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働き一両、考え五両、知恵借り十両

1.毎週水曜日に、弁護士の鳥飼重和先生からメルマガが送られてきます。  17日に取り上げられていたのは、上杉鷹山です。

鷹山は、領地返上寸前だった米沢藩の婿養子として藩主を継ぎ、藩を再建し、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成さぬは人の為さぬなりけり」という言葉を残しました。

鳥飼先生は 「働き一両、考え五両、知恵借り十両、コツ借り五十両、ひらめき百両、人知り三百両、歴史に学ぶ五百両、見切り千両、無欲万両」という鷹山の言葉も紹介されています。


2.各項目を解説してみます。

①働き一両・・・いくら一生懸命働いても、せいぜい一両しか稼げません。

②考え五両・・・自ら考えて働くことが必要です。  考えて働くことには、五両の価値があります。

③知恵借り十両・・・人間一人の考えなんて、たかが知れてます。  先人や知人に知恵を借りることには、十両の価値があります。

④コツ借り五十両・・・すべての仕事には、コツというのがあります。  コツを会得することには、五十両の価値があります。

⑤ひらめき百両・・・いつも仕事のことを考えていると、何かしらひらめくものです。  ひらめきには、百両の価値があります。

⑥人知り三百両・・・人との繋がりは大事です。  良い人を知ってることには、三百両の価値があります。

⑦歴史に学ぶ五百両・・・歴史に学ぶことも重要です。  歴史に学ぶことには、五百両の価値があります。

⑧見切り千両・・・仕事をしていると、予想に反して、どうやってもうまくいかないことがあります。  未練や思惑や思い込みを捨て、ダメなときには、勇気を出して見切らなければなりません。  見切ることには、千両の価値があります。

⑨無欲万両 ・・・世のため、人のため、無欲で取り組むことには、万両の価値があります。


3.2.の格言は、空手修行の心得にも通じるような気がします。  ただ稽古するだけではなく(①)、自ら考え(②)、先生や先輩の知恵を借り(③)、コツを会得し(④)、創意工夫(⑤)することが大切です。

明日は審査会です。  コロナ禍でいろいろと制約もありますが、受審される皆さんの健闘を祈ります。


 

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「戦争」を学ぶ意味

1.『戦争の日本近現代史』(加藤陽子著 講談社現代新書)を読みました。  『第一講 「戦争」を学ぶ意味は何か』から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①為政者や国民が、いかなる歴史的経緯と論理の道筋によって、「だから戦争にうったえなければならない」、あるいは、「だから戦争はやむをえない」という感覚までをも、もつようになったのか、そういった国民の視覚や観点や感覚をかたちづくった論理とは何なのか、という切り口から、日本の近代を振り返ってみようというのが、本書の主題となります。  (中略)

②戦前期の日本が、あたかも十年おきに戦争をしてきたような国であると書きました。  (中略)  日清戦争1894年、日露戦争1904年、第一次世界大戦1914年。  (中略)  この後、満州事変までしばらく平穏に過ぎますが、1931年に起きた満州事変と、1941年に勃発した太平洋戦争は、やはり不幸にも十年ごとになっています。  (中略)

③このような社会を前提とするとき、太平洋戦争だけを取りあげて、「なぜ、日本は負ける戦争をしたのか」 「なぜ、日本は無謀な戦争に踏みきったのか」といったような問いが、なぜ「正しい問い方」をした問いでないかといえば、そうした問いは、もし日本が戦争に勝利していたとしたら問われることのない地点から発せられている問いだと思われるからです。

④このような問いに期待される答えは、誰もが納得しそうなことですが、天皇・軍部・国民(世論)の三要素のいずれかにその責任を帰するか、三要素のうちの二つを取りあげて、その関係の日本的特殊性にその責任を帰するか、の選択肢のなかにしか存在しないからです。  (中略)

⑤人間として生まれた以上、喜んで戦争を始めたり、喜んで戦場に赴いたりする者は少ないはずです。  また、戦争には相手国が必要ですから、相手国と日本の戦力差に対する冷静な認識も、当然のことながらあったでしょう。  しかし、国民の認識のレベルにある変化が生じていき、戦争を主体的に受けとめるようになっていく瞬間というものが、個々の戦争の過程には、たしかにあったようにみえます。  (中略)  

⑥人々の認識に劇的な変化が生まれる瞬間、そして変化を生み出すもととなった深部の力をきちんと描くことは、新しい戦争の萌芽に対する敏感な目や耳を養うことにつながると考えています。』


2.①私は1953年、つまり、敗戦から8年後に生まれました。  私が小さいときには、新宿駅の近くの路上などで、戦争で負傷した傷痍軍人の方が寄附を募っている場面もよく見かけられたものです。  

②幸いなことに、この年まで日本が戦争に巻き込まれることなく過ごしてきました。  ただ、心配なのは、次の世代や次の次の世代の方が戦争に巻き込まれることがないか、ということです。  昨日の日経新聞夕刊でも『SNS 揺らぐ平和意識』  『悲劇の歴史 安易に「いいね」』  『「戦争は仕方ない」 教育界に危機感』などという見出しの特集が載っていました。

③前回のブログで取り上げた『危機と人類』もそうですが、歴史を学ぶことによって、将来の不幸の種を少しでも少なくできないか、というのが現在の私の立ち位置です。


3.本書の『あとがき』からも抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①わたくしのやったことは、いくつかの戦争を分析することで、戦争に踏み出す瞬間を支える論理がどのようなものであったのかについて、事例を少し増やしただけなのかもしれません。  歴史は、一回性を特徴としますから、いくら事例を積み重ねても、次に起こりうる戦争の形態がこうだと予測することはできないのです。

②ただ、こうした方法で過去を考え抜いておくことは、現在のあれこれの事象が、「いつか来た道」に当てはまるかどうかで未来の危険度をはかろうとする硬直的な態度よりは、はるかに現実的だといえるでしょう。』


4.東京大学・大学院教授である著者が、中学生・高校生を対象にして行った特別講義の内容が書かれた、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』・『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』(ともに朝日出版社)も併せて読みました。  2冊とも、とても分かりやすくて読みやすいので、一読をおすすめします。




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歴史から学ぶ

『危機と人類 〔上〕〔下〕』(ジャレド・ダイアモンド著 日本経済新聞社)を読みました。  「エピローグ・・・教訓、疑問、そして展望」から抜粋し、番号を付けて紹介します。

『①私たちは歴史から何を学べるのだろうか?  (中略)

②フィンランドとロシアには固有の事情があると同時に、二国の関係は攻撃的な大国の近くにある小国につきものの危険という一般性のあるテーマを示す一例である。  この危険を解決できる普遍的な方法はない。

③これは、もっとも古い、そして今でももっともよく引用され、もっとも強く人の心をつかむ歴史書・・・紀元前5世紀にアテネの歴史家トゥキュディデスがペロポネソス戦争の歴史を著した『戦史』第5巻・・・の一節のテーマでもある。 

④トゥキュディデスはギリシャの小島メロスが強大なアテネ帝国からの圧力にどう対応したかを綴っている。  「メロス対話」として知られる一節のなかで、トゥキュディデスはメロス人とアテネ人の胸をえぐられるような厳しい交渉を再現している。  (中略)

⑤普遍的な教訓がひとつある。  大国に脅かされている小国はつねに気を配り、別の選択肢を考慮し、選択肢を現実的に見極めるべきだということだ。  この教訓はあまりにも当然すぎて述べる価値がないように思われそうだが、悲しいことにしばしば無視されている。  (中略)

⑥1941年には日本が無視して、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリア、中国を同時に攻撃し、ロシアと敵対した。  そして近年ではウクライナが無視してロシアと破滅的な対立に陥った。  (中略)

⑦悲観主義者はこういうかもしれない。  「そう、悲しいことに私たちはしばしばあたりまえのことを無視してしまう。  でも本で無知な人は変えられない。  トゥキュディデスの『メロス対話』は2000年前からあるけれど、国家はいまだに同じ間違いを犯しつづけている。  本が一冊増えたくらいでどれほどのことができるものか?」と。

⑧しかし、私たち著者が努力をつづけるのは、背中を押してくれる理由があるからだ。  世界史において今日ほど字の読める人が多い時代はない。  私たちの世界史についての知識ははるかに増えているし、トゥキュディデスよりもはるかに実例にもとづいた主張ができる。  民主主義国は増えており、つまりいまだかってないほど多くの人々が政治に参加できる。

⑨無知な指導者が跋扈(ばっこ・・・思うままにのさばること)しているのも事実だが、国家指導者のなかには幅広く本を読む人もおり、彼らにとっては過去よりも今のほうが歴史から学びやすい時代である。  (中略)

⑩以上のような理由から、私は悲観主義者の声に耳を傾けず、希望を捨てず、歴史について書きつづけている。  そうすれば、望んだときに歴史から学ぶという選択肢を手にすることができるからだ。

⑪とくに、過去において危機はしばしば国家に困難を突きつけてきた。  今でもそれは変わらない。  しかし、現在の国家や世界は対応策を求めて暗闇を手探りする必要はない。  過去にうまくいった変化、うまくいかなかった変化を知っておくことは、私たちの導き手になるからだ。』

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