2023.07.29 Sat
加山雄三さん
昨年引退した加山雄三さんが、今月の朝日新聞連載『語る 人生の贈りもの』に登場しています。 7月27・28日分全文に番号を付けて紹介します。
『1.《人気絶頂だった1970年、おじが経営する神奈川・茅ケ崎のホテルが倒産する》
①おじさんが、うちのおやじと俺の名前を貸してくれ、みたいなことを言うので、書類の上では会社の経営に参加してるようになってたけれども、実際は参加してなかった。
②でも、倒産するってときに、おじさんの居場所もわからなくなっちゃってさ。 借金は全部おれに取り立てが来たんだ。 負債は23億円だった。 その後、17億~18億円ぐらいでホテルは買収されたけど、それでもとんでもない額の借金が残った。
2.《巨額の負債でイメージに傷が付き、仕事は激減した》
①騒がれる前に、おれはアメリカに逃げたんだ。 ロサンゼルスで1週間64ドルっていう安いアパートを借りて住んでいた。
②それで、かみさん(松本めぐみさん)と結婚するんだ。 結婚するならこの人しかいないと。 愛していたんだね。 かみさんも「私がいなきゃこの人駄目だな」と思ってくれたそうだ。
③このままアメリカでアルバイトをして食っていくこともできると思ったんだけど、やっぱり空洞がね、心に出来たまんまなんだ。 そのまんま、ほったらかしには出来ないなっていう気持ちになった。 日本へ帰って、おれはちゃんと正面を切って勝負してみる、と。
④帰国して、結婚会見を開いたんだ。 会見に来た記者さんが厳しくてね。 「これからやり直して、一生懸命頑張りますから」と何度も言うんだけど、罵倒されるんだ。 「甘い、甘い」って。
⑤この年はおふくろも亡くなって、本当につらい時期だった。 仕事がなくなったけど、それでも生きていかないといけないから、頑張って稼ごうとした。 借金と税金の支払いがしんどくてね。 1カ月に30万円稼いでも、ほとんど手元には残らない。 食べるものにも困ってね。 「ごはんを食べなきゃ死んじゃう」と税務署に言いにいったんだ。
3.《多額の負債を抱え、稼ぎのほとんどは差し押さえられた》
①「せめて最低限の生活費だけでも認めて欲しい」と、税務署に行ってお願いしたんだ。 「ご飯が食べられなくて死んだら、借金が返せなくなるでしょう?」って。 そうしたら「死んだら保険が下りますから」とかすごいことを平気で言うんだ。
②「生きているうちになんとかしたいから、収入の30%ほど残るように認めていただきたい」と何度もお願いしにいって、ようやく認めてもらった。
③一つの卵をかみさんと2人で分け合って、卵かけご飯を食べていた。 それでも卵かけご飯はうまいからね。 食べられるだけありがたいなと思っていた。
④酒を飲んで酔っ払って、岩とか立ち木に思いきり拳を突き立てて、血だらけになったこともあった。 そうやって荒れることもあったけど、それでも、ある程度冷静でいられたのはおやじ(俳優の上原謙さん)を見ていたからだな。
⑤おやじが隆盛を極めて、落っこってくるのを見てたから、山を上がったら下りてくるのは当たり前だよなって思っていた。
⑥チヤホヤされて人気が上り坂のときはみんな寄ってくるし、駄目だと思ったらすぐ去っていく。 それもおやじを見ていて分かっていたし、自分がそうなっても、人間そんなもんだよな、と思った。 そんな状況でも黙って一緒にいてくれたかみさんは、やっぱり偉いよなと思う。 感謝してるし、今でも頭が上がんないよ。
4.《圧雪車にひかれて重傷を負ったり、後にスキー場の経営が頓挫したりと、苦難も多い人生だ》
①人生、苦しいことが99%、幸せは1%ぐらいだと。 それぐらいに思っておくのが大切だと思う。 つらいときがない人間はいない。 誰しも苦しい時期はある。 人生ってそういうもんだ。
②でも、周りのせいにするのは簡単だけど、やっぱり考えて反省しないといけない。 人間、悪いときが大事なんだよな。』
加山さんは私が10代前半にあこがれたスターでした。 昨年もステージ映像を見ましたが、とても85歳とは思えないキレイな年の取り方をされています。
「一つの卵をかみさんと2人で分け合って、卵かけご飯を食べていた(3.③)」なんていうことがあったんですね。
4.①の「人生、苦しいことが99%、幸せは1%ぐらいだと。 それぐらいに思っておくのが大切だと思う。 つらいときがない人間はいない。 誰しも苦しい時期はある。 人生ってそういうもんだ。」という言葉に感銘を受けました。
『1.《人気絶頂だった1970年、おじが経営する神奈川・茅ケ崎のホテルが倒産する》
①おじさんが、うちのおやじと俺の名前を貸してくれ、みたいなことを言うので、書類の上では会社の経営に参加してるようになってたけれども、実際は参加してなかった。
②でも、倒産するってときに、おじさんの居場所もわからなくなっちゃってさ。 借金は全部おれに取り立てが来たんだ。 負債は23億円だった。 その後、17億~18億円ぐらいでホテルは買収されたけど、それでもとんでもない額の借金が残った。
2.《巨額の負債でイメージに傷が付き、仕事は激減した》
①騒がれる前に、おれはアメリカに逃げたんだ。 ロサンゼルスで1週間64ドルっていう安いアパートを借りて住んでいた。
②それで、かみさん(松本めぐみさん)と結婚するんだ。 結婚するならこの人しかいないと。 愛していたんだね。 かみさんも「私がいなきゃこの人駄目だな」と思ってくれたそうだ。
③このままアメリカでアルバイトをして食っていくこともできると思ったんだけど、やっぱり空洞がね、心に出来たまんまなんだ。 そのまんま、ほったらかしには出来ないなっていう気持ちになった。 日本へ帰って、おれはちゃんと正面を切って勝負してみる、と。
④帰国して、結婚会見を開いたんだ。 会見に来た記者さんが厳しくてね。 「これからやり直して、一生懸命頑張りますから」と何度も言うんだけど、罵倒されるんだ。 「甘い、甘い」って。
⑤この年はおふくろも亡くなって、本当につらい時期だった。 仕事がなくなったけど、それでも生きていかないといけないから、頑張って稼ごうとした。 借金と税金の支払いがしんどくてね。 1カ月に30万円稼いでも、ほとんど手元には残らない。 食べるものにも困ってね。 「ごはんを食べなきゃ死んじゃう」と税務署に言いにいったんだ。
3.《多額の負債を抱え、稼ぎのほとんどは差し押さえられた》
①「せめて最低限の生活費だけでも認めて欲しい」と、税務署に行ってお願いしたんだ。 「ご飯が食べられなくて死んだら、借金が返せなくなるでしょう?」って。 そうしたら「死んだら保険が下りますから」とかすごいことを平気で言うんだ。
②「生きているうちになんとかしたいから、収入の30%ほど残るように認めていただきたい」と何度もお願いしにいって、ようやく認めてもらった。
③一つの卵をかみさんと2人で分け合って、卵かけご飯を食べていた。 それでも卵かけご飯はうまいからね。 食べられるだけありがたいなと思っていた。
④酒を飲んで酔っ払って、岩とか立ち木に思いきり拳を突き立てて、血だらけになったこともあった。 そうやって荒れることもあったけど、それでも、ある程度冷静でいられたのはおやじ(俳優の上原謙さん)を見ていたからだな。
⑤おやじが隆盛を極めて、落っこってくるのを見てたから、山を上がったら下りてくるのは当たり前だよなって思っていた。
⑥チヤホヤされて人気が上り坂のときはみんな寄ってくるし、駄目だと思ったらすぐ去っていく。 それもおやじを見ていて分かっていたし、自分がそうなっても、人間そんなもんだよな、と思った。 そんな状況でも黙って一緒にいてくれたかみさんは、やっぱり偉いよなと思う。 感謝してるし、今でも頭が上がんないよ。
4.《圧雪車にひかれて重傷を負ったり、後にスキー場の経営が頓挫したりと、苦難も多い人生だ》
①人生、苦しいことが99%、幸せは1%ぐらいだと。 それぐらいに思っておくのが大切だと思う。 つらいときがない人間はいない。 誰しも苦しい時期はある。 人生ってそういうもんだ。
②でも、周りのせいにするのは簡単だけど、やっぱり考えて反省しないといけない。 人間、悪いときが大事なんだよな。』
加山さんは私が10代前半にあこがれたスターでした。 昨年もステージ映像を見ましたが、とても85歳とは思えないキレイな年の取り方をされています。
「一つの卵をかみさんと2人で分け合って、卵かけご飯を食べていた(3.③)」なんていうことがあったんですね。
4.①の「人生、苦しいことが99%、幸せは1%ぐらいだと。 それぐらいに思っておくのが大切だと思う。 つらいときがない人間はいない。 誰しも苦しい時期はある。 人生ってそういうもんだ。」という言葉に感銘を受けました。