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チームづくりは時間との戦い

ラグビーの元・日本代表キャプテン、横井章さんが書かれた『継承と創造』(ベースボール・マガジン社)を読みました。  「チームづくりは時間との戦いである」の項から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①「時間」には限りがあります。  だから目標とする試合や大会までの限られた時間の中で、強敵に勝つための自分たちのラグビーをつくり上げるマネジメントが大事になります。  どれほど素晴らしい戦術を考案したとしても、ターゲットの試合までに完成しなければ意味がありません。

②そして現代のチームと選手は、その「時間」が極めて短くなっています。  (中略)  ですから、戦術戦略を絞り込み、無駄な練習を極力省いて必要最小限のメニューに集中的に取り組む効率性が大事になります。

③時間が無限にあるのなら、いくらでも練習して強くなることができます。  しかし、大半のチームは、そうした環境にはないはずです。  そうであれば、限られたわずかな時間の中でやりくりを工夫し、特化した戦い方をミスなくできるように磨き上げるしかありません。

④(中略)  自分たちができること、自分たちがしなければならないことを理解し、必要最小限のことに焦点を絞って、そこにすべての時間をかけて徹底的に強化しなければなりません。  持たざるチームが持つチームを倒すには、そうして最短距離で差を縮めていくしかありません。  逆に言えば、ラグビーで強いチームをつくるためにはそれだけ時間がかかるということです。  (中略)

⑤本当に必要なことを峻別し、どんな相手に対しても100パーセント遂行できるよう、徹底的に強化して磨き上げなければなりません。  その道筋をつけることがコーチの仕事であり、コーチングの醍醐味であると私は思います。  (中略)

⑥時間は万人にとって平等です。  だからこそ他人より一歩先んじるためには、「いかに時間を使うか」という工夫が鍵になります。  チームで集まれる時間が限られていても、それ以外の時間に1人でトレーニングすることはできます。  

⑦家にいる時間でも、もっと言えば通学の時間でもやれることはいくらでもあります。  そうやって選手1人1人が成長しつつ、全員で集まれる時はチーム練習に特化して取り組むようにすれば、同じ時間でも成長度は全く違ってきます。

⑧そしてそのためには、個々の選手が自分に必要なものを理解し、何をしなければならないかを考えられるようにならなければなりません。  (中略)  時間がないことを理解し、自分なりに考えて行動できるよう選手を促していかなければいけません。  そうしたアプローチが、今の指導者には求められていると思います。』

私が指導している選手稽古の時間は長いほうだと思います。  それでも、指導したいことを全て盛り込むには時間が足りない、といつも感じています。

ちなみに道場に掲げている「城西のチームカルチャー」は、①どこよりも創意工夫する、②どこよりも練習する、③どこよりもそれらを楽しんでやる、の三点です。

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思春期不器用

7月12日の日経新聞夕刊に『「思春期不器用」知っておこう』という記事が載っていました。  番号を付けて紹介します。

『①身体が大きく成長する思春期に、スポーツの成績が一時的に落ちるケースがあるという。  「スランプか?」と悩む子どもや保護者もみられるが、スポーツトレーナーの遠山健太さんは「思春期不器用」という現象の可能性を指摘する。  練習量を増やすとけがのリスクがあり、注意が必要だ。  知っておくべきポイントを助言してもらった。

②「なかなか調子が上向かない選手がいるんだ」。  全日本スキー連盟のフリースタイルスキーチームでトレーナーを務めていた2010年代、ジュニア選手のコーチからこうした相談を持ちかけられた。  スキー操作やエアの技術の習得が進まないという。

③練習へ向き合う姿勢は真剣で、生活習慣にも変化はないが、競技成績が落ちていく。  コーチも本人も「原因が分からない」という。  持久力や柔軟性、筋力についてテストしたところ、以前と比べ伸びがみられず、むしろ数値が下がった項目もあった。

④それまでジュニア選手の指導経験が少なく、私も困惑したが、調べてみると発育発達学の分野で「思春期不器用」と呼ばれる現象と似ていると分かった。  体への負荷が少ない柔軟性や持久力のトレーニングに切り替えたところ、自然と高いパフォーマンスを発揮できる状態へ戻っていった。

⑤思春期不器用は、身長が急速に伸びる「成長スパート期」に身体のバランスがとりにくくなったり、動きがぎこちなくなったりする現象を指す。

⑥海外では1930年代から様々な調査・研究が行われてきた。  日本でもジュニア時代からのトップ選手育成が盛んになり、関心が高まりつつある。

⑦原因として ▽体の急速な発達に感覚器の適応が追いつかない ▽骨が伸びることで柔軟性が低下する――といった指摘がある。  過去の研究では、あるグループへの調査で成長スパート期に運動能力が停滞することが確認された。

⑧一方、詳しい原因は分かっていない。  同様の現象が明確にはみられなかったとする指摘もある。  メカニズムの解明にはさらに時間がかかるだろう。

⑨子どもがスポーツ教室や部活動に打ち込んでいる保護者に留意してほしいのは、思春期不器用の現象は練習量を増やすことでは解消されないという点だ。

⑩講演などで、子どもがサッカーや野球のスポーツ少年団に入っている保護者から「急に成績不振になったので、居残りで猛練習している」 「急にレギュラーから外され、本人がひどくふさぎ込んでいる」といった声を聞くことがある。

⑪運動能力の伸び悩みが成長スパート期と重なっている場合、思春期不器用の可能性がある。  この場合に負荷が強すぎるトレーニングをすると、まだ未熟な骨や関節を負傷する恐れが強まる。  運動量や時間を増やしたり、強度を高めたりするのは禁物だ。

⑫また思春期不器用は成長スパート期が終われば自然と解消される。  スポーツの成績が一時的に伸び悩んだとしても精神的に大きく落ち込む必要はない。  保護者は「いずれ上向くよ」と長い目で見て子どもに寄り添ってほしい。

⑬思春期不器用の可能性があるかどうかを把握するためには、家庭で「成長曲線」と呼ばれるグラフを作る方法が効果的だ。  定期的に身長の伸びを線で結んだグラフで、傾きが最大の時期が成長スパート期にあたる。  この時期に不振に陥れば「もしかしたら」と原因を探りやすい。

⑭一方、日本では本格的に研究が始まって間もない分野のため、部活動やスポーツ少年団の指導者にも広く伝わっているとは言いがたい。  部活動の顧問を務める教員向けの講演でも思春期不器用について説明すると「なんですかそれは」と驚く声が多い。  

⑮話をうかがうと、チームの中心だった選手が不調になり「なぜだろう」と首をかしげる経験をした指導者は少なくないようだ。

⑯思春期不器用の子どもがいる可能性も踏まえて、部活動やスポーツ少年団では発育状況に応じ、全体練習に加え個別のトレーニングメニューを取り入れてほしい。  全員が同じ内容の筋力トレーニングをした場合、一部の選手には負荷がかかりすぎている恐れがある。

⑰部活動に携わる教員からは「一人ひとりの状況に応じてメニューを組むのは難しい」という声もよく聞かれる。  指導方法に悩んだ場合には、日本スポーツ協会公認のアスレティックトレーナーの資格保有者に相談するのもいいだろう。

⑱思春期不器用の影響かどうかは不明だが、思春期の子どもたちはスポーツ中の外傷・障害が多い傾向がある。  中には長期的に競技に支障をきたすケースもある。  生涯にわたりスポーツを楽しむためにも、子ども時代の運動は安全性を最優先としたい。』

空手の指導をするようになって、もうすぐ44年になりますが、「思春期不器用」という言葉を初めて知りました。

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師弟愛

菊澤院長から薦められた『武術空手の知と実践』(宇城憲治著 合気ニュース)を読みました。  後半部分で著者が師である座波仁吉先生(沖縄古伝空手心道流宗家)と対談しています。  「師弟愛があってこそ技は伸びる」の項の座波先生の発言から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『・・・教えながら先生が学ばれるというのはありますか。

①そうね、空手を教えるというひとつの時期でも自分の稽古は怠ったことがない。  教える稽古と自分の稽古は別。  自分の稽古の通りに生徒に教えても通用しない。  だから自分の稽古は自分の稽古。  学生に教える稽古は大衆的な稽古。  そうやってはっきり区別していました。

②しかし僕は今でもよく言いますけど、弟子に教えながら僕の技の60パーセントは弟子から習っておる。  だから弟子が上達するほど、僕の技が増えてくる。  それが僕の目標であり、楽しみなんです。  

③もうひとつの僕の目標は弟子を出世させること。  いつのまにか師匠より上手になったなぁというような弟子になれと言っているんです。

④指導者と弟子の関係は、僕は非常に重要に考えているけど、現在の空手の先生たちはそういうのをあまり考えていないね。  僕に言わしたら現代空手の欠陥はそこにある。

⑤弟子と先生が一心同体というのは昔の言葉だけど、先生が弟子をかわいがらんことにはほんとの師弟愛というのはできない。  師弟愛ができてこそ技が伸びるのであって、それは師匠の心掛けなんです。

⑥師匠が弟子は弟子だと考えていたら、弟子も師匠は師匠だとそれでけりをつけてしまう。  それでは師弟に本当の技のつながりができない。  師弟を育てるには、まず自分がその師弟の保護者にならなきゃいかん。  それが僕の希望であって、考え方です。

⑦僕の弟子で、こらぁ~おまえはと言われるような弟子は一人もおらん。  そうだと思うんです。  弟子のみんなに聞いてみなければわからんけど(笑)。』

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