今日も走ろう』を取り上げます。 9月16日のタイトルは「尋常でない練習量の意義」でした。 抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①若いトップ選手から「もっと強くなるにはどんなトレーニングがよいだろうか」と聞かれることがある。
②めざすのが国内トップレベルなら、自分の強みを冷静に分析した上で、タイミングよく休養をとりながら地道に努力すればそれなりの高みに到達できるだろうと答えている。 だが世界のトップをめざすとなると話は別だ。
③私自身はこれまで、トップ選手とは世界レベルをめざすものと思っていた。 競技への価値観も多様化した今、必ずしもそうとは限らない。 自分の能力に見合った現実的な目標を定めるのもよし、またSNS(交流サイト)などを駆使してファンとの交流を行うことに重きを置く選手もいる。
④もちろん、このような選手の登場は、「結果がすべて」とするピラミッド型の価値観を崩し、ファンにとって身近な存在のアスリート像をつくることにつながる。 社会に共感を呼び、競技の普及につながるのだから歓迎したい。
⑤ただ、ある程度の努力を続けていれば、いつかは世界への扉が開かれると簡単に考えている選手も少なくない。 卓越した才能があれば可能だけれど、世界のトップをめざすなら、時間、労力、思考、そして感情まですべてを競技に振り向ける覚悟がないと無理だ。 ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。
⑥私も全盛期を振り返れば、世界一をめざしてある種の熱病にとりつかれていたようなものだった。 練習を何よりも重視し、家族や人間関係などの多くを犠牲にした。
⑦全盛期には1カ月に1500キロメートルの走り込みを繰り返した。 走りすぎともいえるトレーニングに取り組んだ時期があるからこそ、無駄を補完する効率的な練習メニューの重要性もわかるようになった。 (中略) あれだけの覚悟を決めて初めて、身体的には明らかに自分より優れた外国選手に太刀打ちできた。
⑧アスリートの肉体は人種や年齢、運動歴により世界レベルへの成功ルートはそれぞれ異なる。 他人の成功のノウハウが必ずしも自分に当てはまるとも限らない。 結局、膨大な無駄ともいえる練習の中から自身に必要不可欠なメニューを見つけ出すしか道はない。
⑨競泳で4回続けてオリンピックに出場し、4つのメダルを獲得した松田丈志選手は1日に30キロの泳ぎ込みを繰り返したそう。 元メジャーリーガーのイチロー選手も寸暇を惜しみ練習に取り組んだという。 いずれも尋常ではない。
⑩競技に対する価値観は選手ごとにさまざま。 むしろ時代は多様性を歓迎している。 ただ、世界の頂点をめざすのであれば、覚悟と犠牲が必要になるのは避けられず、リスクも大きい。 コスパの悪い生き方といえる。 自分は時代遅れの考え方なのだと認識しているけれど、競技における泥臭い努力についても伝えていきたい。』
来年秋に開催される『第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会』の日本代表選手選抜大会である、第54回全日本大会まであと一か月ちょっととなりました。
私が週3回指導する選手稽古もこれから佳境に入ります。 ⑤にある『ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。』という言葉に惹かれたので紹介しました。
『①若いトップ選手から「もっと強くなるにはどんなトレーニングがよいだろうか」と聞かれることがある。
②めざすのが国内トップレベルなら、自分の強みを冷静に分析した上で、タイミングよく休養をとりながら地道に努力すればそれなりの高みに到達できるだろうと答えている。 だが世界のトップをめざすとなると話は別だ。
③私自身はこれまで、トップ選手とは世界レベルをめざすものと思っていた。 競技への価値観も多様化した今、必ずしもそうとは限らない。 自分の能力に見合った現実的な目標を定めるのもよし、またSNS(交流サイト)などを駆使してファンとの交流を行うことに重きを置く選手もいる。
④もちろん、このような選手の登場は、「結果がすべて」とするピラミッド型の価値観を崩し、ファンにとって身近な存在のアスリート像をつくることにつながる。 社会に共感を呼び、競技の普及につながるのだから歓迎したい。
⑤ただ、ある程度の努力を続けていれば、いつかは世界への扉が開かれると簡単に考えている選手も少なくない。 卓越した才能があれば可能だけれど、世界のトップをめざすなら、時間、労力、思考、そして感情まですべてを競技に振り向ける覚悟がないと無理だ。 ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。
⑥私も全盛期を振り返れば、世界一をめざしてある種の熱病にとりつかれていたようなものだった。 練習を何よりも重視し、家族や人間関係などの多くを犠牲にした。
⑦全盛期には1カ月に1500キロメートルの走り込みを繰り返した。 走りすぎともいえるトレーニングに取り組んだ時期があるからこそ、無駄を補完する効率的な練習メニューの重要性もわかるようになった。 (中略) あれだけの覚悟を決めて初めて、身体的には明らかに自分より優れた外国選手に太刀打ちできた。
⑧アスリートの肉体は人種や年齢、運動歴により世界レベルへの成功ルートはそれぞれ異なる。 他人の成功のノウハウが必ずしも自分に当てはまるとも限らない。 結局、膨大な無駄ともいえる練習の中から自身に必要不可欠なメニューを見つけ出すしか道はない。
⑨競泳で4回続けてオリンピックに出場し、4つのメダルを獲得した松田丈志選手は1日に30キロの泳ぎ込みを繰り返したそう。 元メジャーリーガーのイチロー選手も寸暇を惜しみ練習に取り組んだという。 いずれも尋常ではない。
⑩競技に対する価値観は選手ごとにさまざま。 むしろ時代は多様性を歓迎している。 ただ、世界の頂点をめざすのであれば、覚悟と犠牲が必要になるのは避けられず、リスクも大きい。 コスパの悪い生き方といえる。 自分は時代遅れの考え方なのだと認識しているけれど、競技における泥臭い努力についても伝えていきたい。』
来年秋に開催される『第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会』の日本代表選手選抜大会である、第54回全日本大会まであと一か月ちょっととなりました。
私が週3回指導する選手稽古もこれから佳境に入ります。 ⑤にある『ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。』という言葉に惹かれたので紹介しました。