2022.04.03 Sun
ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足
1999年に発行された『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足』(小長谷正明著 中公新書)を読みました。 「まえがき」から抜粋し、番号を付けて紹介します。
『①筆者は神経内科医である。 脳や脊髄、末梢神経、筋肉などのはたらきの異常を診るのが専門だ。 精神科ではない。 シビレなどの感覚障害、ふるえやマヒなどが主な症状だ。 だから、目にする人の立ち居ふるまいや、表情、声の調子などが気になる。
②そして、20世紀は科学技術の世紀であり、映像の世紀でもある。 会えるはずのない、海の向こうや歴史の彼方の政治家、それに雲の上の人の歩き方や動作をテレビや映画でみることができ、ついプロ意識で病気かどうかを診断することがある。
③いわば神経内科医の本能で、ヒトラーのふるえや毛沢東のすり足もブラウン管を通して視診した。 そこで、20世紀のリーダーたちの神経疾患を調べてみて、歴史に投げかけた影を考えてみた。
④20世紀は何かときな臭く、政治的に不安定で、大変動が多かった時代である。 2つの世界大戦や、ロシアや中国などでの革命と、それらにまつわる局地戦争や動乱、粛清がたえずあった。
⑤そのつど、都市と文化は破壊され、兵士だけではなく、多くの普通の市民が命を落とした。 決して明るさと希望にみちていた世紀ではなかったようだ。
⑥この100年間のきわめつけの大事件は第二次世界大戦と、ほぼ1世紀にわたる中国の大混乱、そして共産主義の実験国家、ソ連の盛衰である。
⑦これらの事件では、いずれも強烈なリーダーないし独裁者があらわれ、彼らのパーソナリティーが歴史の流れや人々の運命に大きく作用した。 彼らがどのように世界を考え、どうしたいと思い、また感情がどうゆれ動いたかで、人類の行く末が左右されたともいえる。 (中略)
⑧20世紀の大事件のリーダーたち、ヒトラー、レーニンとスターリン、毛沢東、さらにアメリカ大統領のウィルソンやフランクリン・ルーズヴェルトは、脳の器質的障害による神経疾患にかかり、この世から去っていった。
⑨アメリカのカーター大統領の特別補佐官であったブレジンスキーが1993年に出したある計算では、20世紀に、人による命令あるいは決定によって殺された人の数は、1億6700万人にのぼるという。 この数字のかなりの部分に前にのべた人たちは直接、間接にかかわっていた。
⑩ある場合は、指導者たちの病気によって混乱はさらに深まり、より悲惨な将来をもたらすこともあったし、別のケースでは独裁者の死でもってマイナスの歴史をそこで断ち切ることができたこともあった。(中略)
⑩20世紀の独裁者、あるいは為政者の病気が、世界や人々におよぼす影響を考えることは、次の21世紀をより良い時代として迎えるために、意義があるにちがいない。』
『①筆者は神経内科医である。 脳や脊髄、末梢神経、筋肉などのはたらきの異常を診るのが専門だ。 精神科ではない。 シビレなどの感覚障害、ふるえやマヒなどが主な症状だ。 だから、目にする人の立ち居ふるまいや、表情、声の調子などが気になる。
②そして、20世紀は科学技術の世紀であり、映像の世紀でもある。 会えるはずのない、海の向こうや歴史の彼方の政治家、それに雲の上の人の歩き方や動作をテレビや映画でみることができ、ついプロ意識で病気かどうかを診断することがある。
③いわば神経内科医の本能で、ヒトラーのふるえや毛沢東のすり足もブラウン管を通して視診した。 そこで、20世紀のリーダーたちの神経疾患を調べてみて、歴史に投げかけた影を考えてみた。
④20世紀は何かときな臭く、政治的に不安定で、大変動が多かった時代である。 2つの世界大戦や、ロシアや中国などでの革命と、それらにまつわる局地戦争や動乱、粛清がたえずあった。
⑤そのつど、都市と文化は破壊され、兵士だけではなく、多くの普通の市民が命を落とした。 決して明るさと希望にみちていた世紀ではなかったようだ。
⑥この100年間のきわめつけの大事件は第二次世界大戦と、ほぼ1世紀にわたる中国の大混乱、そして共産主義の実験国家、ソ連の盛衰である。
⑦これらの事件では、いずれも強烈なリーダーないし独裁者があらわれ、彼らのパーソナリティーが歴史の流れや人々の運命に大きく作用した。 彼らがどのように世界を考え、どうしたいと思い、また感情がどうゆれ動いたかで、人類の行く末が左右されたともいえる。 (中略)
⑧20世紀の大事件のリーダーたち、ヒトラー、レーニンとスターリン、毛沢東、さらにアメリカ大統領のウィルソンやフランクリン・ルーズヴェルトは、脳の器質的障害による神経疾患にかかり、この世から去っていった。
⑨アメリカのカーター大統領の特別補佐官であったブレジンスキーが1993年に出したある計算では、20世紀に、人による命令あるいは決定によって殺された人の数は、1億6700万人にのぼるという。 この数字のかなりの部分に前にのべた人たちは直接、間接にかかわっていた。
⑩ある場合は、指導者たちの病気によって混乱はさらに深まり、より悲惨な将来をもたらすこともあったし、別のケースでは独裁者の死でもってマイナスの歴史をそこで断ち切ることができたこともあった。(中略)
⑩20世紀の独裁者、あるいは為政者の病気が、世界や人々におよぼす影響を考えることは、次の21世紀をより良い時代として迎えるために、意義があるにちがいない。』