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尋常でない練習量の意義

富士登山競走や日本山岳耐久レースをはじめ数々の山岳レースで優勝しているプロトレイルランナーの鏑木毅さんが書かれている、日経新聞・夕刊・毎週金曜日の連載『今日も走ろう』を取り上げます。  9月16日のタイトルは「尋常でない練習量の意義」でした。  抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①若いトップ選手から「もっと強くなるにはどんなトレーニングがよいだろうか」と聞かれることがある。

②めざすのが国内トップレベルなら、自分の強みを冷静に分析した上で、タイミングよく休養をとりながら地道に努力すればそれなりの高みに到達できるだろうと答えている。  だが世界のトップをめざすとなると話は別だ。

③私自身はこれまで、トップ選手とは世界レベルをめざすものと思っていた。  競技への価値観も多様化した今、必ずしもそうとは限らない。  自分の能力に見合った現実的な目標を定めるのもよし、またSNS(交流サイト)などを駆使してファンとの交流を行うことに重きを置く選手もいる。

④もちろん、このような選手の登場は、「結果がすべて」とするピラミッド型の価値観を崩し、ファンにとって身近な存在のアスリート像をつくることにつながる。  社会に共感を呼び、競技の普及につながるのだから歓迎したい。

⑤ただ、ある程度の努力を続けていれば、いつかは世界への扉が開かれると簡単に考えている選手も少なくない。  卓越した才能があれば可能だけれど、世界のトップをめざすなら、時間、労力、思考、そして感情まですべてを競技に振り向ける覚悟がないと無理だ。  ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。

⑥私も全盛期を振り返れば、世界一をめざしてある種の熱病にとりつかれていたようなものだった。  練習を何よりも重視し、家族や人間関係などの多くを犠牲にした。

⑦全盛期には1カ月に1500キロメートルの走り込みを繰り返した。  走りすぎともいえるトレーニングに取り組んだ時期があるからこそ、無駄を補完する効率的な練習メニューの重要性もわかるようになった。  (中略)  あれだけの覚悟を決めて初めて、身体的には明らかに自分より優れた外国選手に太刀打ちできた。

⑧アスリートの肉体は人種や年齢、運動歴により世界レベルへの成功ルートはそれぞれ異なる。  他人の成功のノウハウが必ずしも自分に当てはまるとも限らない。  結局、膨大な無駄ともいえる練習の中から自身に必要不可欠なメニューを見つけ出すしか道はない。

⑨競泳で4回続けてオリンピックに出場し、4つのメダルを獲得した松田丈志選手は1日に30キロの泳ぎ込みを繰り返したそう。  元メジャーリーガーのイチロー選手も寸暇を惜しみ練習に取り組んだという。  いずれも尋常ではない。

⑩競技に対する価値観は選手ごとにさまざま。  むしろ時代は多様性を歓迎している。  ただ、世界の頂点をめざすのであれば、覚悟と犠牲が必要になるのは避けられず、リスクも大きい。  コスパの悪い生き方といえる。  自分は時代遅れの考え方なのだと認識しているけれど、競技における泥臭い努力についても伝えていきたい。』

来年秋に開催される『第13回オープントーナメント全世界空手道選手権大会』の日本代表選手選抜大会である、第54回全日本大会まであと一か月ちょっととなりました。

私が週3回指導する選手稽古もこれから佳境に入ります。  ⑤にある『ときに常軌を逸した状態、「狂」にならなければなしえない。』という言葉に惹かれたので紹介しました。

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地面反力を使う

1.『ロジカル筋トレ』(清水忍著 幻冬舎新書)を読みました。  『バーベルを上げるときは「地面から力をもらう」』の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「地面反力」というのは、地面を強く蹴ったり押し込んだりしたときの反動として「地面からもらい受ける力」のことを指す。  たとえば、スクワットは地面への踏み込み能力を向上させるためのトレーニングと私は考えているのだが、バーベルを持ってのスクワットで体を上げていくときに「もっと地面反力を使って上げろ!」と言ったりする。

②しっかりと地面反力をもらうには、しっかりと立って地面を強く踏み込まなくてはならない。  そのため、私は、体重70キロの人が100キロのバーベルを上げる場合、「100キロのバーベルを上げようとするよりも、自分の体重とバーベルの重量を足した170キロで地面を押し込め」といった指導をする。

③この感覚がつかめてくると、人は自然に「いちばん強く地面を押せるポジション」をとってスクワットするようになる。  また、フォームもおのずと整ってきて、「地面を強く押せる理に適ったフォーム」をとるようになっていく。  そうすると、170キロの力強さで地面をしっかりと押し込み、その地面反力を使って100キロのバーベルを上げられるようになっていくのである。

④このように、人は「地面をしっかりと押すこと」を意識していると、あれこれ教えられなくても本能的に合理的な動作をとるようになっていくものなのだ。  もちろんスクワットに限った話ではない。  他の筋トレメニューでも「足腰で地面を力強く押すこと」を意識していると、押すためのフォームがピシッと固まって、合理的かつ効率のいいトレーニングができるようになっていく。

⑤さらに、日々足腰で地面を踏み込むトレーニングを積んでいると、日常動作にも好影響が現れるようになる。  例を挙げれば、床から重い荷物を持ち上げる際、足で地面を踏み込むことによってスムーズに持ち上げられるようになったり、電車通勤の際、足を踏み込んで立っているために大きく揺れても体がグラつかなくなったり・・・・・・。  なかには、普段から地面を押すのを意識しながら歩いたり走ったりしていたら、いつの間にか足が速くなっていたという人もいる。

⑥おそらく、地面を押し込み、地面から力をもらうということは、人間が合理的な動作をするためのいちばんの基本なのだろう。  逆に言えば、わたしたち人間は「足腰で地面を押す」を習慣にすることによってこそ、合理的で効率のいい身体動作を取り戻していくことができるのではないだろうか。』


2.1.④の「他の筋トレメニュー」に関し、他の章で、ベンチプレスについて次のように書かれています。

『私がアスリートを指導するときには、よく「ベンチプレスは肩甲骨の『地面反力』を使え」という言い方をしている。  「肩甲骨の地面反力」を使ってベンチプレスを行なうと、大胸筋だけでなく上腕三頭筋・三角筋前部など複数の筋肉が最適なタイミングで使われ、それらの筋肉の連動性や力の伝達力を合理的に高めていくことができるのだ。』


3.「地面反力」については、意拳の創始者である王薌齋先生も言及されています。  孫立先生が書かれた『王薌齋伝』(ベースボールマガジン社)から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①練習にさいしては、また人体の外力と内部の動きのあいだにある対立と統一の法則を巧みに運用しなければならない。

②人体の外力には四種類ある。  ひとつは人体の力、つまり重力で、位置エネルギーが運動エネルギーに転化することで、「地球の中心と争う力」になる。

③地面が支える力とそれに対する反作用の力は、いわゆる「地面から離れて飛び立つ」力である。』

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苦しみを楽しむ覚悟で

(1)NHKBS1『奇跡のレッスン・・・世界の最強コーチと子どもたち』の再放送を観ました。  

今回の「最強コーチ」は、イタリアのレナート・カノーバさん(74歳)で、ケニアを拠点に陸上・長距離選手を指導しているそうです。  教え子たちがオリンピック等で48個のメダルを獲得し、「マラソン界の魔術師」と呼ばれる伝説的な指導者です。  

番組は、レナートさんが東京の公立中学の駅伝チームを1週間指導する内容で、前編と後編が放映されました。  番組内でのレナートさんの語録を抜粋し、番号を付けて紹介します。  

『1.前編・・・タイトル「走れ!苦しみの向こうへ」

①(トレーニングで)苦しむ準備ができていれば、苦しみに耐えられる。

②自分が向き合うことになる苦しみを楽しむ覚悟を決めるんだ。

③苦しみに向き合えば、自分の力を知ることができる。  それに打ち勝つことで強くなることができる。  だから、自分から苦しみを求めよう。  結果はその後についてくる。


2.後編・・・タイトル「苦しみを楽しむ覚悟で走れ」

①トレーニングは苦しいが、苦しみが大きいほど大きな達成感が得られる。

②君が走るのが好きなら、レースを試験だと思わないで欲しい。  自分を表現できる喜びと考えて。

③速くなりたければ、速く走らなければならない。  速いスピードの練習はとてもつらいものだ。  でも、その苦しさに慣れることができれば、苦しみと共に前に進めるようになる。


3.(200m走+ジョギング)×10本のインターバルトレーニングについてのコメント

このトレーニングの狙いは体内に生理的な変化を引き起こし、心肺機能を高めることにある。  心臓を大きくし、送り出す血液の量を増やす。  これは武器になる。  全身にたくさんの酸素やエネルギーを送れるようになり、持久力が上がる。』


(2)駅伝の第一走者として順位を上げられず、レース後に落ち込んでいるチームキャプテンに、レナートさんがかけた言葉にもしびれました。

『君がうまく走れなかった責任は私にある。  君を一区に選んだのは私だ。  君が一番強いランナーだから任せた。  その考えは今も変わらないよ。』

もしかすると、「しびれました」って死語かも(笑)



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